夏以外にもニーズが豊富な枝豆について。

夏以外にもニーズが豊富な枝豆について。

もともとは大豆の一形態として扱われていた枝豆ですが、近年では明確に「大豆用」と「枝豆用」に区分されるようになり、枝豆専用品種が400種類以上開発されるなど、独自の発展を遂げています。ちなみに枝豆は、未成熟の大豆を枝付きのまま茹でて食べたことから名付けられました。

本記事では、そんな枝豆についてご紹介していきます。

 

 

枝豆生産の広がりと主産地

夏以外にもニーズが豊富な枝豆について。|画像1

 

現在、日本国内では北海道から沖縄まで全国で枝豆が栽培されています。

なお、2020年度の出荷量で見ると、トップは北海道で、次いで群馬、千葉、山形、埼玉、秋田、新潟の順です。これら上位7県だけで全体の64.5%の出荷量を占めています。一方、作付面積では新潟が最大で、次いで山形、秋田、北海道、群馬と続き、収穫量となると群馬がトップとなっています。

「作付面積が大きい=収穫量が多い」とは限らない

上記が枝豆栽培の特徴でもあります。この背景には、単位面積あたりの収量の違いや気象条件、出荷目的と消費形態の違いなどが複雑に絡み合っています。

たとえば、新潟県などでは広い面積で栽培されていますが、収穫された枝豆の多くが県外へ出荷されるのに対し、千葉や群馬のような大消費地に近い地域では、収穫した枝豆の多くがその場で消費される、いわゆる「地産地消型」の農業が行われています。

加えて、枝豆は収穫適期が短く、収穫後は急速に風味が落ちるという性質があります。そのため、地元消費が多く、地域ごとに独自の品種が発展してきました。そのため、地域の気候や栽培文化に適した品種が生まれています。最近では「湯あがり娘」のように全国的に人気のある品種も登場していますが、地域色の強さが今なお枝豆の魅力の一つといえます。

 

 

枝豆の需要と価格動向

夏以外にもニーズが豊富な枝豆について。|画像2

 

本記事のタイトルに“夏以外にもニーズが豊富”と記載しましたが、やはり枝豆の需要は主に7〜9月の夏場に集中します。この時期には全国各地から出荷がピークを迎えます。そのため、夏場には枝豆の単価が下がる傾向があります。

一方で、それ以外の季節では供給が減少し、単価が上昇するため、温暖な地域では促成・抑制栽培を取り入れて出荷時期の分散化が進められています。

とはいえ、近年は温暖化や異常気象の影響もあって、出荷量や価格の変動が激しくなってきています。

なお、東京都区部における小売価格の動向を見ると、平成27年以降は100グラムあたり130〜140円台前半で推移しており、上昇傾向にあります。また最近では、食味(甘み・うまみ)や見映えといった品質面が重視されるようになり、品種選定の重要性も増しています。

ちなみに、枝豆の国内生産量は約6.7万トン。一方、輸入量はそれを上回る約7.1万トンにのぼり、自給率は5割弱にとどまります。なお、輸入先の多くは台湾、タイ、中国で、その大部分は冷凍加工された状態で輸入されています。

近年では国産の鮮度や品質へのこだわりから、国産枝豆の価値が見直されており、「採れたて」「地元産」をアピールする産地の取り組みも盛んです。

 

 

枝豆で稼ぐ

夏以外にもニーズが豊富な枝豆について。|画像3

 

枝豆は露地作物の中では比較的反収が低いものの、作業時間当たりの所得が高いとされ、収益性の高い作物です。さらに、病害虫の被害が比較的少なく、栽培管理もしやすいことから、新規就農者向けの作物としても注目されています。

そんな枝豆を“稼げる作物”とした代表的な事例に北海道中札内村の枝豆栽培があげられます。中札内村では104戸の農家が600haの畑で枝豆を栽培し、年7億円の売上を記録しています。

中札内村は農家と農協の一体的な取り組みにより、収益性の高い生産体系を可能にしました。まず、農協が販売先を確保し、それに基づいて作付面積を調整します。また農協の品質管理は徹底しており、品質基準で枝豆を買い取り、収穫後3時間以内に液体窒素で急速冷凍。採れたての風味を保ったまま国内外に流通させることでブランド価値を高めています。加えて、農協の販売促進部は国内外の商談会に精力的に参加し、枝豆の売り込みを行っています。

なお、収穫と出荷のタイミングを工夫したり、スマート農業を導入したりすることも収益性の向上につながります。

たとえばビニールハウスを活用することで、希少価値が高まり、高単価での販売が可能になる5月から枝豆の収穫を始めることができます。ビニールハウスの活用は長期間の出荷も可能にします。

また、株式会社オプティムは自社が提供する「ピンポイント農薬散布テクノロジー」を使うことで、農薬の使用量を90%削減し、減農薬による付加価値で枝豆の売価が3倍になったという実績を紹介しています。

枝豆栽培で稼ぐには、

  • 品質管理
  • 販売先の確保
  • 地域全体での連携
  • スマート農業の活用

が成功の鍵といえそうです。

高収益を生む枝豆生産を戦略的に取り組めば、日本の農業の未来を支える主力作物になりうるかもしれません。

 

参考文献:中村恵二『最新 農業の動向としくみがよ〜くわかる本[第2版]』(秀和システム、2023年)

参照サイト

 

農作物カテゴリの最新記事