超低コスト米とは何か。コスト低減と生産力の強化につながる超低コスト米について

超低コスト米とは何か。コスト低減と生産力の強化につながる超低コスト米について

超低コスト米とは、農業者の所得向上や稲作農業の体質強化を目的に、生産コストを大幅に削減した米のことを指します。農林水産省が推進する取り組みの一環であり、輸出市場の開拓や国内外の競争力強化を目指します。

 

 

背景にあるもの

超低コスト米とは何か。コスト低減と生産力の強化につながる超低コスト米について|画像1

 

近年、人口減少や高齢化、食生活の多様化といった社会的要因により、主食用米の国内需要は長期的な減少傾向にあり、それに伴って、米価の下落も進んでいます。

このような背景から、農業者の所得確保や稲作農業の持続可能性を確保するために、新たな市場の開拓と農業の体質強化が求められる中、特に注目されているのが「輸出市場」の開拓です。

農林水産省は令和4年度より「超低コスト産地育成事業」を新規に開始し、予算として10億円を計上しました。本事業は、米の生産コストを大幅に削減し、国際市場での競争力を高めることを目的としています。

 

 

取り組み内容

超低コスト米とは何か。コスト低減と生産力の強化につながる超低コスト米について|画像2

 

稲作の生産コストを大幅に削減し、農業経営の効率化を図ることで、農家の収益向上や競争力強化を目指します。

そこで、まず各産地で現状のコスト構造を詳細に分析し、課題を抽出。たとえば、労働コスト、資材費、機械費などの削減余地を明確化します。そのうえで、省力化・低コスト技術の導入や、低コスト資材の利用、リモートセンシング技術を活用した精密農業の活用などを通じて、生産コスト削減につなげます。

また、コスト削減手法の実効性を確かめるため、実際の圃場で試験を行い、収量・品質への影響を評価します。

さらに、こうした対策を単発で終わらせないために、取り組みの成果を地域内外の農家や関係機関に広めることで地域ぐるみでの普及を図るという点も、「超低コスト産地育成事業」の特徴です。

なお、この事業に参加するためには、

  • 大幅なコスト削減を目指す意欲があること
  • 明確な計画を策定し実行できること
  • 農業団体、自治体、研究機関などと協力して、地域ぐるみでの取り組みを進められること

などの条件を満たすことが求められます。

取り組み事例

代表的な事例の一つに、宮城県の農業法人アグリードなるせによるプロジェクトがあります。同法人は、スマート農業技術を積極的に導入し、生産現場の「見える化」や作業の効率化に取り組んでいます。たとえば、農機メーカー・クボタのスマートアグリシステム「KSASクラウドサービス」を活用し、栽培計画や作業状況のデータを一元管理するなど、リモートセンシング技術や汎用的な農業機械の導入により、省力化とコスト削減を両立させています。

青森県では、「超・低コスト米」と「超・高付加価値米」の両輪で、米生産の新たな方向性を模索しています。特に「超・低コスト米」の取り組みでは、省力化技術や低コスト肥料、効率的な施肥技術などを組み合わせ、コスト削減の限界に挑戦しています。

参照元:超高低価格の米生産実証へ/県 | 陸奥新報

これらの取り組みは単なる技術導入にとどまらず、農業者、地方自治体、農業団体などが一体となって取り組むことが推進されています。

農業者の所得向上や稲作農業の体質強化を目指す超低コスト米の普及は、農業経営の合理化を図るだけでなく、持続可能な稲作を発展させる鍵としても期待されます。

 

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