昨今の日韓関係は農産物の輸出入にどのような影響を与えるか

「徴用工問題」「慰安婦問題」「GSOMIA(日韓の軍事情報包括保護協定)破棄問題」など、日韓関係の悪化を感じさせる話題が目に飛び込んできます。

GSOMIA破棄に関しては、2019年11月22日に韓国が「GSOMIAを破棄しない」と発表しました。しかし韓国側が「日本側が行っている輸出管理問題に対し、日本側に抗議し、日本側から謝罪があった」と主張すると、菅官房長官が会見で「謝罪した事実はない」と反論。それに対し、韓国側が日本側の「謝罪否定」コメントを否定するという事態が起きています。

本記事では、衝突が続く日韓関係が農産物の輸出入に与える影響について紹介していきます。

 

 

日韓経済関係について

昨今の日韓関係は農産物の輸出入にどのような影響を与えるか|画像1

 

『安倍誠編『日韓経済関係の過去と現在』調査研究報告書 アジア経済研究所 2019 年』によると、日本の対韓直接投資のメインは

  • 1980年代 電機・電子分野が中心
  • 2000年代 液晶パネル関連の投資が急増
  • 2010年代 消費市場に着目し、サービスや外食産業の進出が中心

であり、農作物などの第一次産業品はあまり目立っていません。

第二次世界大戦後の韓国内には輸出可能な資源や農作物などが限られていたと言われています。そのため、かつては「日本から素材を輸入し、国内で組み立て、第三国に輸出する」流れが日韓経済関係のメインでした。現在は韓国が自ら原材料を輸出するようになり、第三国で日韓が激しい競合を繰り広げているのが現状です。

とはいえ近年の韓国は農林水産分野の育成のため、さまざまな政策を実施しています。2008年以降、食品産業振興政策を本格的に推進したことで、韓国の農林水産食品の輸出は成長傾向を維持しています。

 

 

韓国からの輸入品とは

昨今の日韓関係は農産物の輸出入にどのような影響を与えるか|画像2

 

ジェトロ世界貿易投資報告(2018年版)によると、韓国の世界への輸出額は

国名/貿易額/(シェア)

  • 中国 1,421億2,000万ドル(24.8%)
  • アメリカ 686億1,000万ドル(12.0%)
  • ベトナム 477億5,400万ドル(8.3%)
  • 香港 391億1,200万ドル(6.8%)
  • 日本 268億1,600万ドル(4.7%)
  • オーストラリア 198億6,200万ドル(3.5%)

となっており、日本は韓国にとって5番目に大きな輸出市場となっています

韓国からの主な輸入品は

  • 石油製品 11.4%
  • 鉄鋼板 7.9%
  • 半導体 4.4%
  • 自動車部品 3.5%
  • 精密化学原料 3.1%

ですが、農産物の輸出も増加傾向にあります。

特にパプリカとトマト(生鮮)は対日輸出が増加しています。パプリカの日本への輸出額は、2015年の8,501万ドルが2016年には9,333万ドル、9.8%増加しています。トマトはハンバーガーやサラダに用いる業務用の輸出量が増加しました。

またICT技術を活用したスマートファームが普及し、日本や東南アジアなどは、それらで育てた施設園芸作物の主な市場となっています。

輸入できなくて困る農作物はあるのか

日韓関係の悪化で韓国からの輸入が制限された場合、主に影響を受けるのは農作物ではなく製造業関連です。そのため、現状「韓国から輸入できなくなって困る農作物」は特段挙がりません。

またJFTCきっずサイトに掲載されている「日本の輸入先トップ10の移り変わり」によると、輸入先としての韓国の位置は以下のようになります。

<単位:100億円>

1990年

輸入総額[3,386]

2000年

輸入総額[4,094]

2010年

輸入総額[6,076]

2018年

輸入総額[8,270]

1 アメリカ

759(22.4%)

アメリカ

778(19.0%)

中国

1,341(22.1%)

中国

1,919(23.2%)

2 インドネシア

182(5.4%)

