いまさら聞けない有機質肥料の種類とその効能について

いまさら聞けない有機質肥料の種類とその効能について

農業分野における環境負荷の低減に向けて、化学肥料や農薬の使用の削減や土づくりを重視する中、注目を集めているのが有機質肥料です。有機質肥料は、単に作物に影響を供給するだけでなく、土壌の微生物活動を活性化させたり、土壌の構造を改善したりと、土壌環境を総合的に改善する効果があります。

そんな有機質肥料ですが、細かく見ていくとさまざまな種類の有機質肥料が存在し、その特徴もそれぞれ異なります。そこで本記事では、有機質肥料の種類とその効能についてまとめました。

 

 

有機質肥料の種類

いまさら聞けない有機質肥料の種類とその効能について|画像1

 

有機質肥料は、その原料により「動物性有機質肥料」「植物性有機質肥料」「有機性廃棄物肥料」「自給有機質肥料」に分類されます。中でも動物性有機質肥料と植物性有機質肥料は、肥料成分の供給源として主に利用されています。

本記事では、動物性有機質肥料、植物性有機質肥料を主軸に、有機質肥料の種類についてご紹介していきます。

動物性有機質肥料

家畜や魚介類など動物由来の有機物を原料とした肥料を指します。窒素やリン酸などの含有量が高いのが特徴で、肥効の立ち上がりも早く、作物の初期生育を促進する目的で利用されることが多いです。

代表的な動物性有機質肥料にはこのようなものがあります。

牛ふん・鶏ふんなど

牛ふんは緩効性の肥料で比較的ゆっくりと効き、土壌改良効果も期待されます。一方、鶏ふんは即効性のある窒素やリン酸を豊富に含むことから、元肥としての利用に適しています。

魚粉・骨粉などの加工肥料、血粉・肉粉などの副産物肥料

魚粉は魚類の加工残渣を原料とし、肉骨粉は肉片と骨を蒸熱・圧搾して作られたものです。

肉かす粉末は、食品加工や屠殺場から出る副産物を乾燥・粉砕して作られ、蒸製毛粉(フェザーミール)と呼ばれる肥料は鶏の羽毛を加熱加工したもの。

血粉は食肉加工の過程で生じる副産物から作られる肥料であり、速効性の窒素肥料として知られています。血粉は追肥としての利用も可能ですが、施用量や時期を誤ると肥料焼けの原因になるため、注意が必要です。

動物性有機質肥料を使用する際の注意点

窒素やリンの含有量が多く、作物の初期生育を助ける効果や作物に必要な栄養素をバランスよく供給できる点が期待できる動物性有機質肥料ですが、臭気が強いものも多いため、住宅地周辺での使用には配慮が必要です。

また、未発酵のまま使用すると病原菌のリスクがあるほか、施肥後にガスが発生しやすいので注意してください。十分に堆肥化されているもの、または製品として衛生管理されたものを選ぶのがおすすめです。

植物性有機質肥料

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植物由来の有機物を原料として作られた肥料を指します。前述した動物性有機質肥料に比べると全体的に窒素、リン酸、カリウムなどの成分量がやや低めですが、C/N比が高い分、土壌に残りやすい特徴があります。

代表的な植物性有機質肥料にはこのようなものがあります。

米ぬか

精米時に発生する副産物です。炭水化物や油脂、タンパク質をバランスよく含み、微生物のエサとなることで土壌中の微生物相を活性化させます。土壌改良と同時に、緩やかな肥料効果が得られるのが特徴です。

油かす(菜種かす、大豆かすなど)

食用油を搾った後の残渣を使用したもの。窒素を多く含むのが特徴です。元肥や追肥として利用され、果菜類や葉物野菜など幅広く使えます。

ただし、油かす類は多量に施用するとアンモニアや亜硝酸ガスが発生し、作物の生育を妨げたり、ハウス栽培などの密閉環境下ではガス障害を引き起こしたりする可能性があります。そのため、移植や播種の2週間ほど前に施用することが推奨されています。

もみがら・もみがらくん炭

もみがらは通気性と排水性を改善し、もみがらくん炭にはpHの調整や微生物の住処となり、土壌の微生物相を豊かにするといった効果があります。直接的な栄養補給には向きませんが、土壌の物理性の改善に役立ちます。

草木灰

枝葉を燃やしてできる灰で、カリウムやカルシウムを多く含みます。酸性土壌の中和にも効果がありますが、アルカリ性が強いため、過剰施用には注意が必要です。

バーク堆肥・落ち葉堆肥

木材の皮(バーク)や落ち葉を発酵・熟成させた堆肥で、主に土壌の団粒構造を促進し、水持ちや通気性の改善に寄与します。土壌微生物を活性化させる効果も期待されます。

植物性有機質肥料を使用する際の注意点

長期的な視点で見た場合、土壌の地力を維持・向上させる効果があることから、連作障害の予防につなげることができる植物性有機質肥料ですが、即効性に乏しいため、施用後すぐに効果が出にくい点がデメリットとされています。肥効が安定するまでに時間がかかるため、作付け前にしっかりとすき込んでおくなどの工夫が必要です。

また、C/N比の高い有機物を多量に投入することで一時的に窒素飢餓を起こす可能性がある点にも注意してください。

有機性廃棄物肥料

食品残さや家畜ふん尿、剪定枝、雑草、汚泥など、本来であれば廃棄される有機資源を再利用して作られる肥料のことです。リサイクル性が高い有機性廃棄物肥料は、循環型農業や持続可能な社会の構築に貢献する資材として注目を集めています。

代表的な有機性廃棄物肥料としてあげられる食品残さ(生ごみ、食品工場の副産物など)は発酵処理や堆肥化処理を経て肥料として活用されます。米ぬかや野菜くず、パンくずなどは栄養価が高く、土壌微生物の活性を高める効果が期待されます。ただし、油分や塩分の多い残さは、未処理での施用により土壌環境を悪化させる恐れがあるため、適切な処理が重要となります。

また下水汚泥・し尿汚泥も適切な処理を施すことで肥料として活用されることがあります。

関連記事:下水汚泥を有効活用!?下水汚泥由来肥料とは – 農業メディア│Think and Grow ricci

有機性廃棄物肥料は原料のばらつきや品質の安定性が課題とされており、加えて、過剰施用による塩類集積、悪臭、病害虫の誘発などのリスクもあげられます。

環境保全と資源循環の両立を図るためには、適切な処理と管理のもとで使用することが重要です。

自給有機質肥料

最後に、自給有機質肥料は堆肥や厩肥など、農家が自身で生産する肥料を指します。古くから利用されてきた有機質肥料であり、工業生産されたものではない分、栄養成分は不安定なものの、土壌改良効果が高く、他の肥料との併用によってその効果を発揮します。

 

 

有機質肥料を使用する際の注意点

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まず、有機質肥料は施用後すぐに効果が現れるわけではありません。土壌中の微生物によって分解・無機化されて初めて作物に吸収されるため、肥効の発現までに時間がかかることがあります。特に牛ふん堆肥のように窒素含有量が低い資材では、施用当年の肥効は1〜2割程度にとどまることがあります。

より効果的な養分管理を可能にするためには、有機質肥料を単独で使用するだけでなく、ほかの有機質肥料や化成肥料と組み合わせて施用することがおすすめです。

また、有機質肥料の肥効は数年にわたって継続します。そのため、前年以前の施用歴も考慮しながら、過剰施用にならないよう注意する必要があります。

 

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