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農地土壌劣化について。世界各国で危機感高まる土壌劣化

農地土壌劣化について。世界各国で危機感高まる土壌劣化

土は、農業生産に欠くことのできないもの。堆肥等を施用し、土壌の性質を改善することは、農地の生産力を高めることにつながります。

しかし近年、土壌の劣化による地力の低下が危ぶまれていることをご存知ですか?

 

 

土壌劣化の現状

農地土壌劣化について。世界各国で危機感高まる土壌劣化|画像1

 

日本は少子高齢化に伴い、人口が減少傾向にありますが、世界的に見ると人口は増加傾向にあります。2050年に予測されている人口を養うためには、食料を今よりも60%増産する必要があると言われています。

しかし国連食糧農業機関(FAO)によると、食料生産に重要な地球上の土壌の33%以上がすでに劣化しており、2050年までに90%以上の土壌が劣化する可能性が訴えられています。

土壌に何が起きているのか

近年、栄養分の偏った土壌が増えていると言われています。

1940年代から1960年代にかけて、高収量品種の登場や化学肥料の大量投入により農作物の生産性が向上した「緑の革命」以降、土地の生産性は飛躍的に高まりました。例えば、即効性のある化学肥料は農作物に不足している栄養分をピンポイントに与えることができます。

しかし土壌の性質改善に役立つ堆肥や有機物の施用が減り、化学肥料に偏ったことで、ある特定の栄養分が過剰になる、または不足している、といった圃場が増えています。

水田土壌の場合、国の指針※では堆肥の標準的な施用量は1~1.5トン/10aと定められていますが、労働力の減少や農業従事者の高齢化などを要因に施用量は年々減少しています。水田土壌の有機物含有量は減少傾向にあり、土壌養分は石灰が過剰気味、マグネシウムが不足気味の傾向にあるようです。

普通畑土壌の場合、指針では堆肥の標準的な施用量は1.5~3.0トン/10aと定められていますが、こちらも上記と同様の理由で施用量が減少傾向にあり、有機物含有量、土壌養分ともに上記のような状況に陥っている土壌が多いようです(参考文献1)。

また圃場整備や大型農機の導入は、農作物の根が張る表層(作土)を薄くし、大型農機が土壌を踏み付けることで硬くて密になった層(耕盤)を増やしてしまいます。耕盤は水も空気も通りにくいため、排水性が低下したり、作物の根張りが悪くなります。

※国の指針
土壌改良を進めるために、地力増進法において策定された地力増進基本指針を指す。

土壌劣化で起こりうること

『土 地球最後のナゾ』(光文社新書)の著者であり土壌学者・藤井一至氏は、朝日新聞GLOBE+のインタビューで「砂漠化」や「塩類集積」が起こりうるとコメントしています。

「砂漠化」は、元は肥沃な土を人が農業生産などで酷使することで収穫量が落ちていくといった生産力の減退、破壊される現象を指します。

「塩類集積」は、乾燥した土地で地下水をくみ上げて蒸発させていくと、地表に塩が蓄積してしまう現象を指します。

農業生産を増やすために、使い尽くされている肥沃な土地ではなく砂漠の土に目が向けられています。しかしこのような土地で作物を生産すると、はじめこそ水を与えれば収量があがるものの、農地を拡大し、どんどん水を与えていくことで塩類集積が起こり、徐々に作物ができなくなっていきます。

藤井氏は「塩類集積が起きた土地を修復することは不可能ではない」と述べながらも、塩を流すためには大量の水を必要とするため、「砂漠で修復するのは現実的ではない→放棄した方が早い→放棄されていない土地を利用し続ける→栄養の偏り等で土が劣化していく」という悪循環について言及しています。

 

 

土壌劣化を改善する方法とは

農地土壌劣化について。世界各国で危機感高まる土壌劣化|画像2

 

土壌劣化の要因は一つではありません。

  • 物理的要因(土壌の固化、通気性の悪化など)
  • 化学的要因(養分過剰、欠乏など)
  • 生物的要因(土壌中の生物活動の低下により土壌病害虫が増加するなど)

など、さまざまな要因が挙げられます。

そのため、要因を知り、それに合った対策を組み合わせることが重要です。

例えば物理的要因に対しては、耕盤を破壊したり、灌漑や排水環境を整えることなどが挙げられます。化学的要因に対しては、pH調整や有機物の施用などが挙げられます。

「土壌劣化と砂漠化・土地荒廃 – 地球・人間環境フォーラム」には、ユーカリの植林で蒸発散量が増加したことで、灌漑で引き上げられていた地下水位(物理的要因)が下がった(改善された)だけでなく、それに伴い土壌の塩性化(化学的要因)の抑制にも効果を発揮したとあります。

生物的要因も同様で、土壌改良剤や除草剤などを適切に利用することや、対策を組み合わせることにより改善できます。

また近年「不耕起栽培」が注目されています。土を耕すのをやめ、稲わらで覆うことで土を守ります。

米オハイオ州立大学のラタン・ラル博士・特別栄誉教授は1970年代、アフリカの土壌劣化を調べ、不耕起栽培が土壌保全に有効であることを実証。被覆作物の導入と組み合わせることで持続的な農業に結びつけたことが高く評価された。

引用元:世界で広がる耕さない農業|日本食農連携機構

不耕起栽培には

  • 耕起作業による作業コストが削減できる
  • 大型農機による耕起作業がなくなるため、土壌が圧縮されにくく耕盤層の減少につながる
  • 土壌中に固定されている有機物を留めることで、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を止められる

などの利点が挙げられています。

関連記事:耕さない農業。不耕起栽培とは?

 

参考文献

  1. 農地土壌の現状と課題 平成19年10月 農林水産省生産局環境保全型農業対策室
  2. 窪田新之助、山口亮子、『図解即戦力 農業のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』、2020年7月3日、株式会社技術評論社
  3. 研究者たちはなぜいま、「土壌保全基本法」を起草したのか ――土壌学、環境学からの警鐘――|農業とITの未来メディア「SMART AGRI(スマートアグリ)」
  4. いまなぜ土が「アツい」のか 土壌学者が語る「土・貧困・未来」の深い関係:朝日新聞GLOBE+
  5. 3 土壌劣化と砂漠化・土地荒廃 – 地球・人間環境フォーラム
  6. 世界で広がる耕さない農業|日本食農連携機構

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