日本未発生のトマト病害「TOBRF」とは。特徴や防除に関する情報について。

日本未発生のトマト病害「TOBRF」とは。特徴や防除に関する情報について。

2023年4月22日に公開された日本農業新聞の記事によると、トマトの病害「トマト・ブラウン・ルゴース・フルーツ・ウイルス(以下、ToBRFV)」が世界で拡大しています。2023年5月25日現在、日本での発生は確認されていませんが、日本の輸入検査では感染種子が確認されていることもあり、油断は禁物です。

 

 

ToBRFの特徴

日本未発生のトマト病害「TOBRF」とは。特徴や防除に関する情報について。|画像1

 

ToBRFは、Tobamovirus属に含まれる新種のウイルスで、2014年に中東で初めて発見されました。Tobamovirus属に含まれるウイルスには、日本に限らず多くの国でナス科作物の生産に被害をもたらしているタバコモザイクウイルスやトマトモザイクウイルスがあります。

ToBRFVに感染したトマトは、葉や果実の黄化、斑点、奇形などの症状が見られます。感染したトマトは生育不良により収量が30〜70%低下すること、品質が低下することも報告されています。

ToBRFVはトマトだけでなく、同じナス科のパプリカやピーマン、トウガラシへの感染も確認されています。

ToBRFVの厄介な点

現時点で、ToBRFVに有効な薬剤はないとされ、対策には感染した株や残さの除去、使用した資材の消毒などに限られます。上記対策をとる場合には、汚染した土を入れ替える等の管理に多大なコストがかかることが予想されます。

また令和2(2020)年2月17日に農林水産省横浜植物防疫所が公開した内容で、ToBRFVはTobamovirus属の他のウイルスに抵抗性のあるトマトの品種への感受性(影響の受け方の度合い)があることが報告されています。

このことから、現時点で最も力を入れるべき対策はToBRFVを国内に侵入させないことだと分かります。

ToBRFVはどのように広がるのか

ToBRFVは自然分散と人為分散で広がります。

自然分散では、ToBRFVは近接する植物間の接触伝染と、昆虫の花粉収集行動による昆虫伝搬が、Tobamovirus属の他のウイルスは植物残さを含む土壌伝染、施設栽培における循環水によって分散する水媒伝搬があげられます。イスラエルでは感染したトマトを栽培していた圃場に作付したトウガラシが感染したという報告があります。

人為分散には、栽培作業や農業資材、作業者の手や衣服を通じて分散する機械的伝搬のほか、感染種子や苗の移動があげられます。

一度感染が見受けられたら、感染株や植物残さを取り除き、土壌を消毒するなど、衛生管理の徹底が必要であることがうかがえます。

 

 

ToBRFVの防除に関する情報

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先で紹介した通り、現時点ではToBRFVに有効な薬剤はありません。ですが、以下の防除策はあらゆる植物病害の防除に重要なポイントです。ToBRFVが国内で発生する可能性を想定し、また他の植物病害からの作物を守るために、ぜひ心がけましょう。

  • 感染している株を見つけたら直ちに抜き取る
  • 植物残さを持ち出さない
  • 資材の消毒を行う
  • 発病株に触れた手指は石けんでよく洗う
  • 次作で再発するのを防ぐため、可能であればその圃場での栽培を中断する

なお、2022年3月16日に報告された研究成果によると、タキイ種苗株式会社がToBRFV抵抗性品種の開発を進めています。

まずはToBRFVが日本で発生しないことが重要ですが、対策への研究が進められていることは心強いですね。

 

参考文献

  1. 日本未発生のトマト病害、世界で猛威 黄化症状「ToBRFV」 有効防除法なし
  2. Tomato brown rugose fruit virus に関する 病害虫リスクアナリシス報告書
  3. ToBRFV Prevention
  4. プレスリリース (研究成果) 新興ウイルス病に強いトマトの作出方法を開発

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