農業系バイオマスと呼ばれる”稲わら”を活用しよう

農業系バイオマスと呼ばれる”稲わら”を活用しよう

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筆者は大学~大学院でバイオマスエネルギーの研究をしていました。
農業系バイオマスと呼ばれる“稲わら”を用いてエタノールやブタノールを生成する実験を行う研究室に所属していましたが、近年”稲わら”を活用するということへの関心が高まっています。

 

かつて“稲わら”は出なかった?!

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主食である米は、古くから栽培されていましたが、かつて“稲わら”は現代のように米収穫の副産物、農業廃棄物のような位置付けではありませんでした。稲作を始めたばかりの縄文時代には、穂だけを刈り取る収穫方法だったため、“稲わら”として副産物は出ず、そのまま収穫されなかったわらは土へ還すのが一般的でした。しかし7~8世紀にかけて鎌などの道具が誕生したことで、米を根元から刈り取るようになり、わらが出るようになりました。けれども当時は、“みの”や“わらじ”といった生活用品としてわらが利用されていたため、現代のように不要物としての扱いは受けていません。

 

稲わらを有効活用する

稲わらを活用する方法の一つとして、農地でも活用できる方法にたい肥化が挙げられます。ただし稲わらはC/N比(有機物などに含まれる炭素(C)量と窒素(N)量の質量比を指す。微生物による有機物分解の際、数値が小さければ窒素が放出され無機化を意味し、数値が大きいと土の中の窒素が微生物に取り込まれることを意味する)が高く、堆肥化し、再び米づくりに活用するにはC/N比を下げる必要があります。

稲わらのC/N比は50~60と高いめ、窒素肥料を添加することでC/N比を30程度に抑え、水分を60~70%程度に調整してから取りかかりましょう。

窒素肥料は石灰窒素がおすすめです。pHを中性付近に保つことができるので、微生物活動が活発になります。また効率よくたい肥化させる場合には、切り返しが必要です。微生物活動が活発になると、たい肥内部の酸素が不足していきます。そこで切り返しを行い、たい肥をかき混ぜることで、酸素がまんべんなく行き渡るようにしましょう。順調にたい肥化が進みますよ。

 

効率のよいセルロース分解ができれば

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またバイオ燃料などを扱う研究者の間では、「バイオエタノール」への関心が再燃しています。かつてバイオエタノールといえば、トウモロコシやサトウキビを原料とし、ガソリンなどに混ぜ込むことで地球温暖化を抑制するエコな自動車燃料として話題を集めていました。しかし原料となるトウモロコシやサトウキビの食料・飼料需要が高いことから一時期鳴りを潜めていました。

そこで原料として注目され始めたのが“稲わら”の様な、活用しづらい農業副産物・廃棄物です。近年では、食料・飼料と競合しないセルロース系原料を用いたバイオ燃料の研究が進められているのです。
日本国内に発生する稲わらは年間920万トン。現代の技術ではここから180万kLのバイオエタノールが生産可能とされています。稲わらからバイオエタノールを生成するためには、強固な繊維質を効率よく分解するために前処理が必要になります。
稲わらは単糖が繋がってできた2種類の多糖、セルロースとキシランが含まれており、酸・アルカリ性の溶液や高温水を用いて前処理しなければ、その後の作業である「糖化→発酵」を効率よく行うことができませんし、収量も悪くなってしまいます。

 

低コストでバイオエタノール生成できる?!

稲わら中にはセルロースやキシラン以外にも、ショ糖やデンプンが含まれていますが、CaCCO法という全処理技術を用いることで、それらからも糖質を回収→エタノール生成に利用できる技術が紹介されています。これは稲わら原料から100円/L程度のコストでバイオエタノールを生成するために開発された技術であり、稲わらから余すところなく糖質を回収し、エタノールにするために利用されます。

CaCC法は、あらかじめ細かくしておいた稲わら原料を水酸化カルシウムの懸濁液を反応させ、炭酸ガスで中和を行った後、中和後に残る塩・炭酸カルシウムを反応槽に残します。
従来であれば、前処理としてアルカリ処理を行った後、固体と液体を分離する工程を挟むのですが、CaCCO法であれば炭酸カルシウムが反応槽に沈殿するため、1回の処理で前処理→糖化→発酵反応が可能となります。
また残存した炭酸カルシウムは灰分として回収した後、熱処理にかけることで酸化カルシウムとして再生することもできます。

昔の活用法を見直す時?!

ただ農業従事者である私たちがいち早く稲わらを活用するのであれば、燃料として活用する前にかつての農業で行われていたような活用法を見直すことも重要なのではないでしょうか。
稲わらの「稈(かん:幹)」と呼ばれる部分は、竹のような節を持っており、穂先に米が実っても倒れない構造になっています。その特徴から変形しやすく加工しやすいのに、引っ張ってもちぎれないという強固な特徴があり、生活用品として活用されていたのも、この「稈(かん:幹)」の持つ特徴を活かしてのことでしょう。中が空洞になっているためクッション性・保温性にも優れており、“みの”を背負うと背中が暖かく感じる事に気づきます。
また野菜畑に敷くことで、雑草除けや土の乾燥予防にも役立ちました。天然のマルチですね。その強固な繊維質から完全に土に還るまでは時間がかかるかもしれませんが、天然素材ですからそのまま土壌の材料として活用することもできるのです。

 

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