白色疫病とは、タマネギなどネギ科ネギ属に分類されるネギ属植物やユリ科植物などに発生する病害です。主に葉に青白色の病斑を形成し、症状が進行すると葉が折れ曲がり、先端が垂れ下がったりよじれたりします。病斑が広がると、葉全体が色を失い、最終的には枯死に至ります。
被害の様子
白色疫病の被害は、主に葉や葉鞘に現れます。特に、タマネギやネギ類では成長中の葉に顕著な被害が見られます。
最初に病斑が現れるのは葉の中央部で、不整形で暗緑色〜緑色、水浸状の病斑が形成されます。その後、病斑は拡大して油浸状となり、青白く変色、葉が下垂し、最終的には枯れてしまいます。病斑は古くなると白色〜灰白色に変わります。
被害が進行すると葉が完全に枯れてしまうので、植物の生長に大きな影響を与えます。
病原菌の生態
白色疫病の病原菌は、糸状菌の一種である「フィトフトラ・ポリ」(Phytophthora porri Foister)です。
この菌は多湿と低温を好みます。
栽培終了後に、土壌や枯れた植物の葉、根に残った胞子(子孫を残すための手段としてつくる生殖細胞)が伝染源となります。胞子は16℃以下の低温で活発に発芽し、遊走子(べん毛をもって泳ぐ胞子)を放出して新たな株に感染します。
菌糸(菌類の体を構成する、糸状の構造のこと)は5℃〜28℃の範囲で生育し、最適温度は15〜20℃です。発病した葉に分生胞子(菌糸から伸ばした柄の先にできる無性的な胞子)が形成され、これらが雨水によって周囲に広がることで感染が繰り返されます。
発生しやすい条件
白色疫病は、湿度が高く、降雨が多い時期に発生しやすいです。タマネギやネギ類などの作物では、2月から3月上旬の早春から春にかけて顕著に発生します。特に、2月上旬に平均気温が高く、降水量が多い時には急速にまん延するため注意が必要です。
また、湿地帯や排水不良の圃場、窒素肥料が過剰に施された畑での発病が多く見られます。
病気の進行を防ぐためには、適切な排水と水はけの良い土壌管理が重要です。
べと病・疫病との違い
白色疫病は「べと病」と似た部分があります。いずれの病害も植物に影響を与えるものですが、病原菌や発生条件、症状について詳しく見ていくと、いくつかの違いがあります。
まず、病原菌について。白色疫病の病原菌は前述した通り、糸状菌の一種「フィトフトラ・ポリ」(Phytophthora porri Foister)ですが、べと病の主な病原菌は「ペロノスポラ属」(Peronospora属)や「プシュウドペロノスポラ属」(Pseudoperonospora属)です。
白色疫病は低温・多湿な条件で発生しやすいです。一方のべと病の病原菌もまた多湿な条件を好みますが、4~7月、9~10月といった温暖な時期に発生しやすいといった違いがあります。
白色疫病もべと病も症状は葉に発生します。べと病の場合は葉に長楕円形または紡錘状の黄色がかった大きな病斑が現れます。湿度が高い場合には葉に斑点状の模様で白色、のちにネズミ色となる霜状のかびが生えます。
また疫病との違いについてですが、白色疫病も疫病も糸状菌によって引き起こされます。疫病の特徴的な症状は、葉に灰緑色から黄白色の水浸状の病斑が現れ、その部分から菌糸が発生し、葉が枯れ下がることがあげられます。
白色疫病も疫病も症状はとてもよく似ていますが、白色疫病は低温・多湿環境で発生する一方、疫病は高温・多湿環境で発生するといった違いがあります。
白色疫病の防除策
白色疫病が発生しやすい条件を取り除くこと、病気の早期発見と適切な薬剤散布が重要です。
耕種的防除法
まず、発生した圃場では連作を避け、輪作を行うことが推奨されています。特に、過去に発病した畑では定植を避けます。
また、排水不良の圃場では白色疫病の発生リスクが高まります。降雨後の排水が不十分な場合、病気が広がりやすくなるため、速やかな排水を心がけてください。土壌の排水性を確保するには、高畝栽培や土壌改良が有効です。
加えて、発病した苗や保菌苗を使用しないよう、移植時には苗を厳選し、病害の拡大を防ぎます。苗床でも排水を良好に保ち、発病が見られる苗は定植しないようにします。
薬剤防除
発生初期に薬剤散布を行うことが非常に重要です。予防として、定期的に薬剤を散布することで、病害を防ぐことができます。
なお、タマネギ白色疫病の防除薬剤には、リドミルゴールドMZ、ザンプロDMフロアブル、ランマンフロアブル、ホライズンドライフロアブルなどが有効です。防除薬剤を調べる際には、農林水産省が公開する「農薬登録情報提供システム」が便利です。
参照サイト
- 【営農通信20】たまねぎの要注意病害「白色疫病」について | 営農情報 | JA全農大阪
- 病害虫図鑑 タマネギ白色疫病 – あいち病害虫情報 – 愛知県
- 白色疫病
- たまねぎ 白色疫病 注意!
- タマネギ白色疫病の発生と気象との関係
- ベと病と白色疫病の発生が多く見られます
- たまねぎのべと病-感染の条件と特徴 | シンジェンタジャパン|Syngenta Japan
- 島根県:べと病、白色疫病、腐敗病(トップ / しごと・産業 / 農林業 / 技術情報 / 農業技術情報 / 病害虫防除所 / 病害虫データベース 目次 / タマネギ)
- 疫病(えきびょう) | 農業害虫や病害の防除・農薬情報|病害虫・雑草の情報基地|全国農村教育協会
- 要注意病害「たまねぎ白色疫病」 | 営農ニュース