有機農業の欠点について。デメリットを理解して、最適な農業を

有機農業の欠点について。デメリットを理解して、最適な農業を

有機農業と呼ばれる農業への注目は、年々高まっていると感じています。消費者の食への安心、安全志向が高まってきた昨今、有機農業と呼ばれる農産物の生育環境を健全に保つことを意識した農業は、珍しい存在ではなくなってきたように思えます。

従来の農業では、化学農薬や肥料の利用により、作業効率をあげてきましたが、有機農業では極力化学農薬や肥料を使用せず、土の中に暮らす微生物達の働きを活かした土づくりや、農作物栽培を主としています。しかしこの方法を始めたての頃は、農作物にとって害となる病害虫への防御が難しく、労力がかかってしまうことに気づくでしょう。近年重視されている「環境保全型農業」への取り組みとして有機農業はとても注目されていますが、今回はあえてその有機農業のデメリットについてご紹介していきます。

■有機農業の定義とは

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有機農業は、有機農業の推進に関する法律第2条による定義によると

(1)化学肥料や農薬を使用しない
(2)遺伝子組み換え技術を利用しないことを基本にして、環境への負荷をできる限り軽減する

とあります。また有機農産物として消費者に販売するためには、有機JASマークと呼ばれる有機食品のJAS規格の認定を取得する必要があります。この認定マークの取得には登録されている認定機関に申請をし、JAS法に基づいた審査を受け合格するという流れが必要です。

有機農産物であれば、上記で紹介した定義意外にも条件があり「堆肥等で土づくりを行い、種まきや植え付け前の2年以上、禁止されている農薬や化学肥料を使用していないほ場で栽培しなければならない」、「栽培中も禁止されている農薬、化学肥料は使用してはいけない」などが挙げられます。農作物を栽培する準備期間から、有機農業は始まっているのです。

 

 

■有機農業の欠点

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有機農業を行う上での欠点には生産者側から見ると、その収量が制限されるところにあると考えています。制限というのは規制がかかるという訳ではなく、効率的な栽培方法ではなくなるという意味です。農薬を利用しないため、病害虫の被害が多くなる場合もあるでしょう。肥料の制限によって生育が遅れ、面積あたりの収穫量が減ってしまうという声もあります。

収量の維持には、植物が生育に必要とする窒素減を土壌中にどれだけ供給できるかがカギとなります。従来の農業では合成肥料などを用いて土壌中に施肥していたかと思いますが、有機農業では堆肥の利用ないしは窒素固定に役立つ他の植物(豆類やクローバーといった根粒菌と共生しているもの)を栽培するという方法などが取られます。商業的に農作物を生産するという観点から考えると、有機農業の収量は低下すると考えられます。有機農業と慣行農業の収量を比較検討した研究であまり大差がなかったという報告がなされた研究では、その地域の気候が温暖であったことが指摘されています。

一見すると有機農業の収量が低下するという意見に反しているように思えるかもしれませんが、温暖な地域だからこそ、農作物の栽培しづらい冬においても、窒素固定するのに“食用の”豆類が栽培でき、収量を減らせずに済んだのです。厳しい気候の地域の場合、効率的に窒素固定できる植物にはクローバーのような“非食用の”植物の利用が考えられるでしょう。それは商業的な観点からすれば、収量の低下につながってしまいます。

日本の場合、この研究の対象となった欧米と違い土地面積が圧倒的に少ないでしょう。食用ではない植物を作付けするほどの余裕はないのではないでしょうか。加えて「環境保全型」への疑問視も挙げられていたのでご紹介します。有機農業は「環境保全型農業」を重視して行われる農業ではありますが、その反対意見も取り入れておくべきでしょう。例えば窒素肥料や窒素酸化物が農地外へと放出されることについて研究された論文には、確かに有機農業の方が従来の農業に比べると環境に良いという傾向が現れました。しかし、これは農地面積で見た場合の話であり、農産物の重量で換算すると見え方が変わってきます。

先にも書きましたが、有機農業は従来の農業と比較するとその収量は低くなります。そのため収穫量を増やすには単純に多くの農地が必要となります。その際、生産量で窒素酸化物やアンモニアといった物質の放出量を比較すると、有機農業=環境に良いとは一概に言えない結果が現れると言います。

 

 

■「化学=悪」ではない

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もちろん有機農業のデメリットをお伝えしたとはいえ、農薬や化学肥料による土壌汚染の問題は未だに目に入ります。農薬を開発したことによって農産物の安定供給にはつながりましたが、薬剤によって土壌悪化が引き起こされたのも事実です。現在の農業では使用禁止となった農薬や工場廃棄物などの薬剤による土壌汚染は、未だに問題視されている訳ですから。

ただ私は「化学=悪」だとは思いません。化学そのものが悪なのではなく、問題視される土壌汚染はそれを利用する手段を見誤ったことにより引き起こされた問題だと考えています。

「化学=悪」と捉えられがちな話に土壌消毒という手段を例に挙げます。土壌病害に歯止めが効かなかった時の最終手段として利用される土壌消毒は、近年の「環境保全型農業」のおかげで、生物多様性に影響の少ない方法も増えているとは言います。しかし塩素系の化学農薬を利用した消毒によって一部の土壌微生物が死滅した場合、土壌中の生態バランスが崩れてしまい、農作物に害のある微生物や生育速度の速いものだけが生き残り、土壌消毒を続けない限り土壌汚染を止められないという矛盾も生じます。もっと分かりやすい例で言えば、過剰堆肥によって生物多様性が低下してしまうという話も有名なものでしょう。

今回着目している有機農業の目的のひとつは「化学農薬や肥料を使わないことで、付加価値の高い農産物を作ること」でもあるでしょう。「安心・安全>収量」という構図があるのであれば、有機農業のデメリットは全くデメリットに感じない、という人もいるかと思います。しかし農産物の栽培の目的が上記ではない場合には、有機農業を強くオススメすることはできないと考えています。

 

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