鳥獣害対策ハクビシン編。ハクビシンに効果的な対策方法とは

鳥獣害対策ハクビシン編。ハクビシンに効果的な対策方法とは

本記事では害獣ハクビシンに着目。農林水産省の農作物被害の統計より、令和2年度の獣類による農作物被害面積を大きい順に並べてみると見てみると、

  1. シカ 29.7
  2. イノシシ 5.2
  3. クマ 1.0
  4. サル 0.9
  5. ハクビシン 0.5
  6. アライグマ 0.4
  7. その他獣類 0.3
  8. タヌキ、ネズミ、ウサギ 0.2
  9. カモシカ、ヌートリア 0.1
    (単位:千ha)

とハクビシンは上位5位に入ります。

上位6位までの被害面積の推移を見てみると……

参考元:全国の野生鳥獣による農作物被害状況(令和2年度)、参考3 野生鳥獣による農作物被害状況の推移

シカ、イノシシによる被害面積が大きいため、「上位6位」「シカ、イノシシを除いたもの」「ハクビシンのみ」に分けましたが、減少傾向にあるシカやイノシシなどに比べ、ハクビシンによる農作物被害は増加傾向にあります。

本記事では、ハクビシンから農作物を守るために知っておきたい、ハクビシンの特徴的な行動や効果的な対策方法についてご紹介していきます。

 

 

ハクビシンとは

鳥獣害対策ハクビシン編。ハクビシンに効果的な対策方法とは|画像1

 

見た目

食肉目ジャコウネコ科の動物で、「白鼻芯」の漢字が当てられている通り、額から鼻にかけて白い線が入っているのが特徴です。頭から尾まで約1mありますが、その4割以上を尾が占めるほど、尾が長いことも特徴です。夜行性のため、目視で確認しにくいですが、特徴的な尾によってアナグマやタヌキなどと区別するのは比較的容易です。

食性

ハクビシンは雑食性です。甘い物を好む傾向にあり、ブドウやナシ、柑橘類が食害に遭います。その他、トマトやトウモロコシなどの作物、養鶏場やペットとして飼われているニワトリも襲います。

運動能力

樹上で生活するハクビシンは、木登りが得意です。ハクビシンの足裏には特徴的なパッドがあり、それを使って塩ビ管のような爪のかからない素材でも器用に登ることができます。

また綱渡りも得意です。綱渡りでは長い尾を活かしてバランスをとります。直径1mm以下の細い針金の上も歩いてしまいます。

なお、ハクビシンは目の前に障害物がある場合、飛び越えるよりも乗り越えようとする性質があります。地上からの高さが30cm程度であれば飛び越えますが、40cm程度になると後肢で立ち、障害物の上部に前肢をかけてよじ登ります。障害物を更に高くすると、前肢を上部に引っ掛けるためにジャンプします。その際、ジャンプで届く高さは1mほどです。

ハクビシンが潜む場所

ハクビシンは通常、樹上で生活し、樹洞で繁殖を行います。しかし農地を襲う個体の場合は、

  • 農地周辺の神社仏閣
  • 廃屋
  • 倉庫など

を休息場所として利用し、無防備な農地や収穫残渣が放置されている場所、ゴミ捨て場などを安全にエサが手に入る場所だと学習します。このような環境に慣れた個体の中には、人けのある住宅の屋根裏をも生活の場として利用し始めます。

 

 

ハクビシン対策

鳥獣害対策ハクビシン編。ハクビシンに効果的な対策方法とは|画像2

 

ハクビシンによる被害を未然に防ぐためには、

  • 収穫残渣や生ゴミなどの管理を徹底する
  • 農地周辺の建物に棲まわせない

ことが重要です。人里は安全なエサ場ではない、と認識させる必要があります。

侵入経路を塞ぐ

ハクビシンを農地周辺の建物に棲まわせないために、侵入経路を塞ぎましょう。

ハクビシンは体長が約1mもありますが、体のしなやかさを活かして、体の大きさに見合わないような小さな隙間から侵入します。肩や腰が引っかかっても、体を捻りながら隙間に入ります。江口祐輔編著『動物の行動から考える 決定版 農作物を守る鳥獣害対策』(2018年、誠文堂新光社)によると、成獣個体は6×12cmの長方形、一辺8cmの正方形、直径9cmの円形の隙間への侵入を成功させています。

加えて、木登りが得意なハクビシンは足裏のパッドを滑り止めに、垂直な隙間にも登ってしまいます。

日本家屋は通風口がいたる所に設けられています。壁は一般的に通気性や断熱性を得るために中が空洞の構造をしています。壁の空間は大体10〜15cmで、これはハクビシンが登りやすい幅でもあります。すなわち、日本家屋は皮肉にもハクビシンが棲みやすい形状なのです。

通風口にはハクビシンが侵入できない大きさの金網やカバーを設置しましょう。金網は目合いの小さなもの(2cm目合)を使用し、隙間が生じないよう金網やカバーの四辺はすべて固定します。

通風口のみならず、建物を増築、改築した場所、出窓、戸袋の下、床下などに隙間ができていないかも徹底的に確認します。

金網やカバーを設置したら、それらが老朽化して破損していないか定期的に点検します。

農作物を守るなら

ハクビシンから農作物を守る場合、天井までネットで囲う、または電気柵を設置することになります。ハクビシンに最適な電気柵には「白落くん」が挙げられます。

白落くん – 埼玉県

「白落くん」は、ハクビシンの性質を活かした電気柵です。

通常の電気柵は、柵線を張る高さが、動物の体で通電しやすい部分(鼻や口唇)が触れる位置にあります。ハクビシンは体高が低いため、地面から5cm、10cmに張ることが推奨されていますが、凹凸のある地面でこの高さを保ちながら農地を囲うのは簡単ではありません。また雑草による漏電の危険性も高いです。この高さの柵を設置する場合は、雑草管理の徹底が必要になるので、やや手間がかかります。

一方「白落くん」はハクビシンを登らせ、登った先で感電させるものです。

上記リンクには設置マニュアルが掲載されていますので、ぜひ検討してみてください。

 

参考文献

  1. 農作物被害状況:農林水産省
  2. 野生鳥獣被害防止マニュアル-アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ-(中型獣類編)
  3. 江口祐輔編著『動物の行動から考える 決定版 農作物を守る鳥獣害対策』(2018年、誠文堂新光社)

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