堆肥とは「ワラ・雑草・落ち葉などを積みあげて腐らせ、発酵させたもの」、有機物を微生物の働きによって分解・発酵させ、土壌の改良や作物への栄養供給を目的に用いられるものです(出典元:たいひ【堆肥】 | た | 辞典 | 学研キッズネット)。
かつては、、わらなどの植物残さを主原料とし、そこに窒素肥料や鶏ふんなどを加えて作られるものを「堆肥」、家畜の排せつ物を主原料としたものを「きゅう肥」と呼び区別していました。しかし、現在では原料の種類にかかわらず、総称として「堆肥」という言葉が一般的に使われています。
本記事では、そんな堆肥を選ぶ際のポイントについてご紹介していきます。
堆肥のよしあし
本記事のタイトルに「よい堆肥の基準とは」と記しましたが、結論から申し上げると「よい堆肥」を表す明確な数値基準は存在しません。
とはいえ、全国農業協同組合中央会が示す家畜ふん堆肥の推奨基準など、いくつかの参考指標はあります。ただし、参考指標となるものの基準を外れているからといって品質が悪いとは限りません。たとえば、ある堆肥のEC(電気伝導度)※が5dS/mを超えていても、肥料成分が豊富であれば、使用量を調節することで問題なく利用できます。
「よい堆肥」の定義は、土壌や作物、目的に応じて変わるため、使用目的に合った堆肥を選ぶことが大切といえます。
たとえば、使う側が「よい堆肥」と考えていても、その堆肥を過剰に施用することで、リン酸やカリなどの肥料成分が土壌中に蓄積しすぎる場合があります。堆肥の成分や土壌の状態に応じた適切な施用もまた、よしあしを決めるものといえそうです。
※EC(電気伝導度):水や土壌などの物質に電気を通しやすさを表す値で、農業においてはEC値が高いと肥料過多、低いと肥料不足になる可能性がある。
堆肥の選び方
堆肥施用の失敗例
堆肥の熟度や成分によっては、植物の発芽や根の成長を妨げてしまうこともあります。
堆肥をすき込んだのに種がうまく発芽しなかったり、作物の葉色は濃いのに元気がなかったりといった場合には、未熟堆肥が原因かもしれません。分解が進んでいない堆肥には、作物の成長に不可欠な養分と水分を吸収する根に障害を与える成分が含まれている場合があります。
たとえば家畜ふんや生ゴミを主原料とした未熟な堆肥は、急激に分解が進む過程でガスを発生し、根の先端を傷めるほか、濃度障害によって根毛の発生を妨げます。また、おがくずやバークといった木質系のものを多く含む未熟堆肥は、分解の過程で窒素を消耗してしまうことから、作物が窒素不足に陥る恐れがあります。
そのほかにも、土の保水性や通気性など土壌改良につながらない堆肥によって、堆肥に求めていた効果が得られなかったり、堆肥中に雑草の種が含まれていたために、圃場が雑草だらけになってしまったり、といった失敗が起こる可能性もあります。
堆肥の熟度が重要
微生物による分解・発酵がしっかりと進んだ完熟堆肥は、良質な堆肥といえます。完熟堆肥を施した土の中では、作物の根がまっすぐ下に伸びてしっかりと張り、細根や根毛もよく発達します。
財団法人 日本土壌協会は公式ウェブサイトにて環境・土づくり関連冊子を公開しています。そこで紹介されていた神奈川県の試験では、夏まきキャベツを完熟堆肥、未熟堆肥、化学肥料で育て、比較検証を行いました。その結果、生育の前半は化学肥料区が最も成長が早かったものの、後半には完熟堆肥区が逆転。葉のしっかりした張りや根の太さ・細根の多さ、球の重さや糖度など、多くの項目で完熟堆肥区が優れていた、と報告されています。
熟度の目安
堆肥が完熟か未熟かを判断する手がかりとして、窒素含量とC/N比があげられます。
一般的に、完熟堆肥は窒素含量が1%前後、C/N比は15〜20程度とされ、未熟な肥料の場合は窒素含量が3%以上、C/N比は10を切ることが多いとされています。
また市販品を選ぶ際には肥料の種類をチェックします。「堆肥」と表示されている場合には熟度が高く比較的安心して使用できますが、「動物の排泄物」と記載されていた場合には、単に家畜ふん等を乾燥させただけの未熟なものも多いとされ、注意が必要です。
加えて、「乾物当たり」「現物当たり」といった成分表記の違いも見逃せません。水分を含まない乾物基準での表示の方が、実質的な窒素含量は低くなります。
まとめ
- 市販品は「堆肥」と明記されているものを選ぶ
- 理想的な完熟堆肥は窒素含量は1%前後、C/N比は15〜20
- 乾燥ふんや未熟堆肥には注意する
表示成分や熟度にしっかり注目して堆肥を選ぶことが大切です。
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