農薬が効かない耐性菌の存在とその対応策

農薬が効かない耐性菌の存在とその対応策

農作物を効率的に栽培するとき、農薬は重要な役割を担っています。病害虫による被害を予防するために使ったり、病害虫が発生してしまったときには被害を抑えるために使ったりとさまざまな用途があります。しかし人の病気で薬が効かない菌やウイルスが現れてしまうように、農業においても農薬が効かない耐性菌が存在します。本記事では農薬が効かない耐性菌について、また耐性菌への対応策についてご紹介していきます。

 

 

農薬が効かない耐性菌とは

農薬が効かない耐性菌の存在とその対応策|画像1

 

病害被害をもたらす病原菌に限らず、微生物にはさまざまな種類がいます。そして微生物が多様にいるわけですから、農薬に対する反応もさまざまです。農薬に弱いものもいれば、強いものもいます。そんな無数の微生物の中には、突然変異を起こし、農薬に耐性をもつものがごく稀に現れます。耐性菌もはじめはごくわずかしかいません。しかし農薬を撒けば耐性菌以外の菌が減り、耐性菌だけが生き残り増殖していきます。農薬を使うことが、かえって耐性菌をのさばらせる原因となってしまうのです。

耐性菌問題が続発する理由

皮肉にも、ヒトや家畜に安全性の高い農薬の存在が、耐性菌をのさばらせてしまう原因と言えます。1970年代初めの公害問題がきっかけで、安全な農薬が求められるようになりました。そして、ヒトや家畜にあまり作用しない薬剤が登場します。これらの農薬は病原菌に対する選択性の高いものがほとんどです。しかし微生物の生命活動はものすごくシンプルなわけではありません。

  • 細胞に必要な成分を合成する
  • 呼吸に必要な成分をつくる
  • 細胞分裂に必要な成分をつくる
  • 酵素などたくさんのタンパク質をつくる

など、さまざまな働きを必要としながら生きています。選択性の高い農薬は、微生物の生命活動のうちどれか1つをピンポイントに標的にしていることが多いため、たまたま存在していた耐性菌を生かしてしまうことにつながることがあるのです。

2018年6月19日にはこんな耐性菌が

信濃毎日新聞で、リンゴに発生する「リンゴ黒星病」対策の農薬が効かない「薬剤耐性菌」の存在が報告されました。「リンゴ黒星病」とは、リンゴの葉や果実に黒いすすの様なものが発生する病気です。果実が落下したり割れたりするだけでなく、著しく外観を損ねるため、品質低下につながる恐ろしい病気と言えます。そんな「リンゴ黒星病」に対して耐性菌が発生してしまいました。

 

 

耐性菌に対する対応策

農薬が効かない耐性菌の存在とその対応策|画像2

 

耐性菌をのさばらせてしまう主な原因には、同じ農薬(農薬の種類が違くても、作用が同じ場合には同じグループの農薬とする)を連続的に使ってしまったことが挙げられます。そのため耐性菌に対応するためには、

  • 殺菌剤など農薬を低頻度で使用する
  • 他のグループの農薬と合わせて使用する
  • 他のグループの農薬をローテーションで使用する

ことが重要です。

他の農薬とローテーションで使用する

先でも紹介しましたが、ある農薬を使い続けると、その農薬に弱い菌だけが数を減らし、耐性菌だけが生き残るという厄介なことがおきます。このことにより耐性菌が増えてしまっては元も子もありません。そこで、耐性菌を減らす可能性のある異なる作用機構の農薬をローテーションで使用することが重要なのです。

使用回数を減らす

皮肉にも、農薬の使用が耐性菌の増殖を促しているとも捉えられますよね。なので、

  • 使用回数を減らす
  • 必要性が低い場合には農薬を使用しない

ことも重要です。農薬によって耐性菌を選択してしまう機会を減らすことも、耐性菌対策には必要なのです。

農薬の用法・用量を守る

コスト削減のため、農薬に表記されている用法・用量を守らず、少ない量で農薬を使用している人もいるかもしれません。しかし農薬散布量を減らしたことで、病原菌と耐性菌に効かず、農産物が病害被害に遭ってしまっては意味がないですよね。農薬を製造した企業が推奨している用法・用量は守りましょう。

 

 

病害被害に遭わないために

農薬が効かない耐性菌の存在とその対応策|画像3

 

最後に病害被害に遭わないための、農薬以外の防除方法を紹介します。農薬だけが防除方法ではありません。病害虫被害に遭わないための防除法には、

  • 耕種的防除法
  • 生物的防除法
  • 物理的防除法
  • 化学的防除法

が挙げられます。このうち化学的防除法を除く3つが農薬を必要としない防除法です。

耕種的防除法

栽培方法を変えたり、品種そのものを変えることで病害虫や雑草による被害を抑える方法です。

生物的防除法

生物を利用した防除方法です。例えばアブラムシから農産物を守るため、アブラムシの天敵・テントウムシを使う方法などがあります。微生物利用の場合、土壌環境を整えるのに細菌や糸状菌を用いる方法が挙げられます。ウイルスが原因の病害の場合にも、ヒトや家畜のワクチン接種同様、毒性の弱いウイルスを用いた対策があります。

物理的防除法

熱や光を利用した防除方法です。例えば古い土壌や病気に伝染してしまった土壌を整えるため、土壌を焼くことで消毒する方法があります。太陽熱を利用して土壌消毒を行ったり、種子の消毒に温かいお湯を利用することもあります。

 

参考文献

1,植物病原菌の薬剤耐性菌について考えよう 独立行政法人農業環境技術研究所 石井英夫
2,「リンゴ黒星病」に農薬効かない耐性菌 県内でも確認
3,殺菌剤の耐性菌管理について デュポン
4,農業用殺菌剤耐性菌:どのように対策するのか?
5,農薬は本当に必要?|教えて!農薬Q&A 農薬工業会

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