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農林水産省が推進する「農福連携」とは。福祉の場としての農業。

農林水産省が推進する「農福連携」とは。福祉の場としての農業。

超高齢化社会を迎える日本で、農業従事者の高齢化が度々課題として挙げられていますが、その一方で、介護を必要とする高齢者の生きがいの場として農業のニーズが高まっているという話があります。また、そのニーズの対象は高齢者だけでなく、障害のある人や生活困窮者にも当てはまります。

今、農業は「福祉の場」としても注目されています。

 

 

農水省が推進する「農福連携」とは

農林水産省が推進する「農福連携」とは。福祉の場としての農業。|画像1

 

福祉の場として注目されている農業を、農林水産省は「農福連携」として推奨しています。

農福連携とは、障害者等の農業分野での活躍を通じて、自信や生きがいを創出し、社会参画を促す取組であり、農林水産省では、厚生労働省と連携して、「農業・農村における課題」、「福祉(障害者等)における課題」、双方の課題解決と利益(メリット)があるWin-Winの取組である農福連携を推進しています。

引用元:「農」と福祉の連携 農林水産省

農業の現状

日本では

  • 農業者の高齢化
  • 農業者・耕地面積の減少

が課題として度々取り上げられています。

高齢化が進むことに対する懸念もありますが、平成30年2月に閣議決定された「高齢社会対策大綱」では「基本的考え方」に

(1)年齢による画一化を見直し、全ての年代の人々が希望に応じて意欲・能力をいかして活躍できるエイジレス社会を目指す。
(2)地域における生活基盤を整備し、人生のどの段階でも高齢期の暮らしを具体的に描ける地域コミュニティを作る。
(3)技術革新の成果が可能にする新しい高齢社会対策を志向する。

引用元:高齢社会対策大綱(平成30年2月16日閣議決定) 内閣府

とあるように、農村漁村の活力を取り戻すべく、高齢者が活躍できる場、生活できる場としての取り組みが行われています。

とはいえ、農林漁業には労働力が欠かせません。そこで近年期待されているのが、障害がある人の雇用です。近年、障害のある人の農林漁業への雇用は増加傾向にあります。

ハローワークを通じた、農林漁業への障害のある人の就職件数は平成29年度で2,907件。これは5年前の1.2倍です。

農福連携に期待されること

労働力不足や過疎化が進む農村漁村において、障害のある人の労働力は頼もしい存在です。障害のある人や生活困窮者にとっては、就労訓練を行う場であり、また働くことで収入を得ることができます。認知症などを患い、介護を必要とする高齢者にとっても、生きがいを見いだせる場所として農業は重要な役割を担います。

高齢者、障害のある人、生活困窮者にとって、自分の役割を果たせる場所になる農業。また農業を営む側も、新たな担い手を確保でき、地域活性化にもつながります。農水省が出した「農福連携」の定義にもあったように、これはWin-Winの取組なのです。

農福連携がもたらしたもの

少々古いデータにはなりますが、2014年に行われた「農業活動に取り組んだ障害のある人の変化に関する調査」についてご紹介します。障害のある人の就労を支援する施設のスタッフにアンケートをとったところ、障害のある人に以下のような変化があったと回答がありました。

  • 精神の状態がよくなった・改善した
  • 身体の状態がよくなった・改善した
  • 挨拶が出来るようになった

スタッフの主観ではありますが、農作業による生活習慣の改善や農作業中のコミュニケーションが障害のある人の心身に影響を与えていることがわかります。

 

 

農福連携の事例

農林水産省が推進する「農福連携」とは。福祉の場としての農業。|画像2

 

期待の高まる「農福連携」の事例をいくつか紹介していきます。

NPO法人つくばアグリチャレンジ

「NPO法人つくばアグリチャレンジ」が運営する「ごきげんファーム」。行動指針には、

障がいのある人達の幸せを第一に考えよう

障がいのある人達が何を望んでいるのかをしっかりと把握して、それを実現していくために何ができるかを考えよう。そして、望んでいないことであっても、その人の将来のことを考えた時に必要なことであれば、厳しいことでも伝えていく必要がある。表面的に必要なことではなく、本質的に必要なことを対話の中で見つけていくこう。自分のためではなく、障がいのある人達の幸せを第一に事業を進めていこう。

