野生のいのししにも感染!猛威を振るう豚コレラとは?

野生のいのししにも感染!猛威を振るう豚コレラとは?

2018年9月に岐阜県で26年ぶりに発生が確認された豚コレラ。豚コレラは、豚コレラウイルスによって発生する豚、いのししの伝染病です。強い伝染力と高い致死率が特徴で、ウイルスは感染した豚、いのししの唾液、涙、糞尿として排泄されます。感染豚との接触等で感染が拡大します。

 

 

豚コレラの発生状況など

野生のいのししにも感染!猛威を振るう豚コレラとは?|画像1

 

治療法がなく、家畜伝染病予防法の中で家畜伝染病として指定されている豚コレラ。2019年4月時点での発生状況をお伝えします。

 

感染頭数

農林水産省のHPで報告されている情報をもとに、感染頭数について調べましたが、患畜が確認され次第、防疫措置がとられるため明確な感染頭数は確認することができませんでした。なお2018年9月に確認された豚コレラを1例目とし、2019年4月現在、20例目まで報告されています(ただし、国内15例目以降は「疑似患畜」※として報告されています)。

※家畜伝染病予防法で定義されている、「患畜」と「疑似患畜」の違いは、

  • 患畜:家畜伝染病にかかっている家畜のこと(腐蛆病は除く)
  • 疑似患畜:患畜である疑いがある家畜、患畜となるおそれがある家畜(病原体に触れた、または触れた疑いがあり、患畜となるおそれがあるものを指す)

明確な感染頭数を確認することはできませんでしたが、感染経路として挙げられている野生いのししは検査状況から感染頭数が確認されました。2018年9月14日から2019年4月16日までの間で検査された野生いのししのうち、豚コレラ陽性と診断された数は以下の通りです。

  • 岐阜県:984頭を検査。うち陽性308頭、陰性676頭。
  • 愛知県:221頭を検査。うち陽性13頭、陰性208頭。
  • 岐阜県、愛知県以外では272頭を検査。全て陰性。

 

感染地域

農林水産省のHPを確認すると、現時点では岐阜県と愛知県のみ報告されています。

 

農林水産省も注意喚起

農林水産省では豚コレラの発生を予防するためのポイントが紹介されています。現時点では岐阜県と愛知県でのみ報告されている豚コレラですが、近隣国では豚コレラとアフリカ豚コレラ※の発生が継続しています。

※アフリカ豚コレラは、豚コレラとは別の伝染病。アフリカ豚コレラウイルスが豚やいのししに感染することで発生する。発熱や全身の出血性病変が特徴。豚コレラ同様、致死率が高い。ダニの媒介や感染した家畜との直接的な接触で感染が拡大する。

 

野生のいのししにも感染

農林水産省の拡大豚コレラ疫学調査チームによると、感染経路として野生いのししを挙げています。豚コレラは豚、「いのしし」の伝染病です。先でも紹介した通り、岐阜県で検査を行った野生いのしし984頭のうち、308頭が陽性です。豚コレラが発生した農場付近で、ウイルスに感染したいのししが見つかった農場もあります。また野生いのししと飼養されている豚が直接接触しなくても、ネズミなどの小動物を経由して、ウイルスが運ばれた場合も想定されています。 

 

 

豚コレラの発生を予防するためのポイント

野生のいのししにも感染!猛威を振るう豚コレラとは?|画像2

 

発生を予防するためには、第一にウイルスを持ち込まないことが重要です。

  • 養豚場には関係者以外立ち入らせない
  • 衛生管理区域等への出入り時、洗浄・消毒を徹底する
  • 衛生管理区域等に出入りする際の衣服や靴の設置・使用を徹底する
  • 人や物の出入りを記録する
  • 飼料に肉を含む、または含む可能性があるときは加熱処理(摂氏70度・30分間以上または摂氏80度・3分間以上)を徹底する

それから、野生動物による感染拡大を防ぐ必要があります。

  • 飼料保管場所等にねずみ等野生動物の排せつ物等が混入しないように管理を徹底する
  • 家畜が死亡した場合、処理までの間、野生動物に荒らされないよう保管する

 

 

野生のいのししへのワクチン投与成功

野生のいのししにも感染!猛威を振るう豚コレラとは?|画像3

 

野生いのししへも感染が見られる豚コレラですが、愛知県では野生いのししによる豚コレラ拡大を防ぐため、経口ワクチンを用意。2019年3月、愛知県内で経口ワクチン2400個が散布されましたが、そのうちの約6割が投与に成功したとみられています。トウモロコシ粉の皮で包んだワクチンを山中に埋めたところ、いのししの歯形がついた容器の残骸や穴を掘り起こされてなくなっていたものが確認されています。

今後は、ワクチンを埋めた現場に設置したビデオカメラの映像解析や、いのししを捕獲して抗体の有無を検査する予定です。

 

 

豚コレラは人間に感染する?

野生のいのししにも感染!猛威を振るう豚コレラとは?|画像4

 

豚コレラが人間に感染することはありません。豚コレラに感染した肉が出回ることはまずありませんが、仮に感染した豚の肉を食べても、人体に影響はありません。

人間に感染しない理由は、細胞構造の違いにあります。豚コレラウイルスは豚やいのししの体内に入り、扁桃腺などの細胞膜にくっつきます。細胞内でウイルスが増殖し、全身に広がります。しかし人間と豚では細胞構造が違います。そのため、豚コレラウイルスは人の細胞膜にくっつくことができないのです。人の体内にウイルスが侵入したとしても、細胞にくっつけず、細胞内で増殖することもできず、そのまま消化されていきます。

 

 

まとめ

野生のいのししにも感染!猛威を振るう豚コレラとは?|画像5

 

豚コレラは強い伝染力と致死率の高さが特徴で、家畜業界において脅威となる存在です。治療法はなく、感染が確認されると防疫措置として殺処分せざるを得ません。発生予防を徹底しましょう。

 

参考文献

  1. 豚コレラについて:農林水産省
  2. 患畜と疑似患畜 鹿児島大学 岡本嘉六
  3. アフリカ豚コレラについて:農林水産省
  4. 豚コレラ 感染経路 「イノシシ関与」有力 農水省検証 日本農業新聞
  5. 豚コレラワクチン、愛知で6割に投与成功 安全をPR 朝日新聞デジタル

コラムカテゴリの最新記事