酢酸の効果!殺菌効果だけでなく、植物の乾燥耐性にも効果あり!?

酢酸の効果!殺菌効果だけでなく、植物の乾燥耐性にも効果あり!?

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近年、「有機栽培」は決して珍しい存在ではなくなったのではないでしょうか。
有機栽培の定義は「化学的に合成された肥料および農薬を使用しないこと、並びに遺伝子組み換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」です。

そんな化学的に合成された肥料や農薬を使用しない栽培方法に挑戦する農業従事者において、食用としても活用される「酢酸」は強い味方と言えます。本記事では、農業に役立つ「酢酸」の効果について紹介していきます。

 

 

農業と酢酸の関係

農業と酢酸の関係において、もっとも知られている効果には「病気への防除」が挙げられるのではないでしょうか。酢酸、食酢は安全性や防除効果が確認されている「特定農薬」の一つです。

通常農薬は、「人間の健康や環境に悪影響がないか」「病害虫への効果は確認されているか」を国が補償し、「農林水産省登録第〇〇号」といった表記がないと販売・使用が許されません。
しかし酢酸は「特定農薬」、農薬登録を受けなくても使用できる農薬なのです。
化学農薬が発展する前から存在していた農業従事者の知恵とも言えるでしょうか。

酢酸の代表的な効果は殺菌能力です。
例えば植物の葉面に希釈した酢酸を散布します。すると植物の葉表面のpHが低下し、病原菌の生育に最適ではない環境になります。
病原菌が減少・死滅すれば、植物は病害からの被害を避けることができます。

「稲のもみ枯細菌病」「ばか苗病」「ごま葉枯病」などに効果があるとされています。
また病原菌だけでなく、害虫を避ける効果もあります。センチュウやアブラムシなどの害虫のみならず、犬や猫、ヘビなどの動物にも効果があるとされています。

ただし、時に酸性に強い酵母やカビなどの微生物が植物に悪さを働くことがあります。使用する前には、考えられる病害虫の特性をあらかじめ学んでおき、その病害虫の特性にあった殺菌方法や忌避剤を用意することをおすすめします。

 

 

木酢液の効果

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木酢液は、木炭製造時に発生する煙の成分を冷却してつくる土壌改良資材、植物活性剤です。木酢液は、その成分の約90%が水分で、残りの10%に酢酸(約5%)、その他アルコール類、フェノール類などの有機成分を含んでいます。主な効果は、【土壌の消毒】【土壌微生物の増殖を促進】【植物の生長促進 】【ミネラル吸収の助長】などが挙げられます。

木酢液を土壌に散布すると、土壌の消毒と有用微生物の増殖に効果があります。
有用微生物が増殖することで、病原菌の減少につながり、農作物の生育促進に役立ちます。
ただし木酢液を使用する際には、希釈する必要があります。原液や濃い濃度で利用すると、土壌中の病原菌だけでなく有用微生物を死滅させてしまう原因にもなりますし、酸度の強さから植物が痛んでしまいます。また噴霧する時間帯にも注意しなければなりません。涼しい時間帯(朝や夕方)に使用することを心がけましょう。気温の高い時間帯に使用すると、熱で水分が蒸発してしまい、せっかく希釈して利用しても、蒸発により濃度が上がることが考えられます。

 

 

酢酸を与えることで乾燥に強くなる!

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2018年10月に開催された『次世代農業EXPO』にて、酢酸の新しい効能を知ることができました。それが植物を乾燥から強くする作用です。
酢酸を利用することで、遺伝子組み換え技術を頼ることなく、乾燥や干ばつに強い植物を育てることができるのです。論文誌「Nature Plants」に掲載された「“Acetate-mediated novel survival strategy against drought in plants”」という研究論文から簡潔にまとめます。

モデル植物にシロイヌナズナを用い、乾燥状態にさらされている時の植物体内の代謝変化を調べたところ、乾燥に応じて酢酸がつくりだされていることが発見されました。また水で希釈したさまざまな酸溶液を9日間与え、その後約2週間水を与えずに放置する実験を行ったところ、その後3日間水を与えた際、「酢酸」を与えた試験体だけが強い乾燥耐性を示し、葉を茂らせたと言います。
ここから乾燥に応じて体内に酢酸がつくりだされるということだけでなく、植物に酢酸を与えるだけで植物の乾燥耐性が強化されることが分かりました。

今はまだ「実験室内」単位でしか効果を明らかにできていないとも言えるのですが、今後酢酸が、農地の乾燥対策や砂漠の緑化に役立つことは十分期待できます。

今回紹介した研究論文のファースト・オーサーである金鍾明(きむ・じょんみょん)氏は、『次世代農業EXPO』にて研究内容をもとに開発した対乾燥・節水用バイオスティミュラント資材「skeep」を紹介していました。

日本は温暖湿潤気候なので、乾燥耐性を強化する必要のある植物は少ないかもしれませんが、乾燥した大地や砂漠での農業においては重要な技術だと考えられます。

殺菌作用から乾燥耐性まで幅広く活用することができる「酢酸」は、化学的に合成された肥料や農薬を使用したくない就農者にとって外せない農業資材と言えます。ただし木酢液などでも触れた通り、使用する際には植物が痛まない程度の希釈を忘れないでくださいね!

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