植物には栄養生長と生殖生長があり、それぞれ役割が異なります。栄養生長とは、茎や葉、根を伸ばし、植物自身の体を大きくする成長のことです。一方、生殖生長は、花芽をつくり、花を咲かせ、実や種子をつくるための成長を指します。
葉を収穫する作物の場合、十分に葉が育つ前に花芽ができると、品質が落ちたり収穫期間が短くなったりします。反対に、実や種子を収穫する作物では、適切な時期に花が咲き、結実することが収量に関わってきます。
これに影響する要素の一つが「日長」です。日長とは、1日のうち明るい時間の長さのことを指します。植物のなかには、日が長くなる、または短くなることをきっかけに花芽をつくるものがあります。
そこで本記事では、このような性質を理解するうえで重要な用語について解説していきます。
日長に関わる重要な用語

光周性とは
光周性とは、昼と夜の長さに応じて、植物の生育や開花などの反応が変わる性質のことです。植物は気温だけでなく、日長の変化からも季節の移り変わりを読み取っています。
花芽形成においては、厳密には昼の長さそのものよりも、連続した暗期、つまり夜の長さが重要だとされています。後述する「長日植物」では暗期が一定時間より短くなると花芽形成が進み、「短日植物」では暗期が一定時間より長くなると花芽形成が進みます。
この性質は、季節に合わせて花を咲かせるための仕組みともいえます。同じ地域では、日長の変化は毎年おおむね規則的に進みます。そのため、日長を手がかりにすれば、植物は比較的安定して開花の時期を判断できるのです。
また、光周性によって引き起こされる反応は、花芽形成だけではありません。植物によっては、茎の伸長などにも日長が関わります。
日長感受性と限界日長
「長日植物」「短日植物」の前に、日長感受性と限界日長について。
日長感受性とは、植物が日長や暗期の長さに反応する性質を指します。「感光性」と呼ばれることもあります。日長感受性が強い植物では、長日または短日が一定期間続くことで、花芽形成が促されます。
一方で、植物のなかには日長よりも温度に強く反応するものもあります。低温や高温などに反応して花芽形成が促される性質は、温度感受性、または感温性と呼ばれます。
本記事では主に日長について取り上げていますが、植物が生殖成長へ移るきっかけは、日長だけではありません。日長に敏感な植物もあれば、温度に敏感な植物もあります。実際の栽培では、この2つが重なって影響することも多く、日長条件が合っていても、温度条件によって開花やとう立ちの時期が変わる場合があります。
次に、限界日長とは、植物が花芽をつくるかどうかの境目になる日長のことです。ある植物では、一定時間より日が長くなると花芽形成が進みます。別の植物では、一定時間より日が短くなると花芽形成が進みます。
ただし、実際には、限界日長よりも「限界暗期」という考え方のほうがわかりやすい場合があります。1日は24時間で一定なので、日長が長くなれば暗期は短くなり、日長が短くなれば暗期は長くなります。花芽形成に関わる刺激は、明るい時間の長さだけでなく、暗い時間がどれくらい連続するかと深く関係しています。
そして、限界日長は植物の種類や品種ごとに異なります。「長日植物」「短日植物」と分類されても、どの程度の日長で反応するかは一律ではありません。そのため、後述する解説では「長日植物」「短日植物」の例として作物名をあげていますが、栽培では作物名だけで判断せず、品種特性や栽培暦を確認することが重要です。
長日植物とは

長日植物とは、日が長くなる条件、正確には夜が短くなる条件で花芽をつくりやすくなる植物です。春から初夏にかけて日が長くなる時期に、花芽形成が進みやすい植物がこれにあたります。
作物でわかりやすい例がホウレンソウです。ホウレンソウは長日条件で花芽分化や花のくきが伸びて花をつける動き(とう立ち)が起こりやすく、日長が長くなる春まき・夏まきでは、品種選びや播種時期に注意が必要です。
ホウレンソウのように葉を収穫する作物では、とう立ちが早まると葉がかたくなったり、食味が落ちたり、商品価値が下がったりします。そのため、栽培では花芽ができるのをできるだけ遅らせ、栄養成長を保つことが重要になります。実際、ホウレンソウでは作型に応じてとう立ちしにくい品種を選ぶことが大切だとされています。
短日植物とは

短日植物とは、日が短くなる条件、正確には夜が長くなる条件で花芽をつくりやすくなる植物です。夏の終わりから秋にかけて、日が短くなる時期に開花しやすい植物が多く含まれます。
代表的な例として、キク、アサガオ、ダイズ、イネなどがあります。キクは短日植物としてよく知られており、夜が一定以上長くなると開花が進みます。農研機構の資料では、夜にライトを当てることで(「夜が短い」と植物に思わせることで)、花ができるのを遅らせる栽培方法があると説明されています。この仕組みを利用すれば、開花時期をある程度調整できます。
ダイズも日長が栽培に深く関わります。ダイズは日長が短くなると開花、着莢、子実の登熟が促進されます。日長条件は開花時期だけでなく、莢の形成や収量にも関わるため、地域に合った品種を選ぶことが重要です。
キクの事例からもわかる通り、短日植物の栽培で注意したいのは、夜間の光です。街灯、施設内の照明、防犯灯などによって暗期が中断されると、植物の花芽形成が遅れる場合があります。特に開花時期をそろえたい花き類では、夜間の光環境が品質や出荷時期に影響します。
中性植物とは

日長の影響をあまり受けずに花芽をつくる植物もあります。それらを中性植物と呼びます。
中性植物とは、日長の影響をあまり受けずに花芽をつくる植物のことです。日が長いか短いかよりも、植物体の成熟、温度、栄養状態などが開花に大きく関わります。野菜では、トマト、キュウリなどが中性植物の例として挙げられます(なお、キュウリの場合、雌花と雄花の着生には日長や温度が影響します)。
ただし、もちろんのことですが、中性植物だからといって、栽培時期を気にしなくてよいわけではありません。日長の影響が小さくても、温度、日射量、土壌水分、肥料、病害虫の発生時期などは生育に大きく関係します。
春化とは
前述した通り、花芽形成のきっかけは日長だけではありません。低温が花芽形成のきっかけになる植物もあります。植物が一定期間低温にさらされることで花芽分化が促される現象を「春化」といいます。
春化が関わる作物としては、ダイコン、ハクサイ、キャベツなどがあります(ただし、どの生育段階で低温に反応するかは作物によって異なります)。ダイコンやハクサイは、種子が吸水して発芽を始めた段階から低温に反応します。一方、キャベツは、植物体がある程度の大きさに育ってから低温に反応します。
このような作物では、低温に当たったあとに日長や温度条件がそろうと、とう立ちや開花が進むことがあります。
参照サイト
- 光周性(花芽形成)について | みんなのひろば | 日本植物生理学会
- 光周的花成
- 限界暗期
- 花成生理学用語集
- キク電照栽培用 光源選定・導入のてびき
- 適品種を用いた露地電照栽培による夏秋小ギクの計画生産技術 | 農研機構
- 温暖化時にダイズ収量が変化するわけ −日長反応の重要性−
- タキイのホウレンソウ栽培マニュアル | 野菜栽培マニュアル | 調べる | タキイ種苗株式会社
- ホウレンソウ
- 短日植物と長日植物ってなに? | 教えてカワシマ種苗さん!(滋賀の園芸店)
- キュウリの特性|タキイの野菜 – タキイ種苗l
参考文献:生井兵治・相馬暁・上松信義編著「農学基礎セミナー 新版 農業の基礎」(農山漁村文化協会、2003年)










