鳥獣害シカ対策。シカに効果的な対策方法とは

鳥獣害シカ対策。シカに効果的な対策方法とは

本記事では害獣シカに着目。シカから農作物を守るために知っておきたい効果的な対策方法についてご紹介していきます。

 

 

シカ被害の原因とは

鳥獣害シカ対策。シカに効果的な対策方法とは|画像1

 

対策方法についてご紹介する前に、まずはシカと、シカ被害の根本的な原因について知っていきましょう。

はじめにシカの繁殖について。農林水産省が公開している令和2年度の「野生鳥獣による農作物被害状況」によると、シカによる農業被害金額は約56億円で、前年度に比べて約3億円増加しています。しかしシカは基本的に1度の出産で1頭の子供を産みます。代表的な害獣の一つであるイノシシのように多産ではありません※。

※イノシシは平均4~5頭を出産し、そのうち約半数が成獣になります。

1度の出産で1頭の子供を産む傾向は栄養状態に左右されません。しかし出産する間隔や初産年齢などは栄養状態の影響を受けます。

栄養状態が良い

栄養状態が悪い

出産する間隔

毎年子供を出産する 出産する間隔があく

初産年齢

早くなる(多くは2歳で初産年齢を迎える) 遅くなる(4歳以降)

高齢のシカの繁殖成功率

高くなる 低い

栄養状態は繁殖だけでなく生死にも関わります。シカの死亡率は0〜1歳が最も高いのですが、この大きな原因は冬場のエサ不足です。

ここで、上記内容とシカ被害の根本的な原因に人里が関わってきます。

近年、林道や高速道路などの法面には、崩落や侵食防止のために「寒地型牧草」と呼ばれる青草が植えられています。これは寒さに強く、冬場でも育ちます。この青草はシカにとって栄養価の高いエサとなるため、シカが冬場にこの青草が生えている場所を見つけた場合、確実にエサ場となります。そしてシカがこの法面に沿ってエサを食べ進めていくと、人里に行き着きます。

シカのエサとなるのは人里で栽培されている「農作物」に限りません。農地周辺に生える植物も、シカにとっては栄養豊富なエサとなります。そのため、はじめのうちは農地周辺の植物がシカに食べられるぐらいで、主だった被害はないかもしれません。しかしそのうち農作物を口にするようになると、その味を覚えたシカが被害を拡大するのは時間の問題です。

 

 

まずはシカのエサとなるものを減らす

鳥獣害シカ対策。シカに効果的な対策方法とは|画像2

 

先で紹介した法面の青草については、農業従事者が管理しているわけではないはずですから、エサを減らすための対策は困難です。しかしシカに人里がエサの宝庫だと思わせないための行動はできます。

基本的に「放置厳禁」が重要です。

まず葉菜類などの農作物を収穫する際に生じる外葉などは、その場に捨てず、取り除きます。農地周辺に落下したカキやクリなどの果実も、速やかに取り除きましょう。もしその果樹が管理されていないものや放棄されているものだった場合には、果実だけでなく果樹の葉もシカのエサになってしまうので、伐採などして取り除くことをおすすめします。

エサとなるのは廃棄した農作物、果樹だけではありません。刈り取った水稲の株から生える「ひこばえ」、周辺に生える雑草もエサになります。これらも放置することなく取り除きましょう。例えば、稲刈り後に耕起し、11月頃にもう一度耕起することで発生を抑制することができます。

シカが人間の姿を見て逃げるなら

「追い払い」の徹底が効果的です。

シカに農地や人里は安全な場所ではない、人間は怖いと思わせることが重要です。

被害が深刻な場所だと、シカは平然と人の目の前に現れます。私の地元も、シカなどの野生動物による農作物の被害を度々耳にしますが、山間の道を車で走っていると時々シカに遭遇します。遭遇したシカは全く車に驚きませんし、それどころか悠々と前を横切っていきます。このようにシカが人間は怖くないと学習してしまった状態になると、対策は難しくなります。

もしシカが人の姿を見て逃げるようなら、その時点で農作物に被害が出ていようといまいと積極的に追い払いましょう。

 

 

柵を設置して農作物を守る際の注意点

鳥獣害シカ対策。シカに効果的な対策方法とは|画像3

 

シカが軽やかに跳躍できるイメージを持っている人は少なくないはずです。確かにシカは跳躍能力がありますが、柵を設置する場合には、シカが柵の隙間から農地に潜り込んだり、柵を乗り越えたりする行動に注意を払わなければなりません。

柵の隙間をなくすこと

柵に囲まれた畑にやってきたシカは、どのようにして畑に侵入するのでしょうか。

  1. 柵周囲の安全を確認する
  2. 目で見る、鼻や口先で触れるなどして柵の状態を確認
  3. 頭部で柵を押し、隙間を探す
  4. 隙間を見つけたら、頭を入れて潜り込む

シカの侵入を許してしまう隙間の高さは、子鹿であれば地面から高さ20cm、成獣の雌は25cm、立派な角を持つ雄ですら30cmあれば潜り込めます。またシカは跳躍よりも潜り込むことを優先するため、地上からの高さが1mのネット柵で囲った場合、ネットを下から持ち上げて侵入する傾向にあります。

そのため、まずは柵の下部を固定し、隙間をなくすことが重要です。

柵の下部にビニールハウスのパイプや竹など棒状のものを取り付け、他の支柱と固定し、持ち上げられないようにします。パイプや竹などは新品である必要はありません。中古でOKです。

ネット柵の場合は上部にも工夫が必要です。潜り込めないと知ったシカが後肢で立ち上がり前肢をネットに引っ掛け、ネットが下がってきた部分から乗り越えようとすることがあるからです。そのため、ネット上部もパイプなどで固定し、前肢を引っ掛けられてもネットが下がらないようにします。

ジャンプよりも潜り込みを優先するシカですが、潜り込めない状況になった場合、ジャンプを試みるシカも出てくるので、柵(ネット柵も含む)の地上からの高さは1.5m以上にしましょう。

ネット柵の場合は定期的な点検も必須

ネット柵は設置が容易ですが、こまめな点検が必要です。シカが乗り越えてしまいそうな箇所はないか、定期的に確認しましょう。

ネットの網目の大きさにも注意が必要です。目が大きすぎると、雄鹿の角が絡まって柵が壊される可能性があります。15cm以上の網目では、シカが頭を入れて穴を広げられるので、侵入される可能性が高まります。目の細かいネットであっても注意が必要です。シカが前肢を使ってネットに寄りかかると、蹄でネットに穴が空く場合があります。シカがその穴を見つけて、その穴を広げて侵入を試みる可能性が生じるので、穴を見つけたらすぐに取り替えるなどして修復しましょう。

 

参考文献

  1. 農作物被害状況:農林水産省
  2. 【改訂版】野生鳥獣被害防止マニュアルイノシシ・シカ・サル実践編
  3. 江口祐輔『動物の行動から考える 決定版 農作物を守る鳥獣害対策』(2018年、誠文堂新光社)

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