農作業は、あらかじめ立てた計画どおりに進められるとは限りません。高温によって作物の生育が早まったり、低温によって生育が停滞したりすれば、病害虫防除や施肥、定植、収穫などの適期も変わります。そのため、気象情報を確認しながら、必要に応じて作業を前倒ししたり、反対に延期したりする判断が必要です。
高温が予想されたらどうする?

高温が予想された際、農作物への対応ももちろん重要ですが、まずは身の安全を第一に考えます。高温が予想される時期には、「暑さ指数(WBGT)」28度以上での作業、日中(10時〜15時)の作業を原則避けます。
暑さ指数とは、熱中症を防ぐために使われる数値のことです。単位は気温と同じ「度(℃)」で表されますが、実際の気温とは異なります。上記の“28度”は実際の気温を表すモノではないことに注意してください。
暑さ指数は、湿度、日射・輻射熱(放射熱ともいい、太陽の光や地面からの光を指す)、気温の条件をあわせて計算されます。暑さ指数が示す熱中症の危険度は、環境省の熱中症予防情報サイトを見るとわかりやすいです。
<暑さ指数>
危険:31度以上
厳重警戒:28以上31未満
警戒:25以上28未満
注意:21以上25未満
ほぼ安全:21未満
また、作業する際は、こまめな水分・塩分補給と単独作業の回避(複数人で声かけしながら作業を行う)を意識してください。
次に、作物に対する高温対策です。
農林水産省の資料によると、近年の夏季の高温等によって、あらゆる野菜が生育初期の生育不良や着果不良、病害などの被害を受けています。
作業の前倒しが推奨される作業には、病害虫防除や施肥、草刈り、収穫作業などがあげられます。生育の進みに合わせて時期を早めたり、日中の作業を避け早朝や夕方にシフトしたり、前述した着果不良のほか日焼け果などの品質低下を防ぐために、早めに収穫を行うことなどがあげられます。
低温が予想されたらどうする?

低温が予想された場合、日平均気温が平年を大きく下回る、霜・凍結の恐れがあるなどの気象予報が出された際、被害を最小限に抑えるよう努めます。
特に注意したいのが、播種直後や育苗中、定植・田植えの直後、開花期など、作物が環境変化の影響を受けやすい時期です。まずは気象情報と作物の生育段階を照らし合わせ、低温になる期間と、現在予定している作業が重なっていないか確認します。数日から2週間程度先の気象情報は、冷害など直近のリスクを避けるための判断に活用できます。
作業後すぐに低温の時期が続くと活着が遅れるおそれがあるのが、水稲の田植えや野菜苗の定植といった作業です。低温が予想される時期に作業が重なる場合には、田植えや定植を避け、天候の回復を待ちます。
すでに田植えや定植が終わっている場合には、保温対策を早めに行います。ハウス栽培では、ハウス内を必要に応じて加温するほかに、保温資材による被覆、露地栽培ではべたがけなどが対策としてあげられます。被覆資材や暖房機器は、低温予報が出た段階で点検・設置しておくことが重要です。
異常気象(特に高温)への対策

農林水産省の資料より、さまざまな作物で異常気象への対策がとられていることが分かります。
水稲の場合、高温による白未熟粒、胴割れ粒、粒の充実不足などを抑えるため、作付時期の調整や適期に施肥・防除・収穫を行うことが重視されています。また、高温耐性品種の開発・普及(例として、高温下でも白未熟粒が発生しにくい「にじのきらめき」があげられている)、生育に応じて追肥量を判断するシステムの活用があげられます。
高温耐性品種の開発・普及はもちろん米だけに留まりません。大豆では高温多湿条件下で発生しやすい病害に抵抗性をもつ品種の開発・普及が進められています。
野菜類の場合、着果不良や日焼け果、裂果などへの対策として遮光・遮熱資材の導入も推奨されています。また高温期にも生産を続けやすい栽培体系へ転換するために、高温適応性を持つ品種を選ぶことや複数品種を組み合わせることもすすめられています。
また、気候変動を被害の軽減だけでなく、新たな産地形成に利用する例もあります。たとえば京都府の事例では、京都盆地の夏の暑さを生かしてオクラ栽培に取り組み、「京おくら」として産地化を進めています。将来の気温条件を踏まえ、地域に適した品目へ転換する対策の一例です。青森県では気温上昇を踏まえ、従来のりんご産地で、ももの生産拡大にも取り組む例もあります。
参照サイト
- 野菜高温対策をめぐる情勢 令和8年7月
- 農作業事故・熱中症に注意 – JA山形おきたま
- 高温障害対策のため 例年より早く収穫作業・乾燥調製施設の 稼働計画を立てましょう!
- 高温に伴う農作物等の被害を防止するため、管理対策の徹底をお願いします。 – 新潟県ホームページ
- 富山県/水稲の生育早期化による作業計画の見直しと葉色低下に伴う追肥対応について
- 暑さ指数(WBGT)の実況と予測
- 臨時農業生産情報(低温に対する技術対策) – 農なび青森 農業従事者向け
- 水稲栽培の低温出現の長期変化と 意思決定支援
- 1週間から数か月先の情報に対する社会的ニーズ (第1回からの続き)
- 気象庁 | 農研機構との共同研究(農業分野)
- 農林水産分野における 気候変動への適応に関する取組と 今後の対応方向










