農業において、土づくりや有機栽培に役立つ微生物の存在とは?

農業において、土づくりや有機栽培に役立つ微生物の存在とは?

農作物を育てる上で切り離せない存在として「土」が挙げられます。土には元々、様々な植物や土壌生物が存在していますが、これらの生物量によって土壌の豊かさは変わってきます。生物量を高めるは、農作物の生産機能を高めることにもつながります。

農業が発展する中で効率や作業性が重要視されるようになり、化学肥料や殺虫剤、農薬や除草剤などが開発されました。しかし近年、食への安心・安全志向が高まってきた中で、自然の力をフルに活用した栽培法が見直されているように思えます。有機栽培や自然栽培といった栽培方法は、農業の原点とも言える栽培法なのではないでしょうか。

そこで今回は農業に欠かせない「土」に着目し、有機栽培を行う上で役立つ微生物を紹介していきます。

■細菌類

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原核生物(げんかくせいぶつ)(※遺伝物質であるDNAが核膜に包まれておらず、細胞内に核を持たない生物)に属している細菌類は、農業に欠かせない土壌中に、数えきれないほど多くの種類が存在しています。細菌のほとんどが動物や植物の遺体といった有機物を分解することで、栄養やエネルギーを得て生育しています。もちろん有機物だけが必ずしも必要なわけではなく、二酸化炭素などの炭素源を利用して生育する細菌もいます。

そんな細菌には、私達が栽培する農産物である植物にとって必要な栄養素を作り出す働きがあり、農産物の生育に重要な栄養素である窒素などの生成にも大きく関与しています。農業に役立つ細菌の例を挙げると、マメ科の植物にとって必要不可欠な細菌に「根粒菌(こんりゅうきん)」と呼ばれるものがいます。

根粒菌はマメ科植物の根に共生(きょうせい)(※異なった生物同士が相互に作用し合いながら、それぞれが接近して生活すること。片方に害を与える場合には、寄生と呼ぶ)し、空気中の窒素をアンモニアに変える働きがあります。

この働きによって、植物は生育に必要な栄養素を得ることができます。また根粒菌はその働きによって、土壌そのものの状態を豊かにする役割も担っています。

 

 

 

■菌類(カビ・酵母・キノコなど)

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「菌類」という名称がありますが、カビ・酵母・キノコなどを総称した呼び方です。人にとっては、先に紹介した細菌よりも身近な存在かもしれませんね。発酵食品などに利用される微生物も、土づくりに役立つ働きがあるのです。

土壌微生物によって動物や植物の遺体といった有機物は分解され、土へ還ることを繰り返しているのですが、菌類はこの有機物の分解力に長けています。無機物へと還元し土に戻す働きは、これら菌類が主な担い手になっていると言っても過言ではないでしょう。

もちろん先で紹介した細菌もそうですが、土壌中に存在する微生物はその全てが農作物栽培に有益なものばかりではありません。農作物の病気の原因となるものにカビや細菌類の存在も挙げられます。ただ、微生物は私達の目に見えないだけで、土壌中だけでなく空気中にも数えきれないほど存在しているものです。その存在を理解し、元々自然界に存在していたものを受け入れることは、農業をする上で決して損にはならないでしょう。

 

 

 

■土壌微生物の役割

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理科の授業の復習のようですが、農作物である植物は、太陽エネルギーを利用して水と二酸化炭素から酸素を生成します。その根っこからはリンや窒素といった栄養を吸い上げ、有機物である植物自身の体をつくりあげています。そんな植物の生育にかかせない有機物の合成も、微生物が行っている有機物の分解も、その原点とも言えるのは全て「土」だということが分かります。

自然界で生物が生きるために必要な物資の循環を滞りなく行うためには、土壌微生物の存在が欠かせないものなのです。それを理解できれば、生態ピラミッドで底辺に位置する微生物達が、農薬の誤った利用や過度な利用によって激減すると、上位に位置する農作物への悪影響が及ぶことが容易に理解できるのではないでしょうか。

もちろん化学肥料の利用が全て悪だとは言いません。しかし、元々自然界に存在する生態系や物資循環を理解した上で農作物栽培を行うことは、農作物の生育を基礎から理解する上で重要なことであると思います。

 

 

 

■身近な存在「納豆菌」も役に立つ!?

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最後に、日本人である私達にとって馴染みの深い微生物の農作物への影響についてご紹介します。馴染みの深い微生物とは「納豆」です「土」は農作物の生育に大きく影響するのですが、土壌に生きる※生物相(せいぶつそう)が多いほど、農作物の生産性を高める効果が期待されています。

「納豆」も「納豆菌(バチルス属など)」といった微生物の働きによって作られた発酵食品ですが、納豆菌を含んだ資材を畑に投入することにより、農作物の根が大きく育ち、健康に育ったという報告があります。生態ピラミットの底辺に位置する※微生物相(びせいぶつそう)の中でも、さらに底辺を占めている微生物達を土壌に投入することで微生物の生態系を多様化させることができ、農地の生産性を高める働きがなされています。

実際納豆菌は土壌中に多く生育する上に、比較的過酷な環境下でも生育するタフな微生物です。そのため土壌に加えることで、微生物生態系が活性・安定化されるのです。

※生物相(せいぶつそう)、微生物相(びせいぶつそう)
特定の環境(地域・時代)に生息する生物を全て纏めた概念を意味する

 

 

■まとめ

土壌中に生育する微生物の働きは、そのまま農地の豊かさを決める指標になると言っても過言ではありません。化学肥料や化学農薬を使うこと自体が全て悪だとは思いませんが、自然界に元々備わっている生態系のバランスを理解した上で農作物を育てれば、安定した収穫を得やすくなるのではないでしょうか。

安定した生態系を保つことは、収穫する私達にとっても、農作物そのものにとっても最適な状況と言えるでしょう。

 

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