植物の代謝の活性化に役立つ酢酸カルシウム。酢酸、カルシウム、酢酸カルシウムの効果とは

植物の代謝の活性化に役立つ酢酸カルシウム。酢酸、カルシウム、酢酸カルシウムの効果とは

酢酸カルシウムは農業において、植物の健康を促進するために役立つ栄養素や微量成分を提供し、さまざまな環境ストレスに強い作物を育てるために利用されています。

本記事では酢酸の効果、カルシウムの効果、そして酢酸カルシウムの効果についてご紹介していきます。

 

 

酢酸の効果

植物の代謝の活性化に役立つ酢酸カルシウム。酢酸、カルシウム、酢酸カルシウムの効果とは|画像1

 

酢酸は、植物の成長を促し、乾燥や高温への耐性を強化する効果があることが研究で確認されています。酢酸を植物に与えると、植物の体内で「ジャスモン酸」という物質の合成が促進され、これが乾燥に強くなる仕組みを助けます。この方法の特長は、遺伝子を操作することなく、酢酸を与えるだけで植物の耐性を強化できる点にあります。研究によると、イネやトウモロコシ、ナタネなどさまざまな作物でも乾燥に強くなることが確認されています。

また、食酢は「特定農薬」として認められており、すべての作物に使用可能です。実際に、一部の農家では昔から食酢を使って作物の乾燥対策を行ってきました。その効果が科学的に証明されつつあり、今後の農業において注目されています。

しかし、乾燥による別の問題として、土の中の石灰が不足することがあります。乾燥耐性を強化するだけではこの問題を解決できないため、適切な施肥(肥料を与えること)など、ほかの対策も必要です。

そのほか、アミノ酸やミネラルが豊富に含まれている玄米黒酢は、イネに施用することで根の成長や分げつ(茎が増えること)を促進し、収量が増加すること、酢酸を含む「木酢液」や木酢液と木炭の混合物も、イネやサツマイモの成長を促進する効果があると報告されています。

 

 

カルシウムの効果

植物の代謝の活性化に役立つ酢酸カルシウム。酢酸、カルシウム、酢酸カルシウムの効果とは|画像2

 

カルシウムもまた、植物の成長に欠かせない栄養素の一つです。カルシウムは特に細胞壁の強化に重要な役割を果たします。カルシウムは細胞のペクチンと結びつき、細胞膜を強化するため、特に新芽や根の生育に重要です。根の発達を促進し、有機酸を中和することで、土壌のpHを調整する効果もあります。

カルシウムが不足すると、葉や茎、実などの細胞組織が弱くなり、植物の病害虫に対する抵抗力が低下、成長が抑制されることがあります。また、乾燥や窒素過多、土壌酸化などの条件下ではカルシウムが吸収されにくくなるため、カルシウムの積極的な施肥が重要です。特に、果樹や根菜類などではカルシウム不足が病害の原因となることが多いため、適切なカルシウム管理が求められます。

 

 

酢酸カルシウムの効果

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酢酸カルシウムは、上記で紹介したカルシウムを酢酸と結びつけた「有機キレートカルシウム剤」です。

有機キレートカルシウム剤とは、カルシウムを「キレート剤」と呼ばれる物質(クエン酸やりんご酸など)とあらかじめ結びつけることで、植物が効率よくカルシウムを吸収できるようにしたものです。

普通のカルシウム(硝酸カルシウムや塩化カルシウムなど)は、そのまま水に溶かして植物の葉にスプレーしても、うまく吸収されず、期待した効果が出にくいことがあります。これは、植物の中にある別の成分とくっついてしまい、水に溶けにくい形になってしまうためです。

一方、有機キレートカルシウムは植物の中でカルシウムが移動しやすくなり、吸収されやすくなります。酢酸カルシウムは植物にとって非常に吸収しやすい形態で、効果的に植物に供給されます。

そんな酢酸カルシウムは、葉面散布や土壌施用に利用され、特にカルシウム不足による病害の予防や、作物の品質向上に役立ちます。たとえば、キャベツや白菜の芯腐れやトマトの尻腐れ、イチゴのチップバーンなど、カルシウム欠乏症を防ぐために利用されることがあります。

また、酸性土壌を中和する効果もあり、土壌改良材としても有用です。酸性土壌の中和や重金属の固定化、有機汚染物質の軽減など、土壌の質を向上させるために使用されます。これにより、微生物の活動や植物の発育に適した環境が整い、作物の生育がさらに促進されます。

さらに、酢酸カルシウムは日焼け防止剤としても利用されます。作物への太陽光の直射を遮ぎることにより、品質、外観、味、食感に影響する傷を防ぎます。果実や野菜など、外観も重要な作物においては、酢酸カルシウムを施すことで、品質を保ちながら生育を促進することができます。

酢酸カルシウムは自作できる

酢酸カルシウムは、カキ殻やカニ殻、卵の殻などを食酢で溶かすことで自作できる資材です。比較的簡単に自作できるので、農業現場でも手軽に利用できます。

たとえば食酢100mlとカキ殻50gを容器に入れると、気泡が出て殻が溶けていきます。発泡が収まったら、コーヒーフィルターで濾過し、できあがった液体を100倍に希釈すれば葉面散布用の酢酸カルシウムができあがります。

 

参考文献:韓東生『玄米黒酢が野菜と花卉の生育に及ぼす影響』(新潟大学農学部研究報告 第57巻2号、2005年)

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