慢性的な人不足の打開策となるか?農の雇用事業について

慢性的な人不足の打開策となるか?農の雇用事業について

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農業に興味を持つ若者が増えているという報道が一部であります。
しかし報道で取り上げられるのはごく一部であり、実際には多くの農業経営者が深刻な人手不足に悩まされています。

実際に就農希望者が農業経営者の前に現れたとしても、雇用したり教育したりするための金銭的な負担がかかるため、経営側としては迂闊に人を雇えないのです。
そういった悩みを持つ農業経営者のために『農の雇用事業』というものがあります。
本記事では農の雇用事業の概要を説明します。

 

農の雇用事業とは?

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農の雇用事業とは、雇用就農者の確保と定着を促進するために、農業法人等が新規就農者に行う実践研修を支援する事業です。
具体的には、農業法人等が雇用した新規就農者に対して「研修」を行った際の研修費用を助成します。

あくまで「研修」のための助成金なので、経営資金や従業員への賃金の補助を目的としていません。

研修生1人あたり最大で年間120万円の補助金が出ます。助成期間は最長24ヶ月なので、240万円までの助成金を受けられます。
新規就農者と指導者にそれぞれ助成されるのが特徴で、新規就農者には月額最大97,000円、指導者には年間最大12万円まで支給されます。両方を合計すると年間120万円を超えますが、あくまで上限額は120万円です。

具体的には以下のようなことに対して助成されます。

1.新規就農者に対する研修費

・月額97,000円または研修生に支払われた月額賃金のうち、低い方の金額
・研修指導に対する助成金(2,400円×研修指導者が研修生にOJT研修をした時間)、資格取得のための講習費、テキスト代、受験料、外部講師へ支払った謝金等

2.指導者に対する研修費

・研修指導者等が人材育成手法や労務管理等を習得するための研修やセミナーへの参加費、テキスト代、交通費等の研修費用

 

助成を受ける条件

農の雇用事業における助成を受けるには、農業法人等と研修生それぞれに要件があります。

1.農業法人等の要件

・農業法人、農業者または農業サービス事業体である
・農業経験が原則5年以上ある役員や従業員を「研修指導者」として置いている
・研修生との間で期間の定めのない雇用契約を締結し、労災保険、雇用保険に加入させている
・農業法人は社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させている
・1週間の所定労働時間が年間平均35時間以上、研修生が障がい者の場合は20時間以上
・助成期間中に同時に他の公的助成を受けていない
・過去5年間に本事業の対象となった研修生が2人以上いる場合、農業に従事している研修生の数が3分の1以上
・原則として研修指導者等が雇用就農者の育成強化に資するセミナー等を受講している

2.研修生の要件

・研修終了後も継続して就農する意志がある
・正社員としての採用日時点で原則45歳未満の者
・正社員として研修開始時点で4ヶ月以上継続雇用されている
・過去の農業経験が5年以内
・原則として農業法人等の代表者の3親等以内の親族でない
・過去に農業法人等の正社員ではなかった
・過去に農業次世代人材投資資金(前身となった青年就農給付金を含む)の準備型交付を受給しながら同様の研修を受けていない

 

メリット、デメリット

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・メリット

1.農業に関することであれば助成を受けられる
農の雇用事業では、「新規就農者が農業技術や経営ノウハウの習得を図る実践的な研修に必要な経費」が助成されます。
これには「農業生産に関すること、農産加工、出荷・販売、営業等」が含まれており、基本的には農業の広い範囲において助成されることになります。

2.研修生1人につき年間最大120万円もらえる
受け入れる研修生の数に特に上限がないため、複数の研修生を雇い入れても人数に応じた助成金をもらえます。
ただし前述の通り、過去5年間に対象となった研修生が2人以上いる場合は、農業に従事する研修生の数が3分の1以上である必要があります。

・デメリット

1.審査がある
助成を受けるには、過去の研修生の定着状況、離農防止改善策の実施状況などを基に総合的な審査が行われます。
過去に研修生が離農して定着していない場合は、審査に通らない可能性が高くなります。

2.記録を作成する手間がかかる
助成を受けている間は、研修内容記録が必要になります。
また、事業主体である農業会議による現地確認に協力する義務も生じるので、そちらの方に仕事の時間を割かれてしまいます。

3.最初に研修計画を作成する必要がある
助成を受けるにあたって、あらかじめ24ヶ月分の研修計画を提出する必要があります。
研修生の習得具合などを見越して計画を練らなければなりませんし、天候に左右される農業の場合、24ヶ月分の研修内容を現実的に実行可能なラインまで落とし込むのに相当頭を悩ませなくてはなりません。

 

まとめ

農の雇用事業については、経営の発展や従業員の育成と定着に向けた取り組みが全国で行われており、農林水産省のホームページから閲覧することができます。

農業従事者を増やして定着させることは、農業の未来を守ることにも繋がります。
興味がある方は各都道府県の農業会議まで問い合わせてみてください。

 

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