キスジノミハムシは、アブラナ科植物を主な餌とする狭食性の害虫です。各種アブラナ科作物の害虫であるだけでなく、アブラナ科雑草にも寄生するため、圃場近辺にアブラナ科の雑草が生えていると、キスジノミハムシの発生源となります。
本記事では、そんなキスジノミハムシの生態と農作物への被害、対策方法についてご紹介していきます。
キスジノミハムシの生態
(愛知県公式サイトや奈良県公式サイトでは、キスジノミハムシの画像や被害の様子などが紹介されています。)
成虫は体長約2ミリで黒色、背中に黄色の筋が2本あるのが特徴です。主に暖地で年3〜5世代発生し、4月から10月まで活動します。成虫は冬季に土の中や雑草の根元、作物の茎葉の間隙などで越冬し、春になると再び活動を始めます。卵は作物の地際部や根元に産みつけられ、孵化後の幼虫は土中で成長します。
なお、ノミハムシの名の由来は、触れるとノミのように跳ねる性質からきています。
農作物への被害について
キスジノミハムシは成虫も幼虫も農作物に被害を及ぼします。
成虫はアブラナ科作物の葉を食害し、1mm前後の小さな円形の穴を多数残します。特に幼苗期に被害を受けやすいです。コナガやヨトウムシ類の被害と間違いやすいですが、食害痕である穴が小さいこと、葉にイモムシや糞が見られないこと、跳ねる成虫がいることから区別が可能です。
幼虫は根を食害し、根の表面に食痕を残します。そのため、ダイコンなどの根菜類では商品価値が大きく低下します。たとえばダイコンが幼虫の食害を受けた場合、下記の特徴的な症状が表れます。
- 初期生育(根の肥大)が阻害される
- 被害の進行で「なめり」症状が生じる(肥大初期の食痕が根の肥大につれてくぼみとなる)
- 肥大期後半の食害で「孔」症状が生じる(褐色の細かい食痕が不規則に生じる)
- 幼虫密度が高く、肥大期に激しく食害されると「さめはだ」症状が生じる(表面がざらざらになる)
また、被害が深刻な場合、傷口から軟腐病菌が侵入し、軟腐病が多発する要因となります。
発生しやすい条件
キスジノミハムシは、春播き(4~5月播種)や夏播き(6~7月播種)の栽培、6〜7月の雨が少ない年には発生が多く見られますが、秋播きでは発生が少ない傾向があります。暖冬では越冬虫の生存率が高く、翌年の発生源となるため注意が必要です。
また、アブラナ科作物の連作も発生量が増える要因の一つです。
加えて、土壌の種類も影響を与えるとされており、砂土や砂壌土では幼虫被害が少ないのに対し、壌土や埴壌土では発生しやすい傾向があります。
防除法について
最も重要なのは、播種時の殺虫剤による土壌処理です。幼虫による根の食害は発芽後15日頃から始まります。また成虫が活動する時期には、圃場外から成虫が飛来します。そこで幼虫と成虫の防除を合わせて行うためには定期的な殺虫剤の散布が欠かせません。
ただし、有機栽培では化学合成農薬が使用できないこともあり、物理的および耕種的な防除技術も重要といえます。たとえば防虫ネットの設置は成虫の侵入を防ぐのに役立ちます。ただし、目合いが0.6mm以下でないと完全に防ぐことは難しいため、補完的に近紫外線除去フィルムを使用する方法も有効です。
成虫の発生源を減少させることにつながるので、圃場周辺に生えているアブラナ科雑草の定期的な除去、収穫後の残渣処理も重要です。
また、栽培終了後には太陽熱土壌消毒を行うことで、土壌内に残った幼虫や蛹の防除が推奨されます。
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