有機肥料と化成肥料について復習。大切なのは使い分け?!

有機肥料と化成肥料について復習。大切なのは使い分け?!

有機肥料と化成肥料について復習。大切なのは使い分け?!│画像1

消費者側の食の安心安全志向が高まっている昨今、有機農業や肥料も農薬も使わない自然農法といった育て方でつくる農作物も珍しくない世の中になってきました。

しかし私は、有機肥料も化成肥料も使い方次第で、消費者の望む「美味しく安全な野菜」をつくることにつながると考えています。

消費者による「化学肥料や農薬を使わない有機野菜だから、安全、美味しい」という考え方は危ういとも思うのです。
消費者側にしっかりと肥料を用いる意図を理解してもらうためにも、今回は有機肥料と化成肥料について復習していきましょう。

今回お伝えしたいことは、“どちらを使うべきか”ではなく“どう使い分けるべきか”です。

 

有機肥料と化成肥料の違い

まず有機肥料について。有機肥料は植物に必要な栄養分(窒素・リン・カリウムなど)を含む肥料を動物や植物といった有機物から生成したものです。

有機肥料と言えるものは法律で定められており、規格に沿っていないものは「有機肥料」と呼ぶことはできません。なので明確に言うと、有機物で出来ている「堆肥」「米ぬか」「家畜糞尿」などは有機肥料“ではありません”。

一方化学肥料は、無機質原料から化学的に生成された肥料を指します。無機質原料を使っているもの、有機化合物から化学的行程でつくられたものも化学肥料と命名されています。
それぞれの定義だけを見てみると、一概に「有機だから」「化学だから」とは言えないことが分かると思うのですが・・・。

 

違いを知り、目的によって使い分けよう

有機肥料と化成肥料について復習。大切なのは使い分け?!│画像2

とはいえ、消費者に誤解を生まないために、「有機肥料」「化成肥料」どちらに使うにせよ、それらの違いや特性を知ったうえで使い分けることが、農作物のより良い生育には重要であると考えます。

例えば有機肥料の場合、土に施すと、元々土壌中に生育している微生物によって分解されるため、肥料としての効果が表れるのは比較的ゆっくりと言えます。
ただし成分含量が低いため、ある物質だけが過度に濃くなってしまったり、塩類集積といった問題は出にくいため、継続的に農作物を生育しやすいという利点はあります。土壌の微生物相を豊富にする場合にも、化成肥料よりは有機肥料の方が適していると言えるでしょう。

ただし先にも述べた通り、有機肥料は化学肥料に比べ効果が表れるのはゆっくりですし、価格も高いのでなかなかふんだんに使いこむことができません。また農業も商売のひとつですから、安定的な供給が必要ですよね。
生産性を上げることや、品質を改良することは農業の基本とも言えます。
それらをおざなりにして農作物を育てることはできません。

化学肥料の特徴は、肥料としての効果の即効性や、必要となる栄養成分の割合を調整しやすいところにあります。有機肥料だと、どうしても必要となる栄養分の配合量が未明瞭な部分があります。しかし化学肥料であれば、単一の肥料の場合、窒素なら窒素、リンならリンと必要な成分だけを土に施すことができますから、量の調整がしやすいのです。

また化学的工程によって大量に製造できるため、肥料の価格も安く抑えることができ、使いやすいでしょう。
それぞれの特徴を考えた結果、農作物を育てる基盤となる土づくりには有機肥料が、農作物の生育過程で必要になってくる追肥には化成肥料が向いているのではないかと考えます。

 

土壌微生物への影響はどうか

というのも、有機肥料は土壌微生物への影響力も過剰ではないでしょうから、土壌微生物相を豊かにする役割も担ってくれるはずです。有機肥料によって土壌微生物の活動が活発化されれば、彼らの分泌物によって土の団粒構造が形成され、良い土の条件である「ふかふかの土」「肥料持ちの良い土」へと変化していくことでしょう。団粒構造によって保水性、通気性がよくなれば、農作物のより良い成長へとつながります。

 

有機肥料を使う時の注意

有機肥料と化成肥料について復習。大切なのは使い分け?!│画像3

有機肥料は農作物を植え付ける前の土づくりに役立つと言えますが、注意点があります。有機と化成肥料の違いとして効果の出る速度の違いを挙げましたが、有機肥料を施してからの焦りは禁物です。

施肥したからすぐに植え付けができるという訳ではありません。長くても1ヶ月程度は土づくりに時間をかける必要があります。
例えば有機質が大量に含まれている肥料や未完熟の堆肥を土に投入してしまうと、微生物が増殖する過程で農作物に与えるべき窒素を消費してしまい、農作物に必要な分の窒素が不足する「窒素飢餓」が発生してしまうことがあります。

また「ガス障害」といった有機物の分解で生じたアンモニアが土壌中にたまることで発生するガスにより、作物の葉などへ障害が生じてしまう障害が発生することもあります。
これらを解決するためには、農作物を植え付けず、土の状態が落ち着くまで「待つ」しかありません。ないしはすでに分解されやすい有機物が分解されている「完熟堆肥」を用いて土づくりを行ないます。

大量安定供給が求められていた時代に、化成肥料は「早く効き、長持ちする」利点もあって沢山使いこまれていたようですが、農作物の美味しさではなく量を追求されていたからこそ、化成肥料に悪いイメージが伴うような使い方をせざる得なかっただけなのでは?と私は考えています。

農業で収益を得るためには、安定供給は重要なものです。そのため化成肥料は決して悪ではありません。過去の使い方が消費者にとって好ましくなかったからこそ、「有機が善で化成は悪」のようなイメージがついてしまったのだと考えます。農業従事者の方には、それぞれの肥料をうまく使い分けることで、美味しい農作物づくりに着手していってほしいですし、消費者に向けて「有機肥料」と「化成肥料」の正しい情報を伝えていけるよう努力していきたいところです。

 

数あるカクイチの製品の中から
農家の方へオススメな製品をピックアップしました。


 

肥料カテゴリの最新記事