土壌改良について。耕作放棄地の復活につながる!?

土壌改良について。耕作放棄地の復活につながる!?

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農作物を育てるうえで「土」は必要不可欠です。
土壌本来の力を強くしていくことは、農地の生産力アップにつながり、農業経営を安定させるためには重要なものです。しかし近年、農業従事者の高齢化が進み、耕作放棄地と呼ばれる「耕されなくなってしまった土地」が増えています。耕作放棄地を元の状態に戻すのは、耕作が放棄されてからの年月が長ければ長いほど時間がかかりますが、戻すこと自体は不可能ではありません。

本記事では、土壌改良について紹介していきます。耕作放棄地の復活には、じっくり時間をかける必要はありますが、化学農薬や肥料で弱ってしまった土壌を改良していきましょう。

 

土壌改良とは

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「農作物が十分育つよう、土壌の状態を良くすること」を指します。今回、記事タイトルに「耕作放棄地を復活させる?!」と大々的に示しましたが、「水はけの悪い土壌を、砂や石を加える事で水はけを良くする」ことも土壌改良例のひとつです。「水が乾きやすい土地のため、水に乾きにくい土を混ぜる」こともそうですね。もっとわかりやすい例でいえば、土にたい肥を施すことも土壌改良のひとつと言えます。たい肥によって、土壌中の生態系バランスを整っていきます。そうすることで、農作物に良い影響を与える微生物を増やし、病害虫の発生を抑制することができます。

土壌改良にはさまざまな方法があります。今回は土壌改良剤として「植物」と「微生物」を挙げます。しかしどちらも単体で効果的というわけではありません。相互に作用することで、土壌改良につながります。ですが「土壌改良剤」「土壌改良の方法」としてわかりやすくするために分けました。あらゆる生き物が関わることで土壌に変化が生じるということを前提としてください。

 

植物を利用した土壌改良

植物を利用した土壌改良として「緑肥」をご紹介します。
栽培した植物をそのまま田畑にすき込みます。「肥料として育てられた植物」とも言えますね。

・田畑にすき込むことで有機物が増え、土壌中の微生物の生育が良好になる
・土壌中の優良微生物の生育が良くなることで、病害菌の発生を抑えられる
・水はけや保水力が高まる

などの効果が挙げられます。

 

土壌改良の際、注意すべきポイント

「緑肥」はそのまま田畑にすき込むことのできる肥料ですが、土壌改良の際に注意すべきポイントは抑えておくべきです。土壌中の「C /N比」に注意しましょう。Cは炭素、Nは窒素を表します。
例:C/N比が10の時:窒素が1kgに対し、炭素は10kg
土壌中の微生物が有機物を分解するとき、窒素を必要とします。C/N比が20以上と高い有機物がすき込まれた場合、分解するのに大量の窒素が消費されるため、土壌中の窒素が減少し、「窒素飢餓」の状態に陥ります。窒素は植物の「生命維持」に関わる物質です。タンパク質や核酸の合成、光合成や細胞分裂、遺伝子にも必要な物質です。
そんな窒素が飢餓状態にある土壌では、育つものも育ちません。一方で窒素過剰もNG。人間に例えると、栄養バランスの崩れた食事を摂ることで生じる「生活習慣病」のような状態とでも言いましょうか。

緑肥を与えた後の土壌で育てる農作物にとって、バランスの良いC /N比の植物を用意する必要はあります。

 

代表的な緑肥

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窒素を大量に必要とする農作物を育てる場合には、緑肥はC/N比の少ない植物を育てましょう。C /N比が低く、緑肥としてよく用いられるのはマメ科の植物(レンゲなど)です。特に窒素を大量に必要とするタマネギなどとの相性は抜群です。マメ科植物は根粒菌と呼ばれる菌を根にもちます。彼らは空気中の窒素ガスから硝酸やアンモニアを生成します。
これらは植物にとって必要な栄養分です。ただし、マメ科植物を緑肥として育てる際には、花を咲かせないようにしましょう。花が咲くと、根や茎葉に蓄えられた窒素が全部花に向かってしまいます。要は、マメ科植物自身で窒素を使ってしまうというわけです。土壌改良のために使う肥料ですから、花をつけそうになったときは、株元から刈ってしまいましょう。

 

雑草も緑肥になる?!

農作物を育てるうえで厄介な存在である「雑草」ですが、雑草も緑肥になり得ます。これもマメ科植物同様、花が咲いてしまっては意味がありませんが「若い草が出てはすき込む」を繰り返すことで、緑肥としての効果を期待することができます。
なお雑草は、土壌のpH状態をはかるのにも役立ちます。pH7未満の酸性土壌には、

・クローバー
・ヨモギ
・スミレ
・オオバコ

などが生えます。厄介者だった雑草も、土壌改良剤、pH測定として役立つことがあるんですよね!

 

微生物を利用した土壌改良

土壌中にはさまざまな生き物が暮らしています。特に微生物は、生態ピラミッドの底辺で「分解」を担う重要な存在です。土壌中にはおよそ100~1000万もの微生物が存在します。有機物を分解し、増殖と死滅を繰り返す彼らは、その死骸すらも別の微生物のエサとなり…と循環利用を繰り返します。最終的に硝酸やアンモニアへと変わり、農作物の栄養となります。彼らも「土壌改良剤」なのです。
土壌中の生態系のバランスが崩れると、農作物に影響を及ぼします。

 

連作や肥料過多などが原因で土壌が弱る理由

連作障害や肥料過多などによって土壌が弱ると、農作物の栽培に悪影響が出ます。その理由のひとつは、やはり「生態系のバランスが崩れること」です。微生物は互いに拮抗し合って生存競争を繰り広げているのですが、農作物の栽培に良好な微生物が数を減らすと、病原菌が増殖し始めます。人の体に例えるならば、善玉菌と悪玉菌、日和見菌の関係と同じ状態です。
また化学肥料が必ずしも悪というわけではないのですが、土壌中の微生物にとっては悪の存在になることがあります。例えば、化学肥料は植物に必要な栄養分を化学的に生成したものです。そのため、土壌中で微生物が分解する行程をふまなくても、植物は栄養分を吸収することができます。が、分解というステップを飛ばすわけですから、微生物にとってのエサはからっきしないですよね。

 

土壌改良剤として期待の高まる微生物

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優良微生物と拮抗しない微生物は、土壌改良剤として活用されています。市販の微生物系土壌改良剤には、納豆などでおなじみの枯草菌・バチルス属やカビやきのこの一種(糸状菌)が活用されています。先に紹介した「植物」も、マメ科植物と共生している根粒菌の存在が、土壌改良につながっています。

ただし、土壌中に生息する微生物の数や種類は多いですから、土壌改良剤を加えればそれで終わりというわけにはいきません。微生物と土壌の相性が悪いと、「加えても効果なし」ということも十分あり得ますから。

長いスパンをかけて土壌を回復させることは、短期で見たとき、農業経営としてはあまり効率の良いものではないかもしれません。
でも長期的に見たとき、農作物を育てることができる土地が少なくなってしまうよりは、良いと考えます。せっかく新規就農者の増加やスマート農業といった、新しい農業のあり方が登場しているのですから、未来の農業のためにも、できることからコツコツと始めていきたいですね。

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