昨今、さまざまな場所でAIが活用されています。そこで本記事では、AIを活用した農業の最新研究についてまとめます。
AIを活用した農業

農業分野のAI活用は、これまでも注目を集めていた「自動化」から、生育状態の数値化、熟練判断の再現、栽培管理の提案、ロボット制御の基盤づくりなど、さまざまな分野に広がっています。
モモの水ストレス診断
農研機構は、スマートフォンなどでモモ樹の周囲を動画撮影し、深層学習(ディープラーニング)によって樹の水分状態を推定する技術を開発しました。
深層学習とは「コンピューターが膨大なデータを学習し、データに含まれるルールやパターンを発見する技術」です(引用元:ディープラーニング(深層学習)とは? 機械学習との違いや活用例を解説)。
モモの水ストレスは果実の大きさや糖度に影響するとされ、品質を守るためには適切な水管理が必要です。しかし、これまでは天候や生育具合に基づいて経験的にかん水が行われていたうえ、水ストレスの把握するには、高価な測定機器や葉を切り取る作業が必要でした。
新たな技術、AIを活用した方法では、動画から多数の静止画を切り出して解析することで、樹全体の状態を反映しやすくしています。将来的にはスマートフォンアプリや、果樹園を巡回するロボットによる自動診断への発展が想定されており、これにより測定の労力削減につながると期待されています。
土壌診断AI
農研機構と日本土壌協会が、水稲、コムギ、ダイズ、露地野菜など13品目に対応する土壌診断AIを発表しました。土壌の化学性、貫入硬度、収量、施肥量などの情報から、収量低下の原因や改善策を提示します。検証では、AIが示した改善対策と専門家の判断を比較し、13品目すべてで正答率90%以上だったとされています。
また、各産地や農業法人が独自のデータを追加し、その地域に適した「特化AI」を構築できる仕組みも用意されています。
水田のイネと雑草を識別

東京大学や京都大学、中国・南京農業大学などの国際共同研究グループは、水田画像からイネの葉や穂、雑草などを識別するための大規模画像データセット「RiceSEG」を公開しました。
中国、日本、インド、フィリピン、タンザニアの5か国、12機関が参加し、圃場で5万枚以上の画像を収集。そのうち3,078枚について、画像内の画素を背景、緑葉、枯死葉、穂、雑草、浮草の6種類に分類しています。
従来のデータセットは、植物と背景を分ける単純な分類が中心でしたが、RiceSEGではイネの成長段階や複雑な群落構造をより細かく捉えることができるといいます。
研究では、背景や緑葉は高い精度で識別できた一方、生殖成長期の水田では枯死葉や雑草の判別が難しいことも示されました。将来的にはドローンや自律走行機械による生育調査、除草、育種研究への利用が期待されています。
収穫機内のジャガイモの形をAIが推定
東京大学などの研究グループは、ジャガイモ収穫機に搭載したRGB-Dカメラ(普通のカラー画像と、物体までの距離を同時に記録できるカメラ)の映像から、収穫時のジャガイモの立体的な形をAIが学習するためのデータ集「3DPotatoTwin」を作成しました。
収穫機に取り付けたカメラでジャガイモを撮影しても、見えるのは主に上側だけです。ジャガイモが重なったり、土や茎葉に隠れたりするため、カメラの映像だけでは、下側を含むジャガイモ全体の形はわかりません。
そこで研究グループは、カメラで撮影した一部の立体データと、別の方法で詳しく測定した完全な立体データを組み合わせ、AIにこの2つをセットで学習させることで、カメラに映っていない部分の形も予測できるようにしました。研究では、AIによって隠れた部分を補い、ジャガイモの完全な3次元モデルを生成しています。
この技術が進めば、収穫作業をしながら、ジャガイモの大きさや形、重さなどを自動で予測できる可能性があります。また、畑のどの場所で多く収穫できたのかを地図にしたり、栽培方法や肥料がジャガイモの形や大きさに与える影響を調べたりすることにも役立つと期待されています。
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