育苗箱での湿害の防ぎ方。発芽不良を避ける考え方とは。

育苗箱での湿害の防ぎ方。発芽不良を避ける考え方とは。

育苗箱で種をまいたあと、水は切らしていないのに発芽が悪い、床土や肥料に問題はなさそうなのに、苗立ちがそろわないと感じることがあります。その原因の一つとして考えたいのが、過湿による湿害です。

水が多すぎることで種子や根の周辺が酸素不足になり、発芽不良や生育不良につながることがあります。

 

 

育苗箱で湿害が起こりやすい理由

育苗箱での湿害の防ぎ方。発芽不良を避ける考え方とは。|画像1

 

育苗箱は軽く、扱いやすく、限られたスペースで多くの苗をそろえられる便利な資材です。一方で、イネの育苗箱が深さが3cm程度と浅いことには注意が必要です。

この浅さは用土の厚みを十分に確保しにくい構造です。育苗箱に水をかけると、余分な水は用土の底付近に水分の多い層をつくります。この層に種子が入り込むと、種子のまわりに空気が少なくなり、発芽に必要な酸素が不足しやすくなります。

もちろん、通常、育苗箱は、側面で表面水の流出を防ぎながら、底面の穴から過剰な水分を排水することで、用土の水分を適切に保つ役割をもっています。つまり育苗箱は、そもそも「水を保持する働き」と「余分な水を逃がす働き」の両方を持ちます。ところが、用土量が少なかったり、排水が悪かったりすると、保持された水が過剰になり、箱内の下層に過湿な状態が残りやすくなるのです。

発芽には酸素も必要

なお、種子を発芽させるには、水分が必要です。しかし、水分が十分ならよいわけではありません。種子の発芽と苗立ちには、温度・酸素・水の3つの条件が必要とされています。

この点は、育苗箱での湿害を考えるうえでも重要です。先述したように、水を与えすぎると、種子の周囲のすき間が水で満たされ、空気が入りにくくなります。すると、種子は水を吸って発芽しようとしているにもかかわらず、酸素が不足して発芽が止まったり、根の伸びが悪くなったりします。

湿害を防ぐ基本①

育苗箱での湿害の防ぎ方。発芽不良を避ける考え方とは。|画像2

 

育苗箱で湿害を防ぐ第一のポイントは、用土を十分に入れることです。とくに浅い育苗箱では、用土を少なめにしてしまうと、種子の位置が箱の底に近づきます。その結果、底付近にできる過湿な層に種子が入り込みやすくなります。

用土は少なくとも箱の八分目程度まで入れ、その上に種をまき、覆土するのが基本です。用土を節約したつもりでも、発芽不良が起きてまき直しになれば、かえって手間も資材も増えてしまいます。

また、床土そのものの質も重要です。床土には苗の生育が良好となるよう均一に調整されたものを用いること、覆土には水分が少なく篩い目が詰まりにくいものを用いることが大切です。水分を含みすぎた覆土は作業性が悪くなるだけでなく、播種後の箱内を過湿にしやすいため注意が必要です。

湿害を防ぐ基本②

湿害を恐れて播種後の水を少なくしすぎると、今度は乾燥による発芽不良や発芽ムラが起こります。そのため、播種直後の水管理では「必要な水分は行き渡らせるが、余分な水は残さない」という考え方が大切です。

実践しやすい方法は、播種後にいったん十分に灌水し、その後、育苗箱を一定時間傾けて余分な水を排水することです。こうすれば、用土全体を均一に湿らせやすく、かつ底付近の多湿層を薄くすることができます。

ただし、箱ごとに排水の程度が違うと、その後の乾き方も変わってしまいます。ある箱はすぐ乾くのに、別の箱はいつまでも湿っているという状態になると、管理が難しくなります。箱を傾ける角度や時間は、できるだけそろえるのがポイントです。たとえば「同じ向きに傾ける」「1分または2分で統一する」「排水後の箱の重さや表面の湿り具合を確認する」といった小さなルールを決めておくと、後の灌水判断がしやすくなります。

育苗ハウス・置き場所の排水性も見落とさない

箱の中の水分管理だけでなく、育苗箱を置く場所の状態も湿害に関係します。育苗ハウスの設置場所は排水の良好な畑地が望ましく、乾燥が不十分な状態で育苗すると、低地温や過湿の影響で苗の生育不良や病害発生の原因になるとされています。

育苗箱の底穴が機能していても、箱の下に水がたまっていれば排水は進みにくくなります。地面に直接置く場合は、設置面に水たまりができないか、雨水が流れ込まないかを確認します。必要に応じて、すのこや台、排水性のよい資材を使い、箱底から水が抜ける状態を保つことが大切です。

また、低温期は湿害が出やすくなります。温度が低いと発芽までの時間が長くなり、種子が過湿状態にさらされる時間も長くなります。冬季や早春の育苗では、過湿と低温が重ならないよう、置き場所、被覆、灌水量を慎重に調整する必要があります。

湿害と病害を混同しないために

育苗箱での湿害の防ぎ方。発芽不良を避ける考え方とは。|画像3

 

発芽不良や苗の不ぞろいが起きたときは、すぐに肥料不足や病気と決めつけず、湿害の可能性も確認します。床土のpHや病害ももちろん重要です。農林水産省の資料では、水稲育苗において床土のpHが高いと苗立枯病やムレ苗が発生しやすくなるため、pHを4.5〜5.5に調整することが示されています。

また、発芽後の苗でも過湿管理が続けば、根傷みや病害のリスクはあります。発芽したら水分管理が疎かになる、というのは避けたいところです。とはいえ、種子が過湿層に入り込んで酸素不足になるリスクについては、発芽前後のごく初期に特に大きいため、やはり重要なのは初期対応です。

 

参考文献:白木己歳「深掘り 野菜づくり読本 農業技術者のこだわり指南」(農文協、2023年)p.36~

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