今更聞けない植物工場の定義。植物工場の種類や生産性向上に貢献した技術の遷移について。

今更聞けない植物工場の定義。植物工場の種類や生産性向上に貢献した技術の遷移について。

農業従事者の高齢化に伴う後継者不足や労力不足の課題等を解消する代替技術として注目されている植物工場についてご紹介していきます。

 

 

植物工場とは

 

植物工場の定義

今更聞けない植物工場の定義。植物工場の種類や生産性向上に貢献した技術の遷移について。|画像2

 

「植物工場」は日本独自の用語とされています。

英語圏でも植物工場を意味する「Plant factory」という名称はありますが、さまざまな呼び方がある中でも、高層建築物の階層などを使用して垂直的に農作業を行う「Vertical farms(垂直農場)」や「Vertical farming(垂直農法)」、「Indoor farming(屋内農法)」といった呼び名の方が一般的です。

そんな植物工場について、農林水産省は以下のように定義しています。

植物工場とは、施設内で植物の生育環境(光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、養分、水分等)を制御して栽培を行う施設園芸のうち、環境及び生育のモニタリングを基礎として、高度な環境制御と生育予測を行うことにより、野菜等の植物の周年・計画生産が可能な栽培施設をいいます。

引用元:植物工場とは、どのようなものですか。:農林水産省

植物工場では、環境条件を人工的に制御することで、1年中季節や気候を問わず農産物を安定的に生産します。

植物工場の種類

植物工場は光源によって「太陽光利用型」と「完全人工光型」に分類されます。

太陽光利用型は太陽光を主体に利用し、気候によっては人工光を併用します。オランダの大規模ハウス栽培などで用いられています。一方、完全人工光型の光源は白熱灯や蛍光灯、近年では光熱費が圧倒的に安いLEDなどの人工光が用いられます。日本の植物工場の多くは完全人工光型で実施されています。

 

 

生産性向上に貢献した技術の遷移

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農林水産省の取り組み事例より、植物工場の進展を知ることができます。

たとえば1980年代から1990年代にかけての植物工場は、光源には高圧ナトリウムランプが用いられ、栽培棚は平面式となっていました。高圧ナトリウムランプは水銀灯に比べると高効率ではあるものの、現代のLEDよりは非効率です。平面式の栽培棚も面積効率は高くありません。

2000年代からは光源としてHf蛍光灯やLEDが用いられるようになりました。これは高効率で消費電力を大幅に抑えることができます。また多段式での栽培により面積効率も向上しました。

完全密閉された人工光型植物工場の栽培システムは水利用効率も高いです。植物の根が水を吸収した後、葉を通して蒸散により水蒸気として放出されますが、水利用効率の高いシステムにおいては、冷房時の冷却除湿により「ドレン水(空気が熱を失って凝縮した水|出典:ドレン(ドレン水)の解説 | イプロスモノシリ | モノシリ | 製造業技術用語集)」として回収でき、それを再利用することができます。

植物の生育に有効な波長域を示す光源を選べることも生産性の向上に貢献しています。

植物の光合成に有効な光の波長は400nm〜700nmといわれています。660nm付近の赤色光は主に光合成(糖分の生産)や発芽、開花などに利用され、440nm付近の青色光は主に成長・分化(細胞が特定の機能や形態を持つこと。植物の場合は細胞が根や花芽に変化すること)、着色などに利用されます。青色光は植物の機能性成分の向上にも利用されます。

そのため、特定の波長の光をピンポイントに照射することで、生育をコントロールすることができます。

玉川大学の渡邊博之教授が開発した「LED冷却技術」は、植物工場の光源であるLEDの耐久性を飛躍的に高めることに成功しています。

太陽光の代替となるLED光源は、光を発する際の強い発熱により、次第に出力が劣化していくことが課題となっていました。そこで渡邊教授はLEDのチップを水冷して耐久性を高める技術を開発。この技術を用いることで、LEDをハイパワーで10年間使用しても90%の出力を保つことを可能にしました。これにより、LEDの交換のコストと手間を軽減することにつながります。

なお、農林水産省の広報誌「aff(あふ)」の記事によると、玉川大学では植物工場の技術を宇宙空間での野菜生産に応用する研究も行われています。宇宙空間における重力や気圧に対する植物の反応についての研究も行われているのだとか。植物の重力に対する感受性はわかっていないことも多いといわれています。重力による生育の変化も気になるところです。

 

参考文献

  1. 「植物工場」は農業の理想型なのか? 現状と課題 | 農業とITの未来メディア「SMART AGRI(スマートアグリ)」
  2. 植物工場とは、どのようなものですか。:農林水産省
  3. 1 人工光型植物工場の 標準仕様(案)について
  4. 完全人工光型植物工場の事業展開 Commercialization of LED used Plant Factory
  5. ⽟川⼤学の植物⼯場産リーフレタス:農林水産省
  6. 平成27年度 植物工場勉強会 概論|農林水産省
  7. 細胞の分化と遺伝子

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