本記事では、肥料の施し方による違いについて紹介していきます。
全層施肥・表面施肥・みぞ施肥・置き肥の違いとは?

全層施肥

全層施肥(ぜんそうせひ)とは、肥料を圃場全面にまいたあと、耕起によって作土層全体に混ぜ込む施肥方法です。肥料が土全体に分散するため、根がどの方向に伸びても養分にふれやすく、生育を比較的そろえやすい点が特徴です。
この方法は、ホウレンソウ、コマツナ、シュンギクなど、株間や条間が狭い葉菜類に向いています。また、ダイコンやニンジンのように、根に濃い肥料が直接当たると障害が出やすい直根性の根菜類でも利用しやすい施肥方法です。土面全体に肥料を散布し、深さ10〜12cmほどを目安に耕して混和するとされています。
一方で、肥料が作土全体に広がるため、作物の根が届かない部分に施された養分は利用されにくくなることがあります。農林水産省の資料によると、水稲では、全層施肥の施肥窒素利用率は20〜30%とされ、側条施肥などの局所施肥に比べると効率面では劣る場合があります(ただし、肥料利用率は作物や土壌条件などによって異なります。この数値を畑作物へそのまま当てはめることはできません)。
したがって、作業しやすく幅広い作物に使える基本的な施肥法である一方、肥料を無駄なく効かせたい場合は、作物の根の張り方や栽培方式に応じて、後述する「みぞ施肥」などと使い分けることが大切です。
表面施肥
表面施肥とは、肥料を土に深く混ぜ込まず、土壌の表層に施す方法です。追肥に用いられることが多く、降雨や潅水によって溶けた養分を根から吸収させます。
元肥だけでは足りない場合や、収穫期が長い作物で途中から肥料切れを防ぎたい場合に使いやすい方法です。特に、速効性の肥料を用いれば、比較的早く肥効を期待できます。
ただし、肥料の種類や土壌水分によって、肥効の現れ方は異なります。
みぞ施肥

みぞ施肥とは、作物を植える場所や畝の一部にみぞを掘り、そこへ肥料を施してから土を戻す方法です。全層施肥のように畑全体へ広げるのではなく、根が伸びてくる位置を見越して、肥料をある程度まとめて施す点に特徴があります。
この方法は、ピーマン、ナス、トマトなど、株間をあけて栽培する果菜類や、根がある程度深く広がる作物に向いています。肥料を根の伸びる範囲に集中させられるため、畑全体にまくよりも肥料を効率よく使いやすいのが利点です。株式会社サカタのタネのウェブサイトによると、みぞ施肥は減肥の効果が高い栽培方法として紹介されています。
ただし、肥料を一部に集中させるため、種や苗の根に近すぎる位置へ多量に施すと、濃度障害や根傷みを起こすおそれがあります。反対に、根から離れすぎると、初期生育の段階では肥料を十分に利用できないことがあります。作物に応じて、施肥量と根からの距離を調整することが重要です。
置き肥
置き肥とは、固形肥料を土の上や土の表面近くに置いて施す方法です。一般には、緩効性の化成肥料や固形の有機質肥料が使われます。
置き肥の利点は、作業が簡単で、肥料効果をゆるやかに続かせやすいことです。液体肥料のように頻繁に施す手間が少なく、追肥のタイミングを管理しやすい点も特徴です。土の上に置くだけで、水やりのたびに養分が溶け出すタイプの肥料もあります。
一方で、速やかに養分を補いたい場合には、速効性肥料や液肥が選択肢になります(ただし、液肥も主に根から吸収されるため、根傷みや過湿によって根の吸収力が低下している場合には、十分な効果が得られないことがあります)。
また、株元に近すぎる位置へ置くと、根に濃い肥料が触れて障害を起こすことがありますので注意が必要です。
葉面散布
葉面散布とは、養分を含む薄い水溶液を葉に散布し、葉の表面から吸収させる施肥方法です。速やかに肥料を効かせたい場合や根傷み、根張り不良、過湿、乾燥、低温などによって根の働きが落ちているときなどに用いられます。葉から養分を補給する葉面散布は応急的な対策として役立ちます。
ただし、葉面散布は土壌施肥の代わりになるわけではありません。基本的には、根が健全に養分や水分を吸収できるよう土づくり、施肥、水管理を整えることが大切です。また、葉面散布に使用する水溶液の濃度が濃いと葉焼けを起こすおそれがある点にも注意が必要です。
繰り返しになりますが、葉面散布は養分不足を早めに補いたい場合や、根からの吸収が一時的に弱っている場合に、補助的に使う施肥方法と考えるとよいです。
参照サイト
- 全層施肥(ぜんそうせひ)
- 施肥位置 – ルーラル電子図書館―農業技術事典 NAROPEDIA
- 土づくり編(5) 肥料散布・土壌改良資材散布
- 3 施肥法 施肥は、土壌中の養分供給不足を補うために行う。施肥にあたっては
- 【第10回】渡る世間も土次第[その3] ~数値から必要な肥料の量を決めよう~|キラリ☆差がつく 野菜と花の栽培講座|読みもの
- 側条施肥体系における安定多収のための肥培管理技術の確立
- 施肥の基本的な考え方 | [野菜]山田式家庭菜園教室~Dr.藤目改訂版~ | 調べる | タキイ種苗株式会社
- 寒肥・置き肥・元肥・追肥・お礼肥とは?植物にあわせた肥料5つの使い方 | GardenStory (ガーデンストーリー)
- 肥料の種類と使い方|化成肥料・有機肥料の違いや選び方
- 葉面散布のやり方とは?メリットと効果的なタイミングを解説
- 葉面散布について
参考文献:生井兵治・相馬暁・上松信義編著「農学基礎セミナー 新版 農業の基礎」(農山漁村文化協会、2003年)