中国

594(14.5%)

アメリカ

591(9.7%)

アメリカ

901(10.9%)

3 オーストラリア

179(5.3%)

韓国

220(5.4%)

オーストラリア

395(6.5%)

オーストラリア

505(6.1%)

4 中国

173(5.1%)

台湾

193(4.7%)

サウジアラビア

315(5.2%)

サウジアラビア

373(4.5%)

5 韓国

169(5.0%)

インドネシア

177(4.3%)

アラブ首長国連邦

257(4.2%)

韓国

355(4.6%)

※2010年の韓国は6位。

アメリカや中国から食料品・農水産物の輸入規制がかかると、強い危機感を感じることになるかもしれません。

 

 

韓国への輸出品とは

昨今の日韓関係は農産物の輸出入にどのような影響を与えるか|画像3

 

一方、日本にとって韓国は主な輸出国のひとつです。

<単位:100億円>

1990年

輸出総額[4,146]

2000年

輸出総額[5,165]

2010年

輸出総額[6,741]

2018年

輸出総額[8,148]

1 アメリカ

1,356(31.5%)

アメリカ

1,536(29.7%)

中国

1,309(19.4%)

中国

1,590(19.5%)

2 ドイツ

257(6.2%)

台湾

387(7.5%)

アメリカ

1,039(15.4%)

アメリカ

1,547(19.0%)

3 韓国

252(6.0%)

韓国

331(6.4%)

韓国

546(8.1%)

韓国

579(7.1%)

4 台湾

223(5.4%)

中国

327(6.3%)

台湾

460(6.8%)

台湾

468(5.7%)

5 香港

189(4.6%)

香港

293(5.7%)

香港

370(5.5%)

香港

383(4.7%)

主な輸出物は

  • 半導体製造装置 10.4%
  • 半導体 8.5%
  • プラスチック製品 4.3%
  • 鉄鋼版 4.2%
  • フラットパネルディスプレー製造装置 3.7%

ですが、日本が韓国向け半導体材料の輸出規制を強化したことで、韓国側が日本製品の不買運動を呼びかけ、輸出額が落ち込んでいます。

食料品も不買運動の影響を受け、2019年9月18日発表の8月の貿易統計によると、前年同月比40.6%減となっています。日本製のビールや調味料などが不買運動の対象となりました。

輸出できなくて困る農作物はあるのか

農作物の輸出に関しては、日韓関係の悪化というより、東日本大震災の影響が尾を引いています

2011年の東京電力福島第1原発事故を受け、中国や韓国などが東北の農林水産物・食品の輸入規制を行っています。全ての農林水産物の輸出が規制されているわけではありませんが、震災から8年経った今も、規制は続いています。

韓国の世論調査によると「農林水産物から放射性物質が検出されない水準になったとしても購入しない」との声が過半数に達しています。日韓関係の悪化による不買運動ではありませんが、水産物の輸入規制に対して日本が逆転敗訴したことを考えると、放射能の問題が世界各国から認められる形で解決しない限り、緩和は難しいかもしれません。

 

参考文献

  1. 韓国「日本側から謝罪」、日本「謝罪した事実はない」 GSOMIA失効回避も「衝突」続く
  2. 日韓経済の過去と現在 安倍 誠
  3. 韓国の農林水産食品分野の輸出促進の取り組みに関する調査 2018年3月 日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所 海外調査部中国北アジア課
  4. 日本で身近に売られている韓国製品 輸入規制されて困るものは何? KOREA WORLD TIMES
  5. 日本の主な輸出入相手国:韓国
  6. 日本の主な貿易相手|JFTCキッズ
  7. 韓国への食料品輸出額、40%減 不買運動影響か 8月
  8. 韓国、今も日本の農水産物に「規制強化」論 大震災からもうすぐ7年なのに
  9. 韓国の水産物の輸入規制、日本が逆転敗訴 WTO最終審
  10. 農産物輸入規制の緩和・撤廃に向けた取り組み強化へ 農水省に「司令塔」設置
 

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