新しい農業の在り方?!agrihood(アグリフッド)とは

新しい農業の在り方?!agrihood(アグリフッド)とは

アグリフッド(Agrihood)とはアグリカルチュラル・ネイバーフッド(Agricultural Neighborhood)の略称で、共同農業を中心とした住宅コミュニティを指します。

アグリフッドは農業関係の設備と住居が一体となって整備され、アグリフッドによっては居住者の農園での最低労働時間を定めているところもあれば、自治会費に農園の管理費を組み込んでいるところもあります。いずれの場合も、農業に参加することが、このコミュニティで暮らす醍醐味のひとつといえます。

 

 

キーワードはファーム・トゥ・テーブル

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ファーム・トゥ・テーブル(Farm to table)という言葉は「農場から食卓へ」を意味しており、2015〜2016年ごろにはレストランや食品業界でトレンドとなった言葉です。

トレンドとなった背景には、消費者が食材の流通経路によせる関心や信用があげられます。

ファーム・トゥ・テーブルの明確な定義はありませんが、ファーム・トゥ・テーブルは食卓に並ぶ料理が、市場や流通業者などを通さずに、特定の農場から直接届けられることを意味します。アグリフッドでの暮らしは、ファーム・トゥ・テーブルを叶える暮らしでもあり、健康的で持続可能な生活を送ることに関心のある若い世代などから注目を集めています。

 

 

アグリフッドの事例

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アメリカ・テキサス州北部にある「ハーベスト・バイ・ヒルウッド」には、全米屈指の農業大学校であるテキサスA&M大学で修士号を取得したファーマー・ロス氏が運営する商業農場「ハーベストファーム」が施設内にあります。

ハーベストファームではさまざまな農産物が栽培され、ファーマーズマーケットや周辺のホテル、レストランで販売されています。CSA(Community Supported Agriculture)と呼ばれる住民の有料会員制プログラムにも利用されています。ノース・テキサス・フード・バンクとパートナーシップを結んでいるため、余剰作物はフードバンクに提供されています。

ハーベスト・バイ・ヒルウッドの住民は、その農場で働いたり、ロス氏から農業の指導を受けたり、住民専用の家庭菜園区画を予約したりできます。

関連記事:アメリカやヨーロッパを中心に広がる「CSA(地域支援型農業)」とは

アメリカ・ジョージア州の州都アトランタ市から車で40分のところにある「セレンべ」の敷地内には「Serenbe Farms」という農場があります。この農場は300品目以上の野菜や果物、ハーブや花を生産する25エーカー(約10ha)の有機農場で、生産された作物はファーマーズマーケットやCSAで販売されています。敷地内の3つのレストランでも食材として使用されれおり、住民は新鮮な食材を楽しむことができます。

セレンべは住民だけでなく、地域の人々にも開かれたコミュニティであり、イベントの開催や敷地内にある宿泊施設に泊まることもできます。

アメリカ・カリフォルニア州オレンジカウンティーにある「エセンシア」と「センデロ」では、コミュニティファームを取り囲むように住宅エリアが配置されています。

たとえばエセンシアでは農場プログラムに約65世帯が参加しています。利用料が半年ごとに100ドル(日本円にして約1万4,000円)かかり、1世帯あたり月に合計4時間のボランティア活動を行う必要がありますが、その代わりに農場が開いている時間帯であればいつでも花やハーブを摘むことができ、毎週かごいっぱいの農作物を収穫することができます。

アグリフッドに似た日本の取り組み

日本にはアグリフッドと呼ばれるような、共同農業を中心とした住宅コミュニティは存在していませんが、畑付きの共同住宅や農地付き空き家といった取り組みはあります。

東京・日野市にある「AURA 243 多摩平の森」は貸し農園付きの賃貸住宅です。共同農園ではなく、住民が賃料を払って区画された畑を借りるスタイルではありますが、アグリフッドに近いコミュニティといえます。

農地付き空き家の取り組みは、若い世代で地方への移住の動きが見られることや、全国的に自治体を中心とした「空き家・空き地バンク」の取り組みが広がりつつある中で、移住希望者の「移住をきっかけに農業をしたい」という声をきっかけに始まった、空き家に隣接する遊休農地をセットで提供するという取り組みです。

取り組み事例を見ると、島根県雲南市では平成24(2012)年11月から全国の市町村に先駆けて取り組みを開始し、平成29(2017)年10月末時点では19件成約しています。兵庫県宍粟市(しそうし)では、平成28(2016)年から取り組みが始まり、平成29年8月末時点で8件成約(単身世帯が4世帯、家族世帯が4世帯)。兵庫県佐用町は平成29年1月から取り組みを開始し、2件成約しています。

 

参考文献

  1. What Is An Agrihood? – Blogs, News, and Events | Harvest by Hillwood Communities.
  2. 全米が注目!最新農業都市モデル「アグリフッド」 | EARTH JOURNAL
  3. ミレニアル世代に大人気! 不動産の最新トレンド「アグリフッド」に行ってみた | Business Insider Japan
  4. 次代の農業都市モデル「アグリフッド」とは? 言葉の意味や日本と海外の事例を解説 | ELEMINIST(エレミニスト)
  5. 「農場から食卓へ」ファーム・トゥ・テーブル・マーケティング | 宣伝会議デジタル版
  6. What Is the Meaning of Farm-to-Table?
  7. Harvest Farms, A Beloved Amenity at our Agrihood Community in DFW
  8. Serenbe
  9. Esencia – Agrihood Living
  10. Tour Orange County’s Rancho Mission Viejo Agrihood in California
  11. AURA 243 多摩平の森
  12. 『農地付き空き家』の手引き

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