有機水稲栽培で大きな課題になるのが雑草対策です。除草剤を使わない栽培では、田植え後のわずかな期間に雑草が一気に発生し、イネの生育を妨げることがあります。そこで利用されてきた方法の一つが、米ぬかの施用です。
米ぬかは有機物として土づくりや肥料効果が期待されます。また、水田の表面に施用することで特定の雑草の発芽や初期生育を抑える働きもあります。
米ぬかを用いた水田雑草対策

水田では、代かき後から田植え直後にかけて、土の表面近くに雑草の種子が集まりやすくなります。この時期に米ぬかを水田表面に施用すると、分解が進む過程で土壌表層の環境が変化し、雑草の発芽や生育が抑えられます。
ただし、米ぬか施用の効果は、すでに大きくなった雑草を枯らすというより、発芽直後から初期の雑草を抑える点にあります。そのため、雑草が目立ってからまくのでは遅いので注意してください。
米ぬかはコナギに効く?!
米ぬか施用で最も注目されている雑草が、コナギです。コナギは水田に発生する一年生の広葉雑草で、有機水稲栽培では防除が難しい雑草の一つとされています。発生量が多いとイネと養分や光を奪い合うことになり、イネの収量低下につながります。
研究では、米ぬかを施用することでコナギの発芽や個体数が抑えられる傾向が示されています。米ぬかを施用することで土壌表層のEC値が高まりやすくなります。これは米ぬかの分解に伴い有機酸などが増えることと関係すると考えられており、こうした化学的な変化がコナギの発芽を抑える方向に働くとされています。
参照元:米ぬか施用によるコナギ抑草効果に及ぼす土壌、施用量および作期の影響
また、米ぬかの施用後には、田面のごく表層に「トロトロ層」と呼ばれる軟らかい層ができやすくなります。この層によってコナギの種子が埋まり、発芽に必要な光が届きにくくなることも、抑草効果の一因と考えられています。
参照元:米ぬか施用による土壌の物理・化学性の変化がコナギの生育を抑制する | 農研機構
なお、コナギだけでなくヒエ類やアゼナ類などの雑草にも一定の抑草効果が報告されています。
ただし、いずれも米ぬかだけで完全に抑えるのは難しい場合があります。米ぬかの施用だけでなく、機械除草など物理的な除草と組み合わせることで抑草効果が安定します。
加えて、米ぬか施用が効きにくい雑草もあるので注意してください。たとえば多年生雑草は、米ぬかだけで十分に抑えることは難しいとされています。
よって、多年生雑草が多い田んぼの場合には、物理的な除草方法のほか、秋耕、冬季の管理、代かき、水管理などを組み合わせて、雑草の生活史に応じて対策をとる必要があります。
米ぬかはどのように雑草を抑えるのか

1 化学的な作用
水田に米ぬかを施用すると、微生物による分解が進みます。その過程で有機酸などの物質が生じ、土壌表層のEC値があがります。この変化が、コナギなど一部の雑草の発芽を抑える方向に働くとされています。
2 物理的な変化
米ぬかの分解や微生物活動によって、田面の表層がやわらかくなり、種子が埋まりやすい状態になります。コナギのように発芽に光を必要とする雑草では、種子が泥の中に沈むことで発芽しにくくなります。
3 微生物活動の活発化
米ぬかは微生物のエサになりやすい有機物です。土壌表層で微生物の働きが高まることで、酸素が消費され、還元的な環境が強まります。それにより、雑草の発芽や根の伸長に影響する可能性があります。
施用量に注意
米ぬかの抑草効果は、施用量にも左右されます。少量では土壌表層の環境変化が十分に起こらず、雑草を抑えきれない場合があります。
とはいえ、施用量を増やせばよいという単純な話でもありません。米ぬかは有機物であり、肥料成分も含みます。多量に施用すると、稲の初期生育が一時的に停滞したり、土壌が強く還元的になったりする可能性があります。
また、米ぬかを大量に散布するには労力もかかります。手まきで行う場合、その散布はかなりの作業量になります。実際の栽培では、散布機の利用、機械除草との組み合わせなど、労力面の工夫も必要です。
それから、米ぬかは天然由来の有機物ですが、資材として稲にまったく影響しないわけではありません。
施用直後は微生物分解が活発になり、土壌中の酸素が消費されます。その結果、還元状態が強まり、稲の根に負担がかかる場合があります。とくに苗が弱い、活着が悪い、水温が低い、田面の均平が悪く水深が安定しない、といった条件では注意が必要です。米ぬかの分解によって一時的にガスが発生したり、土壌表層の環境が急変したりすると、稲の初期生育に影響が出る可能性があります。
そのため、米ぬか施用は、健全な苗づくりとセットで考える必要があります。
除草ではなく抑草

米ぬか施用は、有機水稲栽培において、コナギを中心とした水田雑草の発芽や初期生育を抑える技術です。ただし、生えてしまった雑草を選択的に枯らす除草剤ではなく、発芽や初期生育を抑え、雑草がイネより元気に育つのを避けるための方法の一つです。
そのため、米ぬか施用だけで水田を完全に無雑草にするのは現実的ではありません。効果を安定させるには、複数の除草・抑草対策と組み合わせることが重要です。
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