農業の6次産業化の成功事例とメリットデメリット

農業の6次産業化の成功事例とメリットデメリット

農林水産省は、農業の6次産業化を推進する取り組みを行っています。
6次産業とは、生産工程だけでなく、加工・流通までを一挙に行う新しい産業の形です(1次産業×2次産業×3次産業=6次産業)。

本記事ではそんな6次産業における成功事例とメリット・デメリットについてご紹介していきます。

 

 

6次産業化の成功事例

農業の6次産業化の成功事例とメリットデメリット|画像1

 

・トマト栽培(直売所経営と観光業の取り組み)

山梨県甲州市にある「農業生産法人 株式会社四季菜」は、観光もぎとりトマト園の経営と直売所の経営を行っています。平成21年度から無添加トマトジュースなどの直売を始めたこの農園は、トマト生産のみならず自社製品の販売、そして観光業としてトマトの収穫体験を提供しています。

直売を始める前の売上高は3,000万円(平成20年度)でしたが、翌年には6,200万円へ。雇用者も平成19年度には8人だったのが、平成22年度には22人に増えています。

 

・パプリカ栽培(自社商品の開発と地元企業との連携)

茨城県水戸市にある「農業生産法人株式会社Tedy」は、パプリカの生産のみならず、地元企業と連携し、生産したパプリカを使用した商品を開発しました。こだわりの生産規格で育てたパプリカの価格安定化をはかるために、地元企業と連携し、パプリカペーストを開発しました。供給過剰期におけるパプリカの有効活用にも繋がっています。また加工品を普及させたことで、パプリカの認知度を高めることにも成功しました。

平成20年度から加工品の開発に取り組み、平成21年度には100万円だった売上高は、翌年300万円に。

 

・そば栽培(そばの栽培体験を提供)

栃木県壬生町にある「下稲葉営農集団・農家そば所隠れ家蕎香」は、近隣の遊休農地を活用し、そばの作付けとそばの「オーナー制度」を導入しました。そばの栽培体験を提供することができ、年間を通じて県内外から顧客を確保することに成功しました。そばの消費拡大が要因で、遊休農地を活用することになりましたが、そのことが遊休農地の解消にもつながっています。

農村レストラン「農家そば所隠れ家蕎香」の売上高は、平成17年度には500万円でしたが、平成21年度には1,500万円にアップしています。

 

・規格外野菜(加工品製造とカフェ経営)

宮城県大崎市の「デリシャスファーム株式会社」は、生産販売しているデリシャストマト「玉光デリシャス」の規格外品を有効活用するために、加工品製造(トマトジュース)に取り組み始めました。そこから6次産業化を進め、直売所の横にカフェを併設。カフェと直売所は相互に作用し合い、直売所の売上はカフェに併設したことでアップしています。
平成13年に1,700万円だった売上高は平成28年には5,500万円に上昇し、生産面積も1.7ha(平成25年)から2,5ha(平成28年)に拡大しています。

 

 

6次産業化のメリット

農業の6次産業化の成功事例とメリットデメリット|画像2

 

  • 所得が向上する
  • 新たな雇用を生むことができる
  • 地域活性化につながる

農産物に付加価値をつけて販売することができるので、1次産業だけでは得られなかった所得が得られるようになります。雇用においては「業務が拡大するから」という理由だけではありません。農閑期にも所得向上につながる仕事ができます。例えば農閑期には生産に携わることができませんが、収穫した農作物の加工業務に専念することはできます。

またこれらのメリットによって製品が広く普及するようになれば、地域活性化も期待できます。地域農産物のブランド化に効果的と言えるのです。地域活性化が進めば、地域の文化や資源を持続的に保全することにも繋がります。

 

 

6次産業化のデメリット

もちろんデメリットもあります。

  • 費用がかかる
  • 専門知識の必要性
  • 在庫リスクの発生
  • 衛生管理の必要性

今まで1次産業だけに注力してきたことに2次産業、3次産業の要素が加わるわけですから、初期投資や費用がかさむことは大いに考えられます。それから2次・3次の知識を取り入れ、自ら加工・流通を回していく必要があります。専門知識を得ることを怠れば、成功からは遠のきます。また万が一売れなかった場合、大量の在庫を抱えることになります。

そして、食品加工には衛生管理が必要不可欠です。食品事故の発生は、6次産業を継続できるか否かに影響しますし、消費者からの信頼を失う大きな要因です。

 

 

6次産業を成功させるコツ

農業の6次産業化の成功事例とメリットデメリット|画像3

 

6次産業を成功させるコツは「ビジネス」として取り組むことです。

商品づくりで満足してはいけません。「商品をつくる→販売する→利益を得る→次の取り組みへ活かす」という循環を回す意識がなければ難しく感じるかもしれません。「収益化」と「持続的な事業」という意識を忘れないようにしましょう。

もちろん6次産業化をサポートする企業の存在も増えてきています。6次産業化をサポートする体系はありますから、興味・関心のある方は積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。

コラムカテゴリの最新記事