農薬取締法改正について

農薬取締法改正について

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消費者の食に対する安心・安全志向の高まりから、「農薬」について考えるようになった生産者も多いのではないでしょうか。
農薬は病害虫の防止や生育促進など、利用する目的が明確にあり、決して一概に「危ないもの」と定義づけられてしまうのは悲しいことですが、農薬という言葉に嫌悪感を抱く消費者がいるのも事実です。とはいえ農薬は、販売されるまでの過程で厳しい検査を受けることになるため、安全性が不明瞭なものではありません。これは昭和23年に定められた「農薬取締法(のうやくとりしまりほう)」によるもので、農薬の品質と安全の使用方法の確保を図るために制定されました。

その「農薬取締法」が改正されるという話題を耳にしました。

 

農薬取締法概要

消費者へ農薬の安全性を伝えるのに重要な事項は第2条と第3条です。
簡単に説明すると、第2条は「農薬の製造、加工、輸入には、農林水産大臣の登録が必要ですよ」という条例。第3条は「毒性や環境への悪影響を見るために、残留濃度の基準を定めますよ」という条例で、この2つをクリアしないと、農薬登録へは進めません。

 

農薬取締法改正の理由

そんな農薬取締法を改正する理由なのですが、
 ・安全性の向上
 ・価格の引き下げ
が狙いになっています。

現在の農薬取締法では、登録された農薬の有効期間は3年と定められています。
国は、その農薬が当初の登録内容と変わりないかどうかを確かめるのを目的に、3年に1度再登録手続きを行なっています。
改正後は、21年度から「再“登録”」ではなく「再“評価”」となり、15年ごとに安全性を評価する制度となります。3年から15年と聞くと、登録してから評価までが長い気もしますが、最新の科学技術による評価となるため、最新基準に満たさないものは登録を取り消すなど、評価そのものは厳しいと言えます。

 

取締法改正の目的は輸出増?

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ただ安全性の向上だけでなく、農薬取締法改正の目的には「価格の引き下げ」もあります。
再評価制度と共に導入される仕組みに「規格」の設定があります。有効成分や不純物に関する上限値、下限値を定めた規格を設定し「その規格内であれば、原材料や製造方法を安価なものにしても良い」というのが狙いです。
今回、農薬取締法について調べる中で、従来の農薬製造は、安全性を評価する観点から、製造方法も固定されていたことを知りました。そのため安価な原材料、製造方法が可能になれば、安価な農薬が提供できるというわけです。

なお、この改正案は欧米に合わせた制度です。安全基準の厳しい欧米と同等の仕組みをつくりだすことで、日本生まれの農薬が海外でも登録されやすくなることを狙いとしています。安価で欧米基準でも安全な農薬が製造されれば、農薬はもちろん、その農薬を利用した農産物の輸出増も狙えると、国は考えているのです。

 

改正で気になる農薬の安全性について

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先に「安全性の向上」についても説明はしましたが、輸出増を狙っての改正と聞くと、消費者が不安視する安全性がおざなりにされているのでは…?と不安を抱く人もいるかもしれませんから、もう一度、改正案での農薬の安全性について詳しく説明していきます。

もともと昭和23年に制定された農薬取締法は、粗悪な農薬を取り除き、農薬の品質、そして食糧増産の推進することを目的としていました。その後、農薬による環境汚染や人体への影響などが注目されるようになり、昭和38年、昭和46年、平成14年と改正されています。

今回の改正案で提出される「再評価」制度は、欧米で行われている制度が基であり、その制度を参考に安全性評価項目を増えます。
今までは農薬使用者の安全性判断として、農薬の毒性だけを評価していましたが、今後は皮膚や吸入によって摂取されてしまう「暴露量」も評価に追加されます。
暴露量によりゴーグル着用などが促されるようなら、使用者に対して防護装備をするように示すことが、メーカーに求められます。

また農薬製造メーカーに対して、「国が安全性に関する情報の報告を毎年求める」ことが規定されます。
評価制度自体は15年に1度ですが、毎年1回は安全性について報告しなければなりませんし、15年後の最新技術で安全性に問題があれば、その登録は抹消されます。

 

農薬との向き合い方

農薬取締法改正により、今後は安価で安全性の高い農薬が登場することでしょう。
農地の規模が大きければ、それだけ農薬を使用する量も増え、費用もかさんでしまいます。そのため安価な農薬の登場は、生産者にとっても利のあるものです。

しかし、いくら安全性の高い農薬だからといって、むやみやたらに利用したのでは、消費者が抱える不安の解消には結びつかないと考えています。
難しい話ですが、現在は様々な情報が得られる時代です。いくら安全性の高まりを訴えても、消費者の“信頼”を損なってしまえば、生産物が購入される機会は減ってしまうでしょう。病害虫の防除や生育促進に農薬は便利ですが、目的にあわせ、用法用量を守って正しく使うことが重要だと考えます。
 

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