冬の農業に?!発酵熱農法について

冬の農業に?!発酵熱農法について

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農作物が育ちにくい冬の間“ハウス栽培”で収穫時期をコントロールし、農業収入を得ている人も少なくないでしょう。しかし農作物の収穫をコントロールできるハウス栽培にもデメリットはあります。
特に温度調整のための暖房費はネックとなっています。温度を始終調整するために暖房をつけ続けなければならず、農地の規模にもよりますが、その暖房費が数百万/月にも及ぶ農地もあると聞きます。

そんな中、今回ご紹介したい“発酵熱農法”は暖房費の節約に繋がり、かつ発生する二酸化炭素によって農作物の成長を促してくれるエコな農法です。

 

発酵熱農法とは

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米ぬかや木くずといった、従来であれば“廃棄物”として扱われる素材を利用する農法です。一般的にバークと呼ばれる樹皮を利用します。この樹皮は、燃料として利用されるものもありますが、牛舎の敷物や土壌改良剤として使用されることがほとんどです。このバークを加工する際に発生する発酵熱や二酸化炭素をうまく利用した農法が、発酵熱農法なのです。
発酵熱は、バークで堆肥をつくる際に発生する熱を利用します。バークから有機質肥料をつくる際、一次発酵に1年以上、粉砕後6ヶ月以上の二次発酵、水分調整という長い工程が必要になります。
しかしこの間、土の中では微生物発酵が生じています。そしてその時に生じる熱はなんと80℃近くまで上がります!またこの際、農作物が育つのに重要な二酸化炭素の発生も見られます。

 

ハウス内の暖房代わりに!

この発酵熱をうまくハウス内に循環させることで、暖房代わりに熱を利用します。
基本的には発酵熱が生じている堆肥と暖房へと繋がる機材をつなげ、循環することで成り立ちます。

例えば、発生した発酵熱をそのままモーターにまわすことで、直接暖房として使用する方法もあります。また耐熱性・伝熱性の高いホースを熱が生じている堆肥内に埋め込むことで、ホース内を通る水を温め、暖房の熱源として利用する方法もあります。

また設備投資を削減するための方法もあります。例えば発酵させた堆肥と発酵作用をもたらす微生物を土壌に施肥し、地下の地温が20℃〜25℃に保つ方法もあります。農作物が養分を吸収するのに最適な温度18〜22℃付近に地温を保つことにもつながります。

 

発酵熱農法の今後

2017年10月2日、発酵熱農法が確立したとの記事が富山県・北日本新聞に掲載されました。南砺市内の農家がおこなった発酵熱農法が環境省の委託事業に採択されたのです。

先に紹介した発酵熱農法同様、木屑を発行させることで生じる熱を利用したものです。
現段階では、より有効性の高い栽培法の確立のため、実証実験が繰り返し行われています。もしノウハウを確立することができれば、この農法が全国に浸透するかもしれません。
この記事で紹介されている農法は、ハウスの横に穴を掘り、木くずや米ぬかを混ぜ、発酵で生じた熱や二酸化炭素をハウス内に繋いだパイプを介して送り込む方法です。

この記事では暖房費削減の観点よりも、ハウス内の二酸化炭素濃度が高まることによる収穫量の増加、糖度の向上の効果が期待されています。ハウス栽培のメリットとして病害虫防除も挙げられますから、生産者側にも消費者側にも魅力的な農作物を育てることができるのです。

実証実験では、発酵熱農法の効果を裏付けるため、石油ヒーターを利用した一般的な手法で育てた農作物の成長度合い、二酸化炭素濃度などを比較しています。この比較実験における暖房費の削減については言及されていませんが、現時点ではこの農法が浸透していないだけで、削減には貢献するのではないかと個人的には考えています。

ちなみにバーク堆肥の特徴として少々窒素分が多いことが挙げられます。そのため養分に少々偏りが生じてしまうため、野菜らしい青々とした香りや味は薄まります。ただこれを良しとする消費者もいるかもしれません。青々とした香りや味が理由で野菜が苦手な人にとって、これは嬉しい利点になるのではないでしょうか?

 

発酵熱農法以外で出来る暖房費削減術

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最後に、今回ハウス栽培の暖房費削減として“発酵熱農法”をご紹介しましたが、この農法はまだ実証実験段階です。また有機農法以外の農法で農作物を育てたい人もいるかと思います。そんな農家さんにオススメしたい暖房費削減術があります。暖房費を削減するためには、暖かい空気を逃がさないことが大切です。

すでに挑戦している方も多いかもしれませんが、ハウス内に保温用の内貼資材を設置するのはやはり効果的です。暖かい空気を保つことができれば、暖房の設定温度を保ちやすくなります。
発酵熱農法ではバーク堆肥の発酵過程で生じる熱と二酸化炭素が農作物の栽培に役立ちますが、この内貼資材の場合、光等価性の高い素材、光をよく反射する素材が多いため、太陽光を満遍なくハウス内に行き渡らせる特徴があります。

農作物の生育にも役立てることができますから、暖房装置や栽培方法を変更することが容易ではないという人は、ぜひ活用してみてください。

 

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