【植物の病害あれこれ】菌核病について。菌核病の原因や菌核病になりやすい作物、対処法を紹介

【植物の病害あれこれ】菌核病について。菌核病の原因や菌核病になりやすい作物、対処法を紹介

本記事では植物の病害について紹介していきます。本記事で紹介するのは「菌核病」です。

 

 

菌核病とは

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「菌核病」を辞書で調べてみると、以下のように解説されます。

キュウリ、レタス、インゲンなどの病気。茎、葉、果実などに病菌が付き、はじめ湿潤状の病斑を示すが次第に拡大し、灰白色の菌糸塊となり、やがて黒色の菌核をつくる。

出典元:精選版 日本国語大辞典

子嚢(しのう)菌の一種であるスクレロチニア・スクレロチオルムSclerotinia sclerotiorumの寄生によっておこる作物の病気。この菌は32科160種以上の植物を侵し、ネズミの糞(ふん)に似た特徴のある菌核を形成するところから、この病気は菌核病とよばれる。

出典元:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)

上記にもありますが、主な原因菌であるスクレロチニア・スクレロチオルムは菌核病のみならず、軟腐病や茎腐病、落葉病などとしても知られている菌です。

菌核病の特性・特徴

春や秋の、雨が続くような低温多湿な時期に発生しやすく、黒色の菌核の形で越冬します。「菌核」はこれらの菌類が寄生した植物の組織内や土壌中にできる菌糸が密集した塊を指します。越冬した菌核は春と秋に発芽し、胞子を作って飛散し、まん延します。

この病気は、主に茎や株元付近の葉や葉の柄から発生しやすい病気ですが、キュウリやナスの場合には実にも発生します。病気ははじめ、淡褐色から黒色の病斑を生じ、それが拡大していきます。やがて病斑上に白い綿状のカビが生じ、のちにネズミの糞のような黒い菌核を形成します。

似たような病気には「灰色かび病」が挙げられます。この病気もまた、菌核病とほぼ同時期に発生する病気で、胞子の飛散によりまん延していきます。灰色かび病の発生部位は、菌核病が茎に多いのに対し、葉・花・果実に多いのですが、先でも紹介した通り、菌核病の発生部位は茎に限らないので、これらの特徴だけで判断するのは難しいと言われています。

これらの主な違いはその症状にあります。菌核病はネズミの糞のような菌核が生じますが、灰色かび病は、灰色のカビが密生し、質感が粉っぽいのが特徴です。

菌核病になりやすい作物

菌核病はさまざまな作物に感染しやすく、

  • 葉菜類(キャベツ・レタス・チンゲンサイなど)
  • 果菜類(キュウリ・ナス・トマトなど)
  • 稲類
  • 豆類(大豆・インゲンなど)
  • ネギ
  • ダイコン

などの作物がかかりやすいと言われています。

結球する野菜は、結球期以降に注意を払いましょう。菌核病の初期段階には下葉から病斑が広がります。この時点で作物は萎え始めますが、症状が進行すると、結球の内側に白いカビが発生したり、結球部分全体が白灰色になり腐敗したりします。そのまま放置すれば、特徴的な菌核が被害部の上に形成されます。

 

 

菌核病はどう対処する?

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化学的防除

まずは化学的防除、農薬を使用する対処法をご紹介します。

菌核病に登録のある「複数の」農薬を用意し、「定期的に」「ローテーションで」散布します。「定期的に」行う理由は、春から秋にかけての発生を抑えるため、「複数の」農薬を「ローテーションで」散布する理由は、耐性菌の発生を予防するためです。なお農薬によっては、灰色かび病との同時防除も可能になります。

菌核病が発生した場合には

菌核が形成されると、落下した菌核が土壌中で越冬してしまいますので、菌核が形成される前に、また菌核が形成されて落下してしまう前に、被害に遭った株をこまめに取り除くことが重要です。取り除く際、そのまま周辺に放置してしまうと、そこから胞子が飛び、まん延してしまいますから、ビニール袋で密封するなどして胞子が飛ばないよう工夫をし、処分は圃場の外で行いましょう。

農薬は感染拡大を抑えるのに役立ちます。病害が広がってしまった場合、菌核病が発生しやすい株元までしっかり農薬を散布してください。

感染のきっかけをなくす

胞子が飛散しないようにするために、感染のきっかけをなくすのも対策として効果的です。感染のきっかけには、泥はねや雨水により胞子が葉についてしまうことが挙げられます。マルチを張って泥はねを防いだり、水はけや風通しがよくなるように圃場の環境を整えたりして、対策を行いましょう。

また連作を避けたり、この病気が発生しやすい作物との連作を避けることも大事です。

 

参考文献

  1. 菌核病について|植物を腐敗・枯死させる菌核の生態と防除方法|住友化学園芸
  2. 菌核病(農作物病害虫データベース)|長野県農業関係試験場
  3. 嶋田竜太郎, 星秀男, 竹内純『コマツナに発生した菌核病 (新称) 』 関東東山病害虫研究会報, 2006
  4. About Scherotina:USDA ARS
  5. 菌核病とは?有効な農薬や防除方法、特に注意が必要な作物を解説|minorasu(ミノラス)-農業経営の課題を解決するメディア
  6. 家庭菜園誌 野菜だより 2021 9月[秋号]、2021年8月3日、株式会社ブティック社

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