農作業中の熱中症に要注意!農作業中の熱中症による死亡事故の発生状況を知ろう

農作業中の熱中症に要注意!農作業中の熱中症による死亡事故の発生状況を知ろう

2020年6月9日、全国各地で真夏日(1日の最高気温が30℃を超えた日)となり、熱中症や新型コロナウイルス感染防止のためのマスク着用と猛暑による「マスク熱中症」への注意喚起がなされました。

これからどんどん暑くなっていく中、屋外やビニールハウス内で作業をする農業者も熱中症には十分注意しなければなりません。熱中症の具体的な症状を知らず、意識しない間に熱中症にかかっていた、なんて場合もあります。

そこで本記事では熱中症への注意喚起として、農作業中の熱中症による死亡事故の発生状況、また熱中症の主な症状についてまとめていきます。

 

 

農作業中の熱中症による死亡事故について

農作業中の熱中症に要注意!農作業中の熱中症による死亡事故の発生状況を知ろう|画像1

 

農林水産省が公表した「平成30年に発生した農作業死亡事故の概要」によると、平成30年に農作業事故により亡くなった274人のうち、熱中症で死亡した人は43人に上りました。農作業事故による死者数は前年より30人の減少、昭和46年の調査開始以降最小値となりましたが、熱中症による死者数は「熱中症」という区分で調査を始めた平成16年以降最多となっています。

また熱中症による死亡者数を年齢別で見てみると、平成20〜29年のデータより、全体の86%が70代以上で発生していることがわかっています。年齢を重ねると、暑さや水分不足を感じる機能や身体の調整機能が低下していくため、熱中症の症状に気づきにくくなるといいます。

もちろん若年層、中年層であっても要注意。

  • 体調が悪い人
  • 肥満傾向の人
  • 持病のある人
  • 体力、持久力のない人
  • 暑さに慣れていない人
  • 熱中症になったことがある人

などは、年齢問わず、熱中症に注意しましょう。暑さに弱い、体温調節機能がうまく働かない、自分の身体状態をわかっておらず無理をしてしまう等々の場合には熱中症を発症しやすいと言われています。

農林水産省が公表した農作業中の熱中症対策について(令和元年度通知文)の死亡事故の事例には、農業歴50年のベテランであったり、比較的体力のある50代であっても亡くなられてしまうことがあることが記されています。

 

 

熱中症の症状を知ろう

農作業中の熱中症に要注意!農作業中の熱中症による死亡事故の発生状況を知ろう|画像2

 

暑さの感じ方は人によって異なります。また熱中症の代表的な症状を以下に記載しますが、熱中症には特徴的な症状がありません。そのため、以下に紹介する症状に当てはまらなかったとしても、暑い環境下で生じた体調不良は「熱中症かもしれない」と疑うことが、症状を悪化させないポイントと言えます。

熱中症が疑われる症状には

  • めまい
  • 吐き気
  • 頭痛
  • 体がだるい
  • 体が熱い
  • 汗をかかない
  • 手足がしびれる
  • 手足が冷たくなる
  • まっすぐ歩けない
  • 意識に障害がある

などが挙げられます。

このような症状に気づいたとき、また少しでも体調不良を感じた場合には、涼しい場所に移動し、身体を冷やしましょう。意識があり、自分で水分補給ができる場合には、汗で失われた電解質を補えるスポーツドリンクや経口補水液などを呑みます。

 

 

熱中症対策のために「暑さ指数」を確認しよう

 

農林水産省は、熱中症対策を行う際、気温ではなく「暑さ指数」を確認することを推奨しています

暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。

引用元:環境省熱中症予防情報サイト 暑さ指数(WBGT)とは

暑さ指数は「気温の効果:湿度の効果:輻射熱※の効果」の3つを取り入れた温度指標です。

※地面や建物・体から出る熱のこと。温度が高い物からたくさん出る。

以下の暑さ指数における生活活動の目安や注意事項、そして各地域の暑さ指数を確認し、どの時間帯(温度帯)にどのような農作業をすべきか考えてから行動することをおすすめします。

 

<日常生活における目安>

暑さ指数

生活活動の目安

注意事項

危険(31℃以上) すべての生活活動で熱中症がおこる危険性あり ・高齢者は安静状態でも発生する危険性「大」

・外出はなるべく避ける

・涼しい室内に移動する

厳重警戒(28℃以上31℃未満) ・外出時は炎天下を避ける

・室内では室温の上昇に注意

警戒(25℃以上28℃未満) 中等度以上の生活活動で熱中症がおこる危険性あり ・運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる
注意(25℃未満) 強い生活活動で熱中症がおこる危険性あり ・一般に危険性は少ない

・ただし、激しい運動や重労働時には発生する危険性あり

出典元:環境省熱中症予防情報サイト 暑さ指数(WBGT)とは?
<農作業における目安>

暑さ指数

作業強度

作業の例

33

(暑さに慣れていない人は32) 

安静にする 安静にする
30
(暑さに慣れていない人は29)
軽作業 ・書く、簿記など

・点検や組み立て、軽い材料の区分けなど

28

(暑さに慣れていない人は26)

中程度の作業 ・トラクターや重機の操作

・草むしりや収穫など

25

(暑さに慣れていない人は22)

激しい作業 ・草刈り、シャベルを使った作業

・重い荷物の荷車を動かすなど

23

(暑さに慣れていない人は18)

極めて激しい作業 ・激しくシャベルを使う、掘る

・階段を登る、走るなど

 

出典元:農作業中の熱中症対策について 令和元年5月9日 農林水産省生産局技術普及課長

暑さ指数が28℃(厳重警戒)を超えると熱中症患者が著しく増加すると言われています。暑さ指数と農作業における目安を確認し、無理のない範囲で作業することを意識しましょう。

関連記事:「自分は大丈夫」が一番危険!農作業時の熱中症対策5つ

 

参考文献

  1. 平成 30 年に発生した農作業死亡事故の概要 農林水産省
  2. 熱中症に特に注意したい人|大塚製薬
  3. 環境省熱中症予防情報サイト 暑さ指数(WBGT)とは
  4. 農作業中の熱中症対策について 農林水産省

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