大豆栽培では、収穫期になっても茎や葉が緑色のまま残る「青立ち」や、子実の種皮に亀裂が生じる「裂皮粒」が発生することがあります。いずれも収穫作業の効率や大豆の品質を低下させる生育障害であり、高温や乾燥などの気象条件に加え、品種、播種時期、害虫被害など複数の要因が関係しています。本記事では、青立ちと裂皮粒がどのような障害なのか解説していきます。
青立ちとは

大豆の青立ちとは、収穫期を迎えて莢や子実が成熟しているにもかかわらず、茎や葉の成熟が遅れ、緑色が残る現象です。「莢先熟(さやせんじゅく)」とも呼ばれます。周囲の株が黄化・落葉しているなかで、青立ち株だけ葉が落ちず、茎が緑色のまま残ることもあります。
青立ちはなぜ発生するのか
青立ちが起こる大きな理由の一つは、茎葉でつくられる光合成産物と、その送り先となる莢や子実とのバランスが崩れることです。乾燥による落花・落莢や、カメムシ類などの害虫被害によって莢数が少なくなると、茎葉でつくられた養分の行き先が減ります。その結果、茎葉に養分が残り、成熟や枯れ上がりが遅れると考えられています。莢数が少ない状態で日射量が多く、光合成が活発になることも発生リスクを高めます。
また、近年は高温との関係も明らかになっています。農研機構の研究では、子実肥大が始まって約28日後から収穫期までの「登熟期後半」が高温になると、青立ちが増加しました。圃場試験でも、この時期の気温が高いほど発生が増える傾向が確認されており、温暖化に伴う秋の高温が、近年の青立ち増加の一因である可能性が示されています。
このほか、登熟期間中の乾燥や、乾燥後の急激な湿潤、早播きによる過剰な栄養生長なども関係します。
青立ち株は茎葉に水分が多く残るため、コンバイン収穫の妨げになります。植物体の汁が子実に付着して「汚粒」が生じたり、青立ち株の事前除去や別収穫が必要になったりするため、品質と作業効率の両面で問題になります。
裂皮粒とは

大豆の裂皮粒(れっぴりゅう)とは、子実を覆う種皮に亀裂が生じた大豆のことです。「皮切れ粒」とも呼ばれます。発芽能力や内部品質への影響だけでなく、外観が損なわれるため、とくに煮豆など粒の形を生かす用途では商品価値の低下につながります。
裂皮粒の裂け方は一様ではありません。たとえば、種皮が不規則に引きちぎられたように裂ける「不定形裂皮」や線状に切れたような「線形裂皮」、種皮の側面に細かな亀裂が網目状に現れることもあります。裂皮の形状や発生しやすさには品種による違いがあります。
裂皮粒はなぜ発生するのか
裂皮は、成長する子葉を包む種皮が、子実の肥大や成熟に伴う形状・水分の変化に耐えられなくなって裂ける現象と考えられます。簡単にいえば、「中身の大きさや形の変化」と「外側の種皮の伸びや縮み」がうまく釣り合わなくなることで発生します。
兵庫県の丹波黒大豆に関する調査では、裂皮粒は正常粒よりも百粒重が大きく、子実の縦横比が大きいほか、子葉が変形した粒も多く見られました。成熟期の乾燥によって子実が収縮する過程で、種皮に大きな引っ張る力がかかったことに加え、9月下旬の高温・少雨による成熟の遅れなどが重なって、網目状の裂皮が発生したと推定されています。
また、青立ち同様、登熟期の高温も重要な要因です。岡山大学の研究では、高温条件が子実の成熟や種皮表面の構造、裂皮の発生に及ぼす影響が調べられています。高温によって子実の肥大や成熟と種皮の形成とのバランスが乱れることが、裂皮の発生に関係すると考えられます。
まとめ

ダイズの青立ちも裂皮粒も、単一の原因で発生するものではありません。複数の条件が重なって発生する生育障害です。
したがって対策を考える際は、地域の栽培指針と品種特性を踏まえ、播種期を適切に設定し、登熟期が極端な高温に重なるのを避けることが基本となります。登熟期の高温・少雨はもちろん、その後の急激な乾燥も関係しますから、適切な水管理によって極端な乾燥を避け、成熟後は適期に収穫することが大切です。
また近年では、気温や土壌水分、品種などの情報から青立ちの発生程度を予測するAIモデルの開発も進められています。寒冷地から暖地まで4地点、16年分・約500事例の栽培データを利用し、品種、開花前後の気温、土壌水分などから、青立ちの起こりやすさを0~5のスコアで示します。青立ちを直接防ぐ技術ではありませんが、過去の気象データや天気予報と組み合わせることで、栽培前から発生リスクを見通し、播種時期や品種、栽培管理を検討するための活用が期待されています。
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