作物を順調に育てるためには、窒素、リン酸、カリなどの養分を肥料として補う必要があります。しかし、単に多くの肥料を施せばよいわけではありません。施肥量が少なすぎれば生育や収量が低下し、多すぎれば生育が乱れたり、圃場の外へ流出した養分が周辺環境に影響を及ぼしたりすることがありますし、コストもかさみます。
では、実際の施肥量はどのように決めればよいのでしょうか。
施肥量を決める基本的な考え方

施肥量を考えるうえで、まずは「作物が必要とする養分量」を把握することが大切です。
作物は、根から吸収した養分を使い、茎や葉、根、実をつくります。
目標とする収量を得るために必要な養分量は、作物の種類によって異なりますが、作物が吸収する養分のすべてを、肥料だけで補うわけではありません。土壌にも、もともと含まれている養分や、以前に施した肥料の一部が残っています。そのため、施肥量は基本的に、次の考え方で求められます。
施肥量=作物が必要とする養分量-土壌から供給される養分量
さらに、施した肥料の全量が作物に吸収されるわけではありません。肥料成分の一部は雨水とともに流れたり、気体となって失われたり、土壌中で作物が吸収しにくい形に変わったりします。そこで「養分利用率」も考慮します。
施肥量=作物が必要とする養分量÷養分利用率-土壌などからの供給量
養分利用率とは、施した肥料成分のうち、作物が実際に吸収できた割合です。窒素、リン酸、カリでは利用率が異なり、土壌の種類や栽培条件によっても変わります。
よって概念的には、作物が必要とする養分量のうち、土壌や堆肥などから供給される分を差し引き、肥料の利用率や損失を考慮して施肥量を決めることになります。ただし、土壌由来の養分量や利用率の扱いは、施肥基準や算定方法によって異なりますし、生産者が作物の養分吸収量や利用率を一から調べて、正確な施肥量を計算するのは簡単ではありません。
実際の栽培では、地域ごとに作成された「施肥基準」を活用します。
まずは地域の施肥基準を確認する
施肥基準とは、それぞれの地域で作物を栽培するときに、どの肥料成分を、いつ、どの程度施すかを示した目安です。
必要な施肥量は、同じ作物でも地域によって異なります。気温や降水量、土壌の性質、作型、目標収量などに違いがあるためです。また、キャベツとダイズのように作物が違えば、必要とする養分量や吸収する時期も異なります。
農林水産省のウェブサイトには、都道府県が作成した施肥基準等へのリンクがまとめられています。「施肥基準」では作物ごとの施肥時期や標準量を、「土壌診断基準値」では圃場の状態を判断するための目安を確認できます。
土壌診断で圃場の養分量を確認する
同じ地域で同じ作物を栽培していても、圃場によって土壌中の養分量は異なります。
長年にわたって肥料や堆肥を施してきた圃場では、特定の養分が蓄積している場合があります。そのような圃場に標準量の肥料を施し続けると、必要以上の施肥になる可能性があります。
土壌診断では、一般にpH、EC、有効態リン酸、交換性カリウム、石灰、苦土などを調べます。
pHは土壌の酸性・アルカリ性を示す値です。ECは、土壌溶液中に溶けている塩類の総量を間接的に示す値で、硝酸態窒素の蓄積や塩類集積を判断する手がかりになります。有効態リン酸や交換性カリウムは、作物が利用しやすい養分が土壌にどの程度あるかを確認する項目です。
農研機構は、土壌診断で水田土壌中のリン酸やカリウムの状態を確認し、その結果に応じて施肥量を減らすための指針を示しています。
(リン酸の減肥量や土壌診断を行う間隔は、土壌の種類や有効態リン酸量によって異なります。なお、この資料で示されているリン酸の減肥量や土壌中の有効態リン酸量の推移は、稲わらを全量圃場へ還元することを前提としています。そのため、土壌診断の数値を見て自己判断で肥料を大幅に減らすのではなく、地域の減肥基準や普及指導員、JAなどの助言も参考にしてください。)
堆肥や前作から供給される養分も考える
施肥量を決める際には、化学肥料だけでなく、堆肥や有機質肥料から供給される養分も計算に入れます。
ただし、堆肥に含まれる養分が、施用した年にすべて作物へ吸収されるわけではありません。有機物が分解される速度は、堆肥の種類、気温、水分、土壌条件などによって変わります。堆肥の分析値や地域の施肥基準を確認し、肥料成分として利用できる量を見積もる必要があります。
前作で施した肥料の残りや、圃場へすき込んだ作物残さ、緑肥なども養分の供給源になります。これらを考慮せずに化学肥料を追加すると、合計の施肥量が過剰になる場合があります。
施肥記録を次の栽培に生かす

施肥基準や土壌診断を利用しても、最初から圃場に最適な施肥量を決められるとは限りません。天候、品種、土壌水分、根の発達などによって、肥料の効き方が変わるためです。
そこで、施肥した日、肥料の種類、成分量、元肥と追肥の量、生育状況、収量、品質などを記録することがおすすめです。
肥料が多すぎたのか、足りなかったのかを収穫後に振り返り、土壌診断の結果と合わせて次作の施肥量を調整します。
施肥量は、施肥基準だけで決めるものではありません。地域の基準を出発点として、土壌診断、堆肥などから供給される養分、肥料の成分割合、生育状況を組み合わせて判断することが大切です。
参考文献:生井兵治・相馬暁・上松信義編著「農学基礎セミナー 新版 農業の基礎」(農山漁村文化協会、2003年)
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