引用元:ごきげんファーム行動指針

とあり、障害のあるスタッフとともに野菜づくりに励んでいます。「ごきげんファーム」の掲げるルールには「“誰でも受け入れる”“やめさせない”“あきらめない”」ともあります。

現在は「農業ヘルパー事業(人手が必要な時期に手伝いに行く)」や「体験農園事業」、季節ごとに楽しめるイベントを通じて、地域の人と障害のある人が一緒に楽しめる場を提供しています。

有限会社大紀コープファーム

「有限会社大紀コープファーム」は障害のある人の受け入れだけでなく、引きこもりやニートを経験したことのある、働くことに困難を抱えた若者も積極的に受け入れています。

農産物を生産し出荷するまでにはさまざまな作業があります。大紀コープファームはそれらを小分けにし、障害のある人や就労に困難を抱えた人たちが長く働ける場を提供しています。

社会福祉法人佛子園

「社会福祉法人佛子園」が手掛ける「日本海倶楽部」は、過疎化や高齢化が進んでいる奥能登で地ビール工房やレストランなどを運営しています。障害のある人は、そこでホールスタッフやビール製造などに携わり、リゾートエリアに変貌した奥能登で活躍しています。

社会福祉法人 こころん

障害のある人の就労を支援する「社会福祉法人 こころん」。2010年に高齢化により経営を続けられなくなった鶏舎を引き継ぎ、2011年にNPOから社会福祉法人化して農業参入を果たしました。

地域農家と連携しながら、肥料や農薬に頼らない自然栽培で農・畜産物を生産しています。生産のみならず、生産物を利用した菓子製造に取り組んだり、直売やカフェでの販売など6次産業化も積極的に進めています。地元の高齢者の買い物支援等も行っており、地域活性化に貢献しています。

株式会社 九神ファームめむろ

「株式会社 九神ファームめむろ」はジャガイモの生産と加工を行っています。農業と加工作業を組み合わせ、6次産業化することで、作業を通年行うことができます。また積極的に高齢者を雇用し、高齢者の生きがいを見出す場にもなっています。

 

 

植物工場も農福連携に役立つ?!

農林水産省が推進する「農福連携」とは。福祉の場としての農業。|画像3

 

近年、ロボット技術やICT(情報通信技術)技術を活用したスマート農業が普及しつつありますが、そこで注目を集めている「植物工場」も「農福連携」に役立っています。

大和ハウス工業株式会社の植物工場システム「アグリキューブ」は、農業者の高齢化や減少、天候不順や自然災害など、日本の農業が抱える課題に対応する新しい農業の形として注目されています。

そんな「アグリキューブ」は「障がい者の新たな就労機会を創出する施設」としても採用されました。「働き手不足を解消するという面でも植物工場が役立つ」と期待されています。機械でコントロールしやすい生産面ではなく、収穫や加工作業に高齢者や障害のある人などを置くことで、働く場を提供することができるのです。

生産効率をあげながらも、人々が活躍できる機会・場をつくることができるのは、植物工場の強みになるのではないでしょうか。
参考文献

  1. 福祉分野に農作業を~支援制度などのご案内~ 「農」と福祉の連携 農林水産省
  2. 「農」と福祉の連携 農林水産省
  3. 農福連携はここまで進んだ!成功事例と課題から見る未来 マイナビ農業
  4. 日本海倶楽部 社会福祉法人 佛子園
  5. 仲間が集まる農場づくりを! 地域に愛される「農福連携」成功事例 AGRI JOURNAL
  6. 「農福連携」で作る当たり前の地域の姿。障害のある人も、引きこもりの人も、高齢者も、みんな地域の一員
  7. agri-cube ID(アグリキューブID)
  8. vol.2「農業を工業化する」 大和ハウス工業株式会社

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