収穫・剪定・防除を担う「果樹特化型」ロボ。導入が難しい背景と開発動向について。

収穫・剪定・防除を担う「果樹特化型」ロボ。導入が難しい背景と開発動向について。

農業用ロボットはすでに水田や露地野菜で導入が進んでいますが、近年では果樹園への導入にも注目されています。地形が複雑なことから、作業が人手に頼りがちだった果樹園にも、AIと自律走行技術を活用した「果樹特化型」のロボットが登場しています。

 

 

果樹園がロボット導入の“難所”だった理由

収穫・剪定・防除を担う「果樹特化型」ロボ。導入が難しい背景と開発動向について。|画像1

 

果樹園でのロボット導入が難しいとされていた背景には、まず平坦でない地形などがあげられます。水田や畑と比べて果樹園は起伏が多く、樹間のスペースも不均一なため、ロボットが自律走行するのは難しく、作業効率の自動化が進みにくい環境でした。

さらに果実が地面ではなく枝の高低に散らばって存在することも、カメラやセンサーで正確に果実を認識する上で高いハードルとなっていました。

また、作業の“多様性”も導入を難しくしていました。果樹園では収穫だけでなく、摘果、剪定、防除など、一年を通して多岐にわたる作業が求められます。従来は熟練農家が目と経験で担ってきた領域であり、単機能ロボットでは費用対効果が見合わず、導入が遅れてきました。

果樹特化型ロボットの導入がもたらす課題と展望

果樹特化型ロボットは、前述したように多岐にわたる作業が求められることから高機能化が必要となり、その分価格が高くなりがちです。導入コストを抑える場合には、地域農家が共同で利用する仕組みやリース制度の整備が重要になると考えられます。

とはいえ、農林水産省の調査によると、果樹農家の高齢化と人手不足は深刻化しており、特に収穫や剪定作業で人手が足りないのが現状です。果樹特化型ロボットが、省力化・省人化や農家の経営継続を支える重要な要素になることが期待されています。

 

 

果樹園向けロボットの開発動向

収穫・剪定・防除を担う「果樹特化型」ロボ。導入が難しい背景と開発動向について。|画像2

 

農研機構は果樹園の作業用機械の自動化とロボット化の開発を進めています。農研機構では、機械の自動化・ロボット化を進めるだけでなく、それら機械による作業の省力化に適した樹形の開発も進めています。

果樹園でのロボット導入が難しかった背景には、前述した通り、平坦でない地形や果実の散在、樹木自体が圃場内に散在していることなどがあげられます。作業動線が複雑なために、機械による作業が難しくなっていました。

しかし農研機構は、作業がしやすい省力樹形を直線的に配置するといった作業環境の開発も進めており、これにより作業の大幅な省力化が期待されています。

また、米国のスタートアップ企業Advanced Farm Technologies社は、イチゴ・リンゴの自動収穫ロボットを開発。同社のロボットは自動走行を行い、画像センサーとAIを用いて収穫適期の果実を判別。ロボットアームで収穫を行います。

なお、国内のスタートアップ企業が開発したロボにも注目です。東北大学発のスタートアップ「輝翠」が開発する果樹園向けロボット「アダム」は、座席のない四輪バギー型で、果樹園の凹凸や傾斜に強いのが特徴。主な機能は収穫物や資材の運搬です。人を追従するモードだけでなく、あらかじめ農場内を走らせ、地形等を学習させることで自律走行が可能になるモードも備えています。

果樹園におけるAIロボットの導入はまだ黎明期にありますが、技術の進展とともに現実味を増しています。カメラやAIによる成熟度判定、複数作業をこなせる自律型ロボットの登場によって、これまで人の手が不可欠だった作業の自動化が期待されています。高齢化や人手不足に直面する果樹農家にとって、AIロボットの活用が当たり前になる日もそう遠くないのかもしれません。

 

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