肥料の種類まとめ。肥料取締法に基づく区分と名称が示す意味について。

肥料の種類まとめ。肥料取締法に基づく区分と名称が示す意味について。

農作物の生育促進や土壌改良を目的に土壌などに施す肥料には、実に多様な種類があります。そこで本記事では、肥料取締法や肥料の内容、生産方法によってさまざまな種類に分類される肥料についてまとめます。

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肥料の種類まとめ

肥料の種類まとめ。肥料取締法に基づく区分と名称が示す意味について。|画像1

 

肥料の区分は法律によって定められています。大きく「普通肥料」と「特殊肥料」に分けられますが、「普通肥料」から「単肥」「複合肥料」などと分かれ、そこからさらに細分化されていきます。

肥料取締法に基づく区分をまとめると……

普通肥料 指定配合肥料以外の普通肥料

(登録先が農林水産大臣)

①化学的方法で生産されるもの
①以外の方法で生産され、ケイ酸、マンガン、ホウ素を保証するもの
③汚泥等を原料として配合したもの
④特定普通肥料
⑤①または②を原料として配合したもの
⑥外国の業者によって外国で生産されるもの
⑦指定配合肥料以外の輸入普通肥料
⑧仮登録肥料
指定配合肥料以外の普通肥料

(登録先が都道府県知事)

①化学的方法以外の方法で生産され、窒素、リン酸、カリウム、石灰、苦土を保証するもの
②石灰質肥料
③都道府県を越えない区域を地区とする農協等が生産する配合肥料
指定配合肥料 省令で定めた知事登録の肥料のみを原料として配合したもの
上記以外の指定配合肥料及び輸入したもの
特殊肥料 肥料取締法に基づき農林水産大臣が指定したもの46種類(魚かす、米ぬか、コーヒーかす、堆肥等)

参考元:15 肥料取締法について – 農林水産省

また「普通肥料」は「窒素質肥料、りん酸質肥料、加里質肥料、有機質肥料、複合肥料、……」と細分化され、さらに「硫酸アンモニア」や「魚かす肥料」「化成肥料」などの名称で区別すると、普通肥料だけで150種類以上になります。普通肥料の資料は『15 肥料取締法について – 農林水産省』に掲載されています。

有機質肥料(普通肥料カテゴリ内)と特殊肥料、何が違う?

普通肥料カテゴリに含まれる「有機質肥料」には「魚かす肥料」や「肉かす粉末」「米ぬか油かす及びその粉末」などが含まれていますが、これは上記表末の「特殊肥料」の内容によく似ています。

特殊肥料は

魚かすや米ぬかのような、農家の経験と五感により品質の識別できる単純な肥料や、堆肥のような、その価値や施用量が必ずしも主成分の含有量のみに依存しない肥料で、農林水産大臣が指定したものをいう。

引用元:15 肥料取締法について – 農林水産省

で、普通肥料と異なり登録義務がありません。普通肥料には、登録番号や肥料の種類、肥料の名称や保証成分量などを記載した保証票の添付が義務付けられていますが、特殊肥料は保証票がありません。

そのため有機質肥料と特殊肥料の内容が似ていることに疑問を抱いた人もいるかもしれませんが、これらは魚かすや米ぬかなどの「形状」によって有機質肥料か特殊肥料かに分けられるとのこと。

例にあげると

魚かすの形状がそのまま→特殊肥料
魚かすを粉末に加工→普通肥料
米ぬかの形状がそのまま→特殊肥料
米ぬかから搾油した後に残る「米ぬか油かす及びその粉末」→普通肥料

なお特殊肥料も種類が46種類と豊富です。特殊肥料の概要は『15 肥料取締法について – 農林水産省』の表15-5に記載されています。

単肥や複合肥料、配合肥料ってなに?

以下の図は、肥料の内容やどのような方法で生産されたものなのかを基準にまとめた区分です。「化学肥料のみ(無機質肥料)なのか、有機質肥料を含むのか」で分類したものです。

上記の単語の意味を以下に記載します。

単肥 主成分を1種類だけ含む
複合肥料 チッソ(N)、リン酸(P)、カリウム(K)のうち2種類以上の成分を含む
化成肥料 ・複数の原料を化学反応、または混合して成形

・N、P、Kの合計は最低10%以上

高度化成 (↑)含有率30%以上
普通化成 上記以下の場合
有機化成※ ・無機肥料に有機質肥料を加えたもの
・有機質由来のNを0.2%以上含めば「有機入り」「有機化成」などの表示が可能に
配合肥料※ ・固形の原料を複数混ぜた複合肥料

・N、P、Kの含有量10%以上を保証

指定配合肥料 ・普通肥料どうしを配合したもの
・(↑)の場合は、届け出だけで流通が可能に
BB肥料(バルクブレンディング肥料) ・粒状肥料どうしを混ぜたもの

参考元:農文協編『今さら聞けない 肥料の話 きほんのき』(2020年、一般社団法人農山漁村文化協会)

※「有機化成」は必ず有機質肥料を含む。配合肥料は一部に有機質肥料を含むことがある。100%有機質配合のものもある。

事細かに分類していくと、その数の多さに頭がパンクしてしまいそうですが、農作物に肥料を施す際、何よりも重要なのは農作物に必要な肥料を見極め、適切に使用することだと考えます。

肥料袋に記載された名称等が気になった際、本記事を参考にしていただけると幸いです。

 

参考文献

  1. 15 肥料取締法について – 農林水産省
  2. 農文協編『今さら聞けない 肥料の話 きほんのき』(2020年、一般社団法人農山漁村文化協会)
  3. 一般社団法人日本土壌協会監修『図解でよくわかる 土・肥料のきほん 選び方・使い方から、安全性、種類、流通まで』(2014年、誠文堂新光社)

 

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