ネギ属の作物の病害、黒腐菌核病(くろぐされきんかくびょう)とは?

ネギ属の作物の病害、黒腐菌核病(くろぐされきんかくびょう)とは?

ネギ属の作物の病害、黒腐菌核病とは?│画像1

近年、全国的にネギ属の作物に発生して問題になっている黒腐菌核病(くろぐされきんかくびょう)。
感染力が高く、一度発生した圃場には何年も菌核が生き残る深刻な病気です。これ以上被害を拡大させないために、ここでは黒腐菌核病の発生原因や特徴、防除方法などについてご紹介します。病気の特徴を知り、できる限り発生を防ぎましょう。

 

黒腐菌核病とは?

黒腐菌核病は「スクレロチウム セピボラム」という糸状菌(カビ)による病害です。
土壌中に生存する菌核から発芽した菌糸が、作物に入り込み病気を発症します。

感染力が非常に強く、圃場にネギ属の植物があると、増殖を繰り返すのも特徴のひとつです。菌核が土壌で長く生き残るため、一度発病した圃場は、対策なしではネギ属の作物を栽培するのは難しいと言われています。

 

主に被害を受ける農作物

ネギワケギアサツキタマネギニラニンニクラッキョウなどのネギ属植物に感染・発症。特に生育期間の長い白ネギの圃場では、条件が揃うと菌が爆発的に増えてしまいます。そのため、その後同じ圃場で白ネギが栽培できなくなり、白ネギ農家が転作を余儀なくされるケースも発生しているほどです。

 

黒腐菌核病の発生条件

黒腐菌核病は、次のような条件の下で発生しやすいと言われています。

・酸性が強く、排水性の悪い土壌
・以前にも黒腐菌核病が発病した圃場
・気温5~20℃の間で菌核が活動、10℃前後で激しくまん延

 

黒腐菌核病の病害の特徴

菌核は、春先や秋口の生育適温になり、ネギ属の作物の匂いを感知すると、菌核の殻を破って活動を開始します。その後、殻から出てきた菌糸が作物に入り込むと、その作物は病気に感染してしまうのです。

感染した作物は、葉先が白っぽくなり生育が抑制されます。発病初期に試しに作物を掘り取ってみると、表面に白っぽい菌糸や黒いゴマ粒のような菌核が発生しているのが確認できるでしょう。

その後、病気が進行すると、葉は黄色く枯れあがり枯死してしまいます。この頃の土中のタマネギの鱗茎部やネギの葉鞘部には、菌核がかさぶた状に付着し、酷いときは根元のあたりから軟化腐敗していることもあります。

 

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病気発生後 欠株が目立つネギの圃場
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黒腐 初期~中期の症状 表面に黒いカビが、かさぶた状に付着している
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黒腐 菌核に侵され根が死滅している状態 他の病気も併発している可能性あり スポッと簡単に抜ける

黒腐菌核病の対策

黒腐菌核病は、作物に感染してからは治療できないので、感染前に対策するのがポイントです。
ここでは作物の植え付け前にできる対策をご紹介します。

・土壌消毒
バスアミド・ガスタード微粒剤・キルパー等の薬剤を使用し、土壌消毒を行う。必ず被覆をし、菌を死滅させる。

・太陽熱消毒
菌核は熱に弱いため、夏場の気温が高い時期に太陽熱消毒を行うと菌を死滅させる効果が期待できる。ただし、手間や時間がかかりすぎるため、農家が実際にこの方法を採用しているケースは少ない。

・PHを改善する
菌核が好む酸性土壌にならないよう、作物の植え付け前に苦土石灰や石灰窒素を施用し、PH値を改善する。

・圃場の排水性を高める
排水路を整備したり、腐葉土やもみがらをすき込むなどして、土壌の排水性をよくし、圃場内に水を溜めない。

・ネギ属の植物の連作を避ける
緑肥やネギ属以外の作物との輪作をし、菌密度を減らす。

ネギの黒腐菌核病予防に効果のある薬剤と施用時の注意点

作物の植え付け後は薬剤を使用し、作物への感染を防ぎましょう。ここでは白ネギの防除例をご紹介します。

2019年現在、ネギの黒腐菌核病予防に登録があり、特に効果があがっている薬剤は以下の3点です。

パレード20フロアブル(散布):100~300L/10a 2000倍  
セイビアーフロアブル20(散布):100~300L/10a 1000倍
アフェットフロアブル(潅注):1L/㎡ 1000~2000倍

このうち、パレード20フロアブルとアフェットフロアブルは同系統の薬剤になるため、連続使用は避けたほうがよいでしょう。間にセイビアーフロアブルなど他の薬剤をはさむと効果的です。

また、セイビアーフロアブル20は土に吸着されやすいという特徴があります。そのため土寄せ前に施用したほうが薬剤がネギにしっかり届き、効果が高まります。
※詳しい使用方法は薬剤の説明書を参照し、回数や散布時期を守って施用しましょう

薬剤を効果的に利用するには、以下の点に注意が必要です。

・感染してからでは治療できないので、感染前に使用する。定植直後や、夜温が20℃を下回り菌核が動き出す前に施用すると予防の効果が期待できる。
・根まで薬液が届くよう、たっぷり施用する。
・ローテーションを組み、薬剤抵抗性をつけないようにする。

 

まとめ

ここまで黒腐菌核病の特徴や予防方法についてお伝えしてきました。
ネギ属植物の黒腐菌核病対策のポイントとしておさえてほしいのは次の2点です。

・作物の定植前に菌が発生しにくい土壌環境を整える
・定植後は作物が菌に感染する前に薬剤をローテーションし防除する

対策項目が多く大変ですが、いくつかの予防方法を組み合わせて、作物を確実に最後の収穫までつなげましょう。

 

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