天敵昆虫タバコカスミカメについて。土着天敵、生物農薬として有益なタバコカスミカメの利用法

天敵昆虫タバコカスミカメについて。土着天敵、生物農薬として有益なタバコカスミカメの利用法

タバコカスミカメは体長約3mmのカメムシで、害虫として知られるコナジラミ類の防除に有効な天敵昆虫として利用されています。

そこで本記事では、土着天敵、生物農薬として有益なタバコカスミカメについてご紹介していきます。

 

 

タバコカスミカメについて

天敵昆虫タバコカスミカメについて。土着天敵、生物農薬として有益なタバコカスミカメの利用法|画像1

 

タバコカスミカメはコナジラミ類(タバココナジラミやオンシツコナジラミなど)の卵や幼虫、アザミウマ類を捕食することが知られています※。

天敵昆虫の利用は、化学合成殺虫剤の使用の削減につながります。従来の化学農薬を使用した場合に比べ、殺虫剤の散布回数を減らすことができますから、より環境に優しい農業が実現します。

実際に施設トマト栽培でタバコカスミカメを導入した結果、従来の農薬中心の防除と比較して、栽培後期のタバココナジラミの爆発的増加を抑制する効果が確認されています。さらに、殺虫剤の散布回数は62.5%、使用成分数は75%削減できるなど、化学農薬の使用量を大幅に減らすことが可能となります。

参照元:生物農薬タバコカスミカメによる施設栽培大玉トマトのタバココナジラミ防除

※ただし、コナジラミ類の「成虫」はほとんど捕食しないうえ、チョウ目の害虫やハモグリバエ類、トマトサビダニへの防除効果はあまり期待できません。

 

 

タバコカスミカメの利用に欠かせないバンカー植物

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施設園芸における生物的防除に有効なタバコカスミカメを安定的に維持し、防除効果を高めるために「バンカー植物」と呼ばれる特定の植物が利用されます。バンカー植物とは、害虫の天敵を引き寄せる植物のことです。

タバコカスミカメのバンカー植物には、バーベナやクレオメ(和名はセイヨウフウチョウソウ)、ゴマやカボチャがあげられます。これらのバンカー植物を施設内に設置することで、害虫の密度が低い時期でも世代交代が可能となります。

たとえば高知県農業技術センターの研究報告によると、施設内にゴマを定植し、タバコカスミカメを放飼したところ、ゴマのみを餌として与えても、生存率が比較的高く、増殖可能であることが報告されています。

参照元:タバコカスミカメの温存・増殖技術

タバコカスミカメは、バンカー植物上に温存された後、生息場所とエサを求めて作物へ移動するため、害虫発生の初期段階から天敵を維持することが重要です。そのため、タバコカスミカメは施設栽培の初期段階から放飼し、バンカー植物と一緒に導入することが推奨されます。そうすることで、害虫が発生しやすい時期になるとタバコカスミカメが自然と施設内に分散し、コナジラミの発生を効果的に抑えることができます。また暖かい施設内であれば一年を通じてタバコカスミカメを利用できます。

 

 

タバコカスミカメの効果を高めるために

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害虫による影響を防ぐためには、天敵昆虫であるタバコカスミカメを利用するだけでなく、以下の方法も組み合わせたいところです。

  • 施設の出入口や天窓、側窓に防虫ネット(目合い0.4mm以下)を張り、害虫の侵入を防ぐ
  • 健全な苗を使用する
  • 病気に罹った株はすぐに抜き取り、適切に処分する
  • 残渣は適切に処分する
  • 施設内や施設周辺の除草を行う

利用する際の注意点について

タバコカスミカメを利用する際には、いくつかの重要な注意点があります。

まず、タバコカスミカメはカメムシの一種であるため、使用する農薬の種類によってはその効果に大きな影響を与えることがあります。特にネオニコチノイド系殺虫剤はタバコカスミカメに対して非常に強い影響を及ぼし、長期間その効果が続くため、放飼後に使用することは避けるべきです。また、放飼前に使用した農薬が影響を及ぼすことにも注意が必要です。

次に、タバコカスミカメが他の天敵昆虫や植物に与える影響についても考慮する必要があります。タバコカスミカメは雑食性であり、トマトの植物体や他の作物にも吸汁を行うことがあります。そのため、ミニトマトなどでは減収被害が発生する可能性があります。特に、タバコカスミカメの密度が非常に高まると、茎や新葉を食害することがあり、その結果、植物が弱ってしまうことがあります。従って、タバコカスミカメの密度を適切に管理し、過剰な繁殖を防ぐことが重要です。

またタバコカスミカメとともにバンカー植物を施設内に持ち込む際、施設内に不必要な害虫を持ち込まないよう、バンカー植物に害虫が発生していないかを確認してください。必要に応じて農薬で防除することも重要です。

そして、タバコカスミカメの利用を開始する前には、最寄りの農業指導機関や病害虫関係の専門家と相談し、使用する品種や栽培環境に応じた適切な対応を行なってください。特にトマトでは、品種によってタバコカスミカメの定着性や影響が異なるため、予めその特性を確認することが大切です。

とはいえ、タバコカスミカメの活用は、化学農薬を減らしながら高い防除効果を得ることができ、持続可能な農業の実現に貢献するものといえます。導入前の準備や適切な管理が必要になりますが、農薬の利用を抑えたい場合に検討してみてはいかがでしょうか。

 

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