下水汚泥を有効活用!?下水汚泥由来肥料とは

下水汚泥を有効活用!?下水汚泥由来肥料とは

肥料には、窒素、リン、カリウムなど植物の生長に欠かせない養分が含まれています。しかし近年、肥料の需要増加などに伴い、肥料の価格が高騰を続けています。そんな中、下水汚泥を有効活用した肥料の存在が注目を集めています。

 

 

汚泥について

下水汚泥を有効活用!?下水汚泥由来肥料とは|画像1

 

汚泥とは「上下水道あるいは工場廃水の浄化に伴って多量に排出される固形物」(出典元:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)を指します。

下水処理場や工場内の処理施設などでは、生活排水やし尿、食品工場排水に含まれるさまざまな物質を微生物により分解・吸着し、浄化を行っています。浄化した水を放流することで河川等の水質汚染を防止します。汚泥は、浄化の過程で生じる微生物の死骸が集まって沈殿したもので、汚泥には植物に必要な養分である窒素やリンとともに、重金属などの有害物質が含まれています。

汚泥は廃棄物として処理されていますが、汚泥に含まれる成分を有効活用するものの一つとして汚泥由来肥料が挙げられます。

 

 

汚泥由来肥料について

下水汚泥を有効活用!?下水汚泥由来肥料とは|画像2

 

農林水産省『汚泥肥料に関する基礎知識(一般向け) 』によると、汚泥肥料の定義は「汚泥を乾燥や粉砕、発酵させることにより肥料としてリサイクルするもの」とあります。

汚泥肥料は有機質肥料(動植物質資材を原料にした肥料の総称|出典元:有機質肥料-ルーラル電子図書館-農業技術事典 NAROPEDIA)の分類における「有機副産物肥料」の主な肥料として位置付けられています。なお汚泥肥料の中でタイトルにある「下水汚泥肥料」は「下水場の終末処理場から生じる汚泥を濃縮、消化、脱水または乾燥したもの」です。

先で紹介したように、汚泥には有害な物質も含まれます。農林水産省は汚泥肥料に含まれる有害な重金属の基準を設定しており、基準を超える濃度の有害重金属を含む製品の生産・販売は規制されています。

下水中のリンの活用で循環型農業の転換進む!?

日本は化学肥料の原料として使われるリン鉱石の大半を輸入に頼っています。しかし冒頭でも述べたように、肥料の需要増加に伴う価格高騰や輸出規制などで、容易に入手できなくなる可能性が高まっているのが現状です。

汚泥肥料、下水汚泥由来肥料の存在は決して新しいものではありませんが、これまで輸入によって肥料が手軽に手に入ったことや下水汚泥へのマイナスイメージから、あまり活用されてきませんでした。とはいえ、かつては人や家畜のふん尿などを堆肥にして農産物の生産が行われてきました。

下水中からリンを回収することができれば、輸入資源の消費量を減らすことにつながります。

下水中に含まれるリンの量は化学肥料用に輸入している量の約14%に相当するといわれています。とても高い割合とは言い難いですが、国内でまだ利用されていない資源を循環させることができれば、循環型農業への転換が可能になります。

汚泥肥料を配布している地域も

資源リサイクルの観点から、汚泥肥料を無料配布している地域もあります。静岡県浜松市は下水処理場である東部衛生工場で「し尿及び浄化槽汚泥由来の汚泥肥料」を配布しています。大分県宇佐市も「し尿処理施設でし尿を処理する過程で発生する汚泥肥料」を配布しています。

汚泥由来のリンを活用した肥料を販売するJAやメーカーも見受けられます。地域の資源を活用していることから、従来の肥料よりも2、3割安価に提供されています。

農業分野に限らず、循環型社会の形成に向けて、下水汚泥が活用され始めています。肥料コストの削減や循環型農業に取り組む方法の一つとして下水汚泥由来肥料を検討してみてはいかがでしょうか。

 

参考文献

  1. 中ロ震源の肥料危機
  2. 下水汚泥から肥料 “都会のリン鉱石”活用を / 日本農業新聞
  3. 汚泥肥料に関する基礎知識(一般向け)
  4. 下水汚泥由来肥料の概要
  5. 下水道におけるリン回収 技術の動向と展望
  6. 汚泥肥料/浜松市
  7. し尿汚泥肥料の無料配布について/宇佐市

肥料カテゴリの最新記事