集中豪雨や猛暑日など、異常気象に対する農業対策とは

集中豪雨や猛暑日など、異常気象に対する農業対策とは

近年、世界各地で異常気象が観測されています。日本では西日本で起きた集中豪雨や相次ぐ台風の襲来、連日の猛暑日が記憶に新しいことでしょう。これらの異常気象により大きな被害を被ることになるのが「農業」です。そこで本記事では、異常気象による農業被害の現状と農業への対策について紹介いたします。

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異常気象による農業被害の現状

気象災害と食糧生産について研究しているブリティッシュコロンビア大学のNavin Ramankutty教授によると、異常気象によって生じた熱波や干ばつにより、小麦やコメなどの穀物の収穫高が50年で10%も減少していることを発表しました。1964年から2007年までに起こった気象災害による農業への影響を研究したところ、熱波や干ばつが穀物の収穫高を20%も減少させていたのです。
また日本では記録的な猛暑により、さまざまな影響を受けています。

・野菜の生育不良
・果樹の日焼けや着色不良
・開花時期の早まり
・乳牛の乳量減少
・暑さにより家畜が死んでしまう

猛暑による雨量不足で水田に水を引けない地域もあれば、集中豪雨による畑の水没もあります。いずれにせよ、安定した生産・供給が行えていないのが現状です。

 

猛暑日への対策事例

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ここからは異常気象に対応するための対策について紹介していきます。まずは「猛暑日」への対策です。

2010年の猛暑日で、コメの生育不良の被害を被った埼玉県・JAほくさい営農部では、高温対策を徹底しています。例えば出穂時期が最も暑い季節になることを避けるため、移植を5月上旬から下旬に変更し、出穂時期をずらすようにしています。また猛暑日の影響で干ばつすることを防ぐために、水管理を徹底し、根の活性化を図っています。生育不良に陥らないよう、コメの様子を観察しながら必要に応じて追肥を行うなど、猛暑日の影響でコメが弱らないよう徹底した管理で対策しています。猛暑日が当たり前のようになった今、気候変動に合わせて育て方を柔軟に変える必要があります。

また地温上昇や土壌水分が枯渇する事を防ぐためには、地温抑制マルチや敷きわらの活用もオススメです。あらかじめ「高温耐性品種」を選んで育てることも、今後当たり前のように到来するであろう「猛暑日」対策には役立ちます。

施設栽培の場合には、作物の光要求性に応じて遮光資材を導入することもオススメです。温度上昇を抑制することができ、日焼けや葉焼けを防ぐことができます。温度が停滞しないよう、空気を循環させる機械の導入も必要になるかもしれません。いずれにせよ、育てる作物が生育しやすいような環境を整える意識をし、様々な技術を複合的に取り入れることが大切です。

 

集中豪雨への対策事例

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次に台風や集中豪雨への対策です。
まず台風が常襲する地域の場合、あらかじめ暴風等の対策を練っておきましょう。風害・潮害が生じないよう、あらかじめ田畑の被害抑制に努めます。浸水・冠水対策のために、排水路を設置しておきましょう。排水路を設置した場合でも、その想定を上回る水量が流れ込んでくる可能性もあります。そのため浸水・冠水してしまった場合には、迅速に追肥などを行い、生育回復に努める、被害を受けた茎葉を除去するなど、その後の病害虫被害の発生を防ぐことに努めます。

生育初期の作物が被害を受けた場合のために、予備苗を用意しておくことも覚悟しておきましょう。生育初期に被害を被った場合には、潔く予備苗を植え直し、最初から育て直すほうが、その後の病害虫被害の拡大などを防ぐことにつながります。

なお台風や集中豪雨後は、気温が急上昇することが多々あります。天候の特徴をあらかじめ捉えておくことも重要です。冠水被害を受けた後、急な温度上昇で高温障害が生じることは決して珍しいことではありません。

 

気象予測情報を基にした対策

異常気象による影響を全く受けずに済むのは難しい話ですが、被害を最小限に抑えることはできます。そこで活用すべきなのが「気象予測情報」です。
気象庁は平成23年度から平成27年度にかけて、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)と共同研究を行い、気象予測情報を使ったリスク管理の研究を行ってきました。今回注目した「猛暑日」や「台風・集中豪雨」だけでなく「冷害」についても研究がなされており、その結果、作物の品質低下を軽減する方法をいくつか創出しています。

その最たるものは、やはり気象予測情報を基にした「農作業時期の変更」です。
例えばコメの高温による品質低下の対策に、出穂前の追肥の増量がなされています。追肥量の変更は天候変化に対して柔軟に行うことのできる対策です。もし猛暑日が続かず日照不足になった場合には、追肥量を増加することで品質が低下するということも分かっています。
ということは、気象条件に合わせて追肥をコントロールするだけで、品質低下を抑制することができるとも言えます。出穂後の気候さえ把握できれば、品質低下を最小限に抑えることは可能なのです。

高温耐性の品種が開発されていることも事実ですが、基本的には「気象予測情報」を基に柔軟な対策を練ることが重要と言えます。天候の変わりやすい季節には、こまめに気象情報をチェックして対策を練り続けましょう!

 

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