今さら聞けない「農家」の定義と分類について。

今さら聞けない「農家」の定義と分類について。

本記事では、日本の農業における「農家」の定義や「農業経営体」「農業法人」「農地所有適格法人」といった表現の違いについてご紹介していきます。

 

 

「農家」の定義とは

今さら聞けない「農家」の定義と分類について。|画像1

 

近年では、農業経営の効率化を目的に法人化が進んでいることから、2005年からは「農家」ではなく「農業経営体」が統計の主な単位となっています。しかし、農家という概念は依然として重要であり、いくつかの分類が設けられています。

なお、伝統的な「農家」という単位は、統計上「世帯」として把握されてきました。国勢調査における世帯の定義は「居住および家計を共にしている人の集まり」となっています。農家の場合は、この「居住および家計を共にしている人の集まり」に加えて、生産・経営の単位としての役割も持っています。

まず、1990年世界農林業センサス以降の「農家」の定義は「経営耕地面積が10a以上の農業を営む世帯、または過去1年間における農産物販売金額が15万円以上の規模の農業を行う世帯」です。

農家、農家以外の農業事業体、農業サービス事業体、土地持ち非農家

以下に、農家、農家以外の農業事業体、農業サービス事業体、土地持ち非農家の違いについて表にまとめます。

分類 定義または概要
農家 経営耕地面積が10a以上、または年間農産物販売額が15万円以上の農業を行う世帯。自家消費や販売を目的に作物を栽培したり、家畜を飼育する。
農家以外の農業事業体 法人や団体など、農家以外で農業を営む事業体。大規模な水田作経営を行う事業体が増えており、法人化が進んでいる。
農業サービス事業体 農家や農業事業体からの委託を受けて農作業を行う事業所。苗の生産・販売を行う事業所も含む。
土地持ち非農家 農業は行わないが、5a以上の耕地または耕作放棄地を所有している世帯。

前述したように農家は「世帯」として把握されてきたこともあり、家族経営を基本とし、一定の規模以上の農業を営むものとされます。

農家以外の農業事業体は、法人化されたり、地域の集落営農組織が運営するケースがあり、農業サービス事業体は、農家や事業体のサポート役として、農作業の受託や苗の生産・販売を行います。

土地持ち非農家は、農業を行わないものの、耕作地を所有しており、貸し出すこともあります。

なお、経営耕地面積や年間農産物販売額等の数値を示した定義については以下のサイトを参照してください。

4 用語解説|愛知県

「農家」の中での分類(販売農家、自給的農家)

前述した農家の中でも、販売農家と自給的農家に分けられます。以下にそれぞれの違いを抜き出したものを表にまとめます。

分類 経営耕地面積 販売金額
農家 10a以上 過去1年間において15万円以上
販売農家 30a以上 調査期日前1年間において50万円以上
自給的農家 30a未満 年間50万円未満

また、販売農家をさらに細かく分類すると以下のようになります。

分類 概要
主業農家 農業所得が主であり、65歳未満の世帯員が年間60日以上農業に従事
準主業農家 農外所得が主だが、65歳未満の世帯員が年間60日以上農業に従事
副業的農家 65歳未満の世帯員が年間60日以上農業に従事していない
専業農家 世帯内に兼業従事者(年間30日以上の非農業従事者)がいない
兼業農家(第1種) 兼業者がいるが、農業所得が兼業所得よりも多い
兼業農家(第2種) 兼業者がいて、兼業所得のほうが農業所得より多い

主業農家・準主業農家・副業的農家は、65歳未満の世帯員の農業従事日数によって区別されます。

また、専業農家・兼業農家(第1種・第2種)は、世帯内の兼業従事者の有無や農業所得と兼業所得の割合で区別されます。
専業農家は農業のみで生計を立てているが、兼業農家は農業以外の収入源を持ちます。

 

 

農業法人について

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前述した農家とは違い、農業法人は農業を営む法人(個人[自然人]以外で、法律上の権利・義務の主体であるとみとめられたもの|出典元:ほうじん【法人】 | ほ | 辞典 | 学研キッズネット)の総称です。

株式会社や農事組合法人など多様な形態が含まれますが、農地を所有するには農地法の要件を満たし、農地所有適格法人として認められる必要があります。また、法人化すると、人材確保や融資の面で利点があります。

なお、農業法人は農地を利用するか否かによって「農業生産法人」と「その他の農業法人」に分けられますが、このうち「農業生産法人」は2016(平成28)年4月1日の改正農地法の施行により、「農地所有適格法人」という呼称に変わりました。

「農地所有適格法人」は定義上、「農地等の権利を取得し、農業を行うことのできる法人」を指します(出典元:鹿児島県/農地所有適格法人とは)。

 

 

農業経営体との違いについて

今さら聞けない「農家」の定義と分類について。|画像3

 

記事冒頭で、“2005年からは「農家」ではなく「農業経営体」が統計の主な単位となっています”と記しました。前述した「農家」、「農地所有適格法人」、そして「農業経営体」の違いをまとめると以下のようになります。

分類 定義・特徴
農家 経営耕地面積が10a以上、または年間農産物販売額が15万円以上の世帯。

農業を主な生業とする個人経営体が多い。

農地所有適格法人 2016年に「農業生産法人」から名称変更。

農地を所有できる法人で、事業内容や構成員、執行役員などの要件を満たす必要がある。

農業経営体 2005年以降の統計上の概念。

農業を生業とするすべての事業者を含み、個人経営体と法人経営体に分かれる。

最後に、農業経営体の分類をまとめます。

経営体の種類 特徴・条件
個人経営体 家族単位で経営する農業。

大半が家族経営体であり、日本の農業の97%を占める。

法人経営体 農業を法人化して運営する経営体。
農事組合法人、株式会社、合同会社などが該当する。
団体経営体 個人経営体以外の経営体。

法人経営体のほか、法人化していない組織経営体も含む。

農業経営は、個人から法人まで多岐にわたる形態が存在し、それぞれに特徴と要件がことなります。

 

参考文献: 八木宏典『図解知識ゼロからの現代農業入門 最新版』p.44〜47(家の光協会、2019年)

参照サイト

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