下水汚泥由来肥料とは?成分量だけでは分からない「肥効」の考え方

下水汚泥由来肥料とは?成分量だけでは分からない「肥効」の考え方

下水処理などで発生する汚泥には、窒素やリンなど、作物の生育に必要な成分が含まれています。これらを肥料として利用できれば、輸入肥料への依存を減らし、地域内で資源を循環させることにつながります。

 

 

汚泥肥料とは

下水汚泥由来肥料とは?成分量だけでは分からない「肥効」の考え方|画像1

 

汚泥肥料とは、下水処理場、し尿処理場、食品工場などから発生する汚泥を原料としてつくられる肥料です。

汚泥をそのまま農地へ施用するのではなく、脱水、乾燥、発酵、焼成といった処理を行い、肥料として利用できる状態にします。下水汚泥を発酵させて堆肥のようにしたものは、「汚泥発酵肥料」などと呼ばれます。

なお、下水汚泥には窒素やリン酸が比較的多く含まれる一方、一般にカリの含有量は少ない傾向があります。そのため、汚泥肥料だけですべての肥料成分を補えるとは限りません。不足するカリなどを、別の肥料で補う必要があります。

また、汚泥肥料の袋には「窒素4%」「リン酸4%」などと表示されていますが、その全量を作物がすぐに利用できるとは限りません。作物に利用される割合は、汚泥の種類や製造方法、土壌、気温、作物などによって変わるためです。

「含量」と「作物が利用できる量」に注意

肥料に含まれる窒素やリン酸の量は、成分分析によって確認できます。しかし、その成分がすべて施用直後から作物に吸収されるわけではありません。

たとえば窒素であれば、土壌中ですぐに利用できるものもあれば、微生物によって分解されてから利用できるものもあるからです。リン酸も同様です。肥料に含まれていても、土壌中で鉄やアルミニウムなどと強く結びつけば、作物が吸収しにくくなることがあります。

そのため、汚泥肥料を使って施肥設計を立てる場合には、成分の含有量だけでなく、作物がどの程度利用できるかを確認することも重要です。

汚泥肥料中の窒素について

作物は、主にアンモニア態窒素や硝酸態窒素といった「無機態窒素」を根から吸収します。

一方、汚泥肥料に含まれる窒素の一部は、「有機態窒素」として存在しています。有機態窒素は、そのままでは作物が利用しにくく、土壌中の微生物によって分解され、無機態窒素に変化してから利用されます。この変化を「無機化」といいます。

有機態窒素の無機化は、施用してすぐにすべて進むわけではありません。気温、土壌水分、土壌の種類などによって、進み方が変わります。

農研機構などが参加した鹿児島県の実証では、下水汚泥と焼酎粕などを組み合わせた肥料が開発されました。この際、培養試験による窒素無機化率は茶栽培用に組み合わせた汚泥肥料で28%、園芸作物用に組み合わせた汚泥肥料で19%となっています。

上記の研究報告では、園芸作において、窒素肥効率を50%で想定していたものの、施肥試験にて肥効率が27〜33%程度だったことが確認されていますが、収量や茶葉成分について配合肥料を与えた区画と有意差がなかったことや、病害が発生しなければ化学肥料を与えた区画よりも収量増加が見込まれるなどと示され、一部を除き化学肥料を汚泥肥料に代替できると結論づけています。

なお、同じ汚泥発酵肥料であっても、窒素の形態や効き方は製品ごとに異なります。たとえば東北農政局が紹介する汚泥発酵肥料「アキポスト」は、土壌へ施用した後に有機態窒素が新たに無機化する量は少なく、「即効性窒素肥料」として紹介されています。

汚泥肥料中のリン酸について

リン酸の肥効は、肥料に含まれる量だけでなく、どのような化合物として存在しているかによって変わります。リン酸が水や弱い酸に溶けやすい形であれば、比較的作物に利用されやすいと考えられます。一方、鉄やアルミニウムなどと強く結びついている場合は、土壌中で溶けにくく、作物が利用しにくいことがあります。

リン酸の利用されやすさを評価する指標の一つが「く溶性リン酸」です。これは、水には溶けにくいものの、植物の根から出る酸(根酸に含まれるクエン酸など)に溶けて少しずつ吸収されるリン酸を指します。

前述した鹿児島県の実証では、茶栽培用と園芸作物用の汚泥肥料に含まれる全リン酸は、それぞれ4.5%と4.4%でしたが、リン酸の溶けやすさを示す「く溶率」は、茶栽培用が53%、園芸作物用が93%でした。このように、リン酸の含有量が同程度でも、利用されやすさまで同じとは限りません(なお、く溶率は一定の分析条件でリン酸がどれだけ溶けるかを示す値であり、作物が実際に吸収する割合ではありません)。

また、農研機構が滋賀県で行った実証でも、汚泥肥料で化学肥料の一部を代替し、アズキやコムギを栽培しています。リン酸の全量を汚泥肥料で補ったアズキでも、慣行栽培以上の収量が得られています(ただし、これらは特定の肥料・土壌・栽培条件で得られた結果です)。

 

 

汚泥肥料を施用するときの注意点

下水汚泥由来肥料とは?成分量だけでは分からない「肥効」の考え方|画像2

 

汚泥肥料の施用量を決めるときは、肥料に表示された全窒素・全リン酸・全カリ含量はもちろん、肥効率のほか、製造方法が発酵、乾燥、焼成などのどれに当たるかなどを確認します。もちろん、圃場の土壌診断結果も忘れずに行い、施肥前には都道府県が示す作物別の施肥基準も確認してください。

特に、全窒素量だけを基準に化学肥料を減らすと、作物が必要とする時期に窒素が不足する可能性があります。反対に、リン酸を多く含む汚泥肥料を土壌診断なしで継続施用すると、土壌中にリン酸が蓄積するおそれがあります。不足しやすいカリを別の肥料で補うことも含め、成分ごとに施肥量を計算することが大切です。

農研機構では、汚泥肥料の分析値などから肥効を予測し、施肥設計に活用するための「肥効見える化アプリ」を公開しています。こうした仕組みも利用しながら、化学肥料との適切な組み合わせを考えることが、汚泥肥料を安全かつ有効に活用するポイントです。

日本土壌インベントリー

 

参照サイト

肥料カテゴリの最新記事