施設園芸の現状。日本は減少傾向でも、世界では市場規模が拡大中。国内外スマートハウス事情。

施設園芸の現状。日本は減少傾向でも、世界では市場規模が拡大中。国内外スマートハウス事情。

農林水産省が公開する「園芸用施設の設置等の状況」によると、

令和2年の園芸用施設等の状況は、園芸用ガラス室及びハウスの設置実面積は41千ヘクタールであり、同施設における栽培延べ面積は、野菜40千ヘクタール、花き8千ヘクタール、果樹6千ヘクタールであった。

引用元:園芸用施設の設置等の状況(R2):農林水産省

とあります。

平成30年の状況からは3.7%減少となり、そのうちガラス室は17.2%の増加、ハウスは4.5%の減少となっています。また農業用廃プラスチックの排出量は101千トンで、平成 30 年に比べて4.9%減少しています。

令和4年4月に公開された農林水産省『施設園芸をめぐる情勢』によると、日本の施設園芸は高齢化等により減少傾向にあり、施設設置面積も減少しています(規模別に見ると、1ヘクタール未満では減少傾向m1ヘクタール以上では増加傾向にあります)。

農林水産省は施設の大規模な集約と、ICTを活用した高度な環境制御技術などを行い、次世代施設園芸の取組拡大を進めています。化石燃料ではなく、地域資源を活用したエネルギーの活用も重要視しています。

そこで本記事では、世界の施設園芸の現状と将来の見通し、施設園芸に関する最新の技術などを紹介していきます。

 

 

世界の施設園芸市場

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世界最大の市場調査会社「Research and Markets」によると、世界の施設園芸市場は2021年に289億ドル、日本円にしておよそ4兆円の規模に達しました。今後、2027年には537億ドル(約8兆円)に達すると予想されています。

施設園芸の成長を促す主な要因には、従来の農業技術に比べて高収量の生産が可能なことが挙げられます。食料需要の増加や人口増加による耕地面積の減少、急激な環境変化も施設園芸市場の成長に拍車をかけています。加えて急速な都市化や温室自動化技術の採用、光熱費などのコスト削減、業界における研究開発活動や合併・買収の増加なども挙げられます。

「Research and Markets」の別の報告には、スマートハウスについても取り上げられています。スマートハウスは、人が関与することなく、ハウス内の湿度や土壌水分、照度、温度などの気候条件をセンサーなどを使ってリアルタイムで制御し、自己制御できる環境を提供するハウスのこと。外部環境の変化に応じて自動運転が行われ、植物の生育に最適な状態を作り出します。

世界のスマートハウス市場は、先で紹介したような食料需要の増加や農業分野でのAI、IoT導入の増加、スマート農業を奨励する政府の取り組みの高まりなどによって推進されています。

スマートハウスで注目を集める事例として、アグリテック推進国のイスラエルのスタートアップ企業「MetoMotion」が開発した「GRoW」ロボットを取り上げます。「GRoW」は温室の使用に特化した独自の設計となっています。柔軟な動作制御がなされており、自律走行しながら3D知覚を用いてトマトの実を検知し、色から熟度を判別して収穫を行います。ロボットアームで実を枝から切り離した後は、下部のコンベアに乗せて内蔵コンテナに保管します。このロボットの活用は、ハウス内での収穫作業の省力化にもつながります。

 

 

日本のスマートハウス事例

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2022年10月4日の日本農業新聞では、地熱とIT技術を活用したIoT次世代施設園芸熱水ハウスで栽培された「八幡平の地熱えだまめ」が紹介されています。岩手県・八幡平市内にある松川地熱発電所で発電の過程で生まれる温水を活用し、ハウスを温めます。地熱とIT技術で温度管理を行うことで、ハウス内の温度を30度近くに保つことができ、年間を通じて枝豆の収穫が可能となります。

また株式会社クボタは、2021年7月にハウス栽培のスマート化の実証実験を開始し、同年10月には施設園芸におけるスマート農業の推進のため、大阪府岸和田市と「施設園芸における環境制御技術の活用に関する連携協定」を締結しています。いずれも労働負担の軽減と栽培の最適化が可能な次世代施設園芸モデルを確立することが目的です。

 

参考文献

  1. 施設園芸をめぐる情勢
  2. 園芸用施設の設置等の状況(令和2年)概要
  3. 次世代施設園芸について
  4. Commercial Greenhouse Market: Global Industry Trends, Share, Size, Growth, Opportunity and Forecast 2022-2027
  5. スマート化が進む施設園芸、イスラエルでトマト収穫ロボットが登場 | AGRI JOURNAL
  6. GRoW Tomato Harvesting Robot
  7. MOVIMAS、岩手県・八幡平市が推進する八幡平スマートファームのIoT次世代施設園芸熱水ハウスで脱炭素CO2フリーとなる「八幡平の地熱えだまめ」を初出荷
  8. 地熱×ITで新たな農業 八幡平市で「地熱えだまめ」お披露目 CO2削減にも | TBS NEWS DIG
  9. ハウス栽培のスマート化実証実験を開始 | ニュースリリース | 株式会社クボタ
  10. 大阪府岸和田市と連携協定を締結 | ニュースリリース | 株式会社クボタ

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