今さら聞けない「農地の取得」。新規就農者が農地を取得するための流れ

今さら聞けない「農地の取得」。新規就農者が農地を取得するための流れ

農業を始めるとき、

  1. 情報収集(就農相談をするなど)
  2. 農業技術の習得(農業体験研修や専門機関への通学など)
  3. 就農準備(個人であれば農地の確保や機械・設備の取得、法人に就職する場合には就職先を探し、採用面談を行うなど)

という流れに沿うのが一般的です。

理想的な流れとしては「専門学校で勉強する→農業法人で働く、または、自治体やJAで研修を受ける→独立」が挙げられます。ただし農業法人の募集要項には「40歳以下まで」と年齢制限が設けられていることもあるため、40代以降の新規就農の場合は「自治体やJAで研修を受ける→独立」という流れが基本となるでしょう。

新規就農に必要なものとして挙げられるのは、

  • 資金
  • 技術
  • 農地
  • 設備
  • 販路

の5つ。

本記事では「農地」に着目します。個人で農業を始める人が通る道である「農地の取得」についてご紹介していきます。

 

 

農地を取得するための流れ

今さら聞けない「農地の取得」。新規就農者が農地を取得するための流れ|画像1

 

農地の取得には〇〇の許可が必要

農地を買う、農地を借りる、といった場合には「農業委員会」の許可が必要です。

日本は国土が狭い上、国土の3分の2を森林が占めています。食糧の安定的な供給を図るためには優良な農地を確保すること、そしてそれを効率的に利用する必要があります。そのため「農地法」では、望ましくない目的(土地投機など)での農地の権利移動を制限しています。

農地法は“「農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当」とするとの自作農主義の理念に立脚して、農地の所有および利用関係の調整を図り、「耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的」(1条)として制定された(引用元:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ))”とあります。

この目的に沿って、所有権の移転や農地転用(住宅や駐車場などを設置するために農地を農地以外のものにすること)に際して、都道府県知事等の許可を必要とする、と定めています。

農地を買う、農地を借りるときの手続き

耕作目的で農地を買う、借りる場合には、農地法第3条に基づき農業委員会(または都道府県知事)の許可を受ける必要があります。

農業委員会が許可するか否かの判断は

  • 農地の受け取り手が農地を効率的に利用するかどうか
  • 受け取り手の農業経営状態
  • 経営面積

などの審査により行われます。

個人が農地を取得するための要件には

  • 取得する農地すべてを耕作して有効活用すること
  • 農業経営に必要な農作業の常時従事すること(原則年間150日以上)
  • 総経営面積が北海道の場合は2ha以上、都府県では50a以上であること
  • 周辺の農地利用に支障がないこと

が挙げられます。

新規就農者は3.の下限面積条件に注意しましょう。北海道で2ha以上、都府県で50a以上と定められているのは、経営面積があまりにも小さいと、生産性が低くなり、効率的で安定的な農業が行われないと想定されるからです(ただし、“花卉栽培など施設園芸等の集約的な農業経営であると認められる場合は、この下限面積に達しなくてもよい”とされています)。

4.の要件の具体例には、無農薬栽培の取り組みが行われている地域で農薬を使用するなどの行為をしないことなどが挙げられます。

許可申請の手続きの流れ

  1. 必要書類を添付し、許可申請書を農業委員会へ提出
  2. 許可申請書類の確認、現地調査が行われる
  3. 農業委員会総会にて許可・不許可が決定される
  4. 許可指令書(不許可通知書)が交付される

市町村ホームページを見てみると、1.の前に「申請に関する事前相談」を推奨している地域もあります。質問や疑問がある場合には、まず農業委員会事務局窓口等に相談することをおすすめします。

 

 

候補地を選ぶのに便利なサイト

今さら聞けない「農地の取得」。新規就農者が農地を取得するための流れ|画像2

 

目指す農業経営をふまえ、候補地を選定します。農地情報が集約されているサイトに「eMAFF農地ナビ(全国農地ナビ)」があります。

eMAFF農地ナビ

面積や遊休農地かどうかなどの情報だけでなく、農地の所有者の意向(農地を貸したい、売りたいなど)も知ることができます。

上記サイトに初めてアクセスした際、位置情報を設定するか否かといった画面が出てきたり、日本地図(衛星写真)が映し出されたシンプルなトップページに少し戸惑いました。「農地探しナビゲーター」のページに使い方が掲載されています。トップページ上記に“ご希望の農地の探し方は「農地探しナビゲーター」のページをご覧ください”と書かれているので、「農地探しナビゲーター」の文字をクリックしてみてください。

希望する地域や条件が定まっている場合には「地図から探す」ではなく「条件から探す」のがおすすめです。

また全国新規就農相談センターでは、農地の借り方や確保に向けた取組の紹介・相談が行われています。農地中間管理機構と新規就農相談センターが連携し、就農を希望する人の条件に合う農地のあっせんを行っています。こちらも利用してみてください。

全国新規就農相談センター

 

参考文献

  1. Soil mag.編集部『ONE PUBLISHING MOOK Soil mag. ソイルマグ Vol.1』 (ワン・パブリッシング、2021年)
  2. 就農までの流れ|とやま就農ナビ
  3. 農地取得にかかる基礎的知識
  4. 農地の売買・貸借・相続に関する制度について:農林水産省
  5. 個人が農業に参入する場合の要件
  6. 農地法3条許可申請(耕作目的の農地の権利移動) – 土岐市
  7. 農地法第3条許可申請の手続きの流れ
  8. 農地を売りたいとき・買いたいとき:伊那市公式ホームページ
  9. eMAFF農地ナビ
  10. 全国農地ナビとは? その概要・目的から使い方までをわかりやすくご紹介!
  11. 認定新規就農者制度について知りたい

全般カテゴリの最新記事