「有機農業ネット」とは。有機農業×地域活性化

「有機農業ネット」とは。有機農業×地域活性化

2019年08月25日、日本農業新聞で「有機農業ネット始動 食育や販路拡大 普及へ自治体連携」という記事が掲載されました。あまり聞きなれない「有機農業ネット」という言葉。しかしこれは、環境保護への取り組みや消費者の食に対する安全・安心志向の高まりから注目が集まる「有機農業」と、各地域が持続性のある社会を目指すことを目標とした「地域活性化」をつなぎ、その両方を発展させるためのつながりだということをご存知でしょうか。

 

 

有機農業ネットとは

「有機農業ネット」とは。有機農業×地域活性化|画像1

 

正式名称は、「有機農業と地域振興を考える自治体ネットワーク」(以下、有機農業ネット)です。令和元年8月1日に立ち上げられたこの有機農業ネットは、農林水産省が事務局となっています。8月25日時点では、8県と17市町の自治体が参加しています。

地域活性化を目指す自治体の中で、

  • 有機農業を生かしたい
  • 有機農業を通じた地域活性化にこれから取り組みたい

と考えている市町村の情報交換の場として、活用が期待されています。

発足されたばかりの場ではありますが、「有機農業」そのものに関する情報だけでなく、有機農業を通じた「食育」や販路拡大事例といった情報も共有する方針だと事務局は示しています。「有機農業ネット」に参加している市町村と企業との連携も加味されています。

 

 

「有機農業×地域活性化」に考えられる効果

「有機農業ネット」とは。有機農業×地域活性化|画像2

 

「有機農業×地域活性化」というつながりによって得られる効果についてご紹介していきます。

有機農業のメリット

近年、有機農業は環境保護やその農法がもつ持続可能性から注目が集まっています。生物多様性や農業生態系のバランスを整えて、強化する「生産管理システム」としても評価されています。

有機農業は、石油などから作られる資源は可能な限り使わず、代わりに家畜や家畜の糞尿を資源として用いることで環境負荷を低くする生産方法です。化学的に生成された資源ではなく、自然界にあるものを活用することで、土壌中の微生物や田畑周辺の生物多様性の保護につながります。なお、できる限り農作物の旬に合わせて栽培を行うことも、環境負荷を減らす生産につながります。

また、化学的に生成された資源が必ずしも悪いわけではありませんが、食の安心・安全を望む消費者からの注目も高いのが有機農業の特徴です。有機物のみで生産された農作物は、安全で品質の良い農作物を望む消費者のニーズに答えることができます。

有機農業は地域活性化につながる

農林水産省によると、昨今、人口減少や高齢化が課題視されている農業・農村に対して肯定的な意見が増えつつあり、「田園回帰」の流れが生まれているようです。農林水産省が都市住民に行った調査によると、農村に対して

  • 空気がきれい
  • 自然が多く安らぎを感じる
  • 子供に自然を触れさせられる

といった「良いイメージ」をもった意見が挙げられています。この流れを活かすため、農業を含めた地域資源を活用し、地域活性化を目指す地域が増えつつあります。「有機農業」は、その手助けのひとつとして活用されているのです。

地域活性化を発展させるためには

ただし、有機農業だけが地域活性化を発展させるものではありません。もっとも大切なのは、その地域で生き生きと暮らすことができる環境といえます。どんなに有機農業そのものが発展したとしても、その地域に暮らす人々が活力に満ちた生活を送ることができなければ「地域“活性化”」とはいえないでしょう。

地域環境を発展させる取り組みとして

  • 地産地消
  • 地域農業を新しく作る
  • 移住・定住を促進する
  • インバウンド需要に着目する

などが挙げられます。

例えば「地産地消」。有機農業は自然界にあるものを活用することで農作物を生産します。その地域にある資源、例えばその地域で発生する家畜の糞尿や余った稲わらなどを活用すれば、その地域の資源を循環させながら農作物を生産することができます。「地産地消」という付加価値がついた農作物を通じて、その地域について知ってもらうことももちろん可能です。

有機農業の存在だけが地域活性化につながるわけではありませんが、有機農業と地域活性化は相互作用をもたらすのです。

 

 

有機農業×地域活性化の事例

「有機農業ネット」とは。有機農業×地域活性化|画像3

 

有機農業と地域活性化をつなげた事例として「食育」の例を紹介します。

千葉県いすみ市は、全市立小中学校の給食に出すお米に、地元で採れた有機米を導入しました。子供たちは給食を通じて、地元の農業に触れることができます。この取り組みは移住者の増加にもつながりました。「子供に安全な給食を食べさせたい」という理由から、いすみ市へ移住する家庭が増えたといいます。

同市は、地域活性化だけでなく有機農業の発展にも力を入れています。有機稲作を行う農家を積極的に育て、有機米のブランド化を進めています。

また宮崎県綾町の取り組みもユニークです。有機農産物を販売する際「有機」「オーガニック」などと表記する場合には、有機JAS規格を満たし、「有機JASマーク」を表記する必要があります。宮崎県綾町は町全体で有機農業を推進するために、町自身が「有機JASマーク」の登録認定機関となりました。町が町内の事業者に対して認定を行うことで、町全体の有機農業への意識が高まることが考えられます。

 

参考文献

  1. 有機農業ネット始動 食育や販路拡大 普及へ自治体連携 日本農業新聞
  2. (2)「田園回帰」の動き 農林水産省
  3. 【有機農業関連情報】トップ ~有機農業とは~ 農林水産省
  4. 有機農業と地域振興を考える自治体ネットワーク 農林水産省
  5. 重点テーマ 地方創生の動き 農林水産省
  6. 有機農業の重要性 大学生がつくる地域活性化サイト
  7. 有機農業で地域活性化=自治体ネット設立へ-農水省

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