全国の農業総産出額と生産農業所得が増加中。各都道府県の農業生産性、産出額向上に向けた取り組み事例を紹介。

全国の農業総産出額と生産農業所得が増加中。各都道府県の農業生産性、産出額向上に向けた取り組み事例を紹介。

農林水産省は生産農業所得統計を公開しています。

生産農業所得統計の目的は以下のように記されています。

統計の目的
農産物の産出額及び農業が生み出した付加価値額である生産農業所得を推計し、農業生産の実態を金額で評価することにより明らかにし、農政の企画やその実行のフォローアップに資する資料を提供することを目的としている。

引用元:生産農業所得統計の概要:農林水産省

 

 

全国の農業総産出額と生産農業所得が増加中

全国の農業総産出額と生産農業所得が増加中。各都道府県の農業生産性、産出額向上に向けた取り組み事例を紹介。|画像1

 

令和3(2021)年12月24日に公表された「令和2年農業総産出額及び生産農業所得(全国)」によると、農業総産出額は、米、野菜、肉用牛等において需要に応じた生産の取組が進められてきたことなどが要因となり、増加傾向で推移しています。

令和2年の農業総産出額は8兆9,370億円で、前年に比べ432億円増加、対前年増減率は0.5%増加しています。農林水産省によると、米や肉用牛は「主食用米の需要減少に見合った作付面積の削減が進まなかったこと」や新型コロナウイルス感染症拡大の影響による需要減退を要因に価格が低下しましたが、野菜や豚は天候不順や巣ごもり需要により価格が上昇したことが挙げられます。

また生産農業所得も、農業総産出額の増加などを要因に増加傾向で推移しており、3兆3,433億円で、前年に比べ218億円増加、対前年増減率は0.7%増加、とあります。

都道府県別の農業産出額は……

都道府県別で農業産出額や生産農業所得を見てみると、令和2年において上位5道県は以下の通りです。

都道府県名

農業産出額

対前年増減率

1 北海道

1兆2,667億円

0.9%増

2 鹿児島県

4,772億円

2.4%減

3 茨城県

4,417億円

2.7%増

4 千葉県

3,853億円

0.2%減

5 熊本県

3,407億円

1.3%増

上位5道県の農業産出額の構成割合をみると、北海道と鹿児島県は畜産部門の割合が高く、茨城県、千葉県、熊本県は耕種部門の割合が高くなっています。

 

 

各都道府県の農業産出額を向上させる取り組み

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近年、面積あたりの農業産出額が大きい「稼ぐ農地」への転換が各県で進められています。農業従事者の高齢化が進み、担い手不足や耕作放棄地の増加が広がる農業の再活性化には、収益性を高める必要があります。

稼ぐ農地への転換を進める地域の、農業産出額を向上させるための取り組みを紹介していきます。

2022年7月29日の日本経済新聞「農業生産性、群馬3割改善 高付加価値品へ転作進む」によると、群馬県や山梨県などが農業生産性を大きく向上させた、とあります。

群馬県は収益性増減率が31.6%増加と、東京近郊(関東・山梨の1都6県)の農地においてトップです。収益性増減率とは、耕地1ヘクタールあたりの農業産出額を2005年と20年で比較したものです。

そんな群馬県の事例では、館林市のキャベツの契約生産が挙げられます。消費が減少する米や麦から、業務用や個食拡大で需要が増加しているカット野菜向けの生産を拡大しました。通常の生産と異なり、カット野菜向けの生産では大きさを選別する手間がなくなり、出荷用段ボールなどの用意も不要になるので、生産コスト低減につながります。また契約生産では定額で買い取られるため、収入の安定化にもつながります。

山梨県(収益性増減率29.0%増、群馬県に次いで第2位)は特産品のブドウを高付加価値な品種に切り替えることで、農業生産性を向上させました。単価の高い品種を増やすことは、高齢化による生産量減少を緩和しています。県全体のブドウの生産量は、栽培面積が減少し、この12年間で2割減ったといわれています。しかし高単価品種に転換したことで、生産額は68%増加しています。

茨城県(収益性増減率14.9%増、第3位)は、都道府県別の農業産出額ランキングにもあるように、北海道、鹿児島県に次いで全国3位です。農産物として強いのがサツマイモです。サツマイモを加工した干し芋は茨城県の特産品であり、また最近の焼き芋人気により需要が高いこと、鹿児島県や宮城県など九州南部の産地で病原菌の被害が続き、価格が上昇していることなどが農業産出額増加の要因として挙げられます。

千葉県と埼玉県はスマート農業の普及や自動化で生産性を高めようとする試みを行っています。

千葉県安房地域では特産品であるビワへの害虫対策を効率的に行うため、ドローンによる農薬散布の効果を検証しています。山あいの傾斜地で栽培されるビワは地上からの薬剤散布が難しく、生産者の高齢化もあいまって効率的な対策が課題となっています。

サトイモの産出額が全国首位の埼玉県では、根切り機や形状選別機、等級判別機などを導入して選果場の自動化を徹底したことで、出荷時間を従来の3分の1に縮め、作業効率の向上に成功しています。

 

参考文献

  1. 生産農業所得統計の概要:農林水産省
  2. 令和2年農業総産出額及び生産農業所得(全国):農林水産省
  3. 農業生産性、群馬3割改善 高付加価値品へ転作進む: 日本経済新聞
  4. 都内農業、地産地消で工夫: 日本経済新聞

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