本記事では、水田でよく見かける雑草のひとつ「ホタルイ」に着目し、その特徴と除草のコツについてご紹介していきます。
ホタルイとは


ホタルイはカヤツリグサ科に属する多年生の雑草です。
なお、農業現場で「ホタルイ」と呼ばれるものは、イヌホタルイなどを含む「ホタルイ類」を指していることが少なくありません。農研機構によると、狭義のホタルイは浅い沼地や湿地、休耕田に見られ、通常の水稲栽培水田ではあまり見られないとされています。全国的に水稲栽培における雑草として多く見られるのはイヌホタルイですが、本記事では下記以降、総称して「ホタルイ」と表記します。
ホタルイの特徴
多年生で、株の基部が冬を越して翌年また生育します。しかし、それ以上に水稲栽培の現場において問題になりやすいのは、ホタルイが多くの種子を作るという点です。前年に残った株だけでなく、土の中に残った多量の種子も翌年の発生源になりやすく、また発生が多いと、農研機構の資料に「200本/㎡の発生でイネが10%減収するとされる」とあるように、イネの減収につながります。
ホタルイは種子から発生し、代かき後およそ1週間前後で発芽します。はじめは細い線のような葉を3~5枚出し、その後に茎を伸ばします。茎が出てくると、最初の線形葉は枯れ、やがて茎だけが目立つ株になっていきます。高さは20~80cmほどになり、夏には茎の先に小穂をつけ、そこに多くの種子を実らせます。ここまで育ってしまうと、翌年以降の発生源を増やすことにつながります。そのため、収穫後の圃場管理が翌年の雑草量を左右します。なお、農林水産省が公開する資料では、収穫後の圃場管理として秋耕と非選択性除草剤の散布が推奨されています。
害虫リスクにも関連あり
ホタルイはイネの害虫被害にも影響を及ぼします。加進丈二ら『イヌホタルイの存在が水田内のアカスジカスミカメ発生動態および斑点米被害量に与える影響』(日本応用動物昆虫学会誌2009年)には、水田内におけるイヌホタルイの発生がアカスジカスミカメによる斑点米被害を助長する原因となる、とあります。研究では、イヌホタルイが発生した水田と除草した水田で、アカスジカスミカメの発生の推移や斑点米の発生率について比較を行いました。その結果、イヌホタルイが発生した水田での成虫・幼虫の発生、出穂後の成虫密度の高まりが見られたこと、斑点米の発生率がイヌホタルイが発生した水田のほうが除草した水田より高かったことがわかりました。同論文の摘要には以下のように記されています。
イヌホタルイの発生はアカスジカスミカメの水田内への出穂前の早期侵入の誘因となり、水田内の発生密度を高め、斑点米発生を助長する原因となることが明らかとなった。
引用元:加進丈二ら『イヌホタルイの存在が水田内のアカスジカスミカメ発生動態および斑点米被害量に与える影響』(日本応用動物昆虫学会誌2009年)
ホタルイ防除のコツ


発生初期を逃さない
ホタルイに限らず、いずれの雑草においても言えることですが、雑草防除において最も大切なのは小さいうちに対処することです。代かき後1週間前後から発芽し始めるということは、田植え直後から初期生育期の観察が重要だということでもあります。初期に圃場をよく見て、点々と出始めた段階で抑えることが基本です。
同じ除草剤に頼りすぎない
ホタルイ類、とくにイヌホタルイでは、除草剤抵抗性が問題になっています。農研機構は、1999年以降、イヌホタルイやコナギといった重要雑草で抵抗性が見られるようになったと公表しています。抵抗性とは、これまで効いていた薬剤が効きにくくなることを指します。薬剤で除去できる個体と抵抗性のある個体を見た目で区別することは難しく、「除草剤を散布したのに残った」という形で初めて気づくこともあります。
ホタルイはSU剤(スルホニルウレア系除草剤)に対する抵抗性を獲得している場合があります。抵抗性があると、これまで使用していた除草剤の効果が期待できないため、異なる作用機序を持つ薬剤を選定する必要があります。
そのため、現場では、登録内容を確認したうえで、作用の異なる成分を組み合わせた体系防除や、残草に応じた追加防除を検討することが重要です。抵抗性の有無が見た目にはわからないこともありますから、薬剤を選ぶ際は、ラベル確認に加え、JAや普及指導機関へ相談することもおすすめです。
除草剤「以外」の方法も検討する
たとえば、ホタルイなど代かき後から発生を始める雑草に対して「移植栽培」は効果的な方法のひとつです。理由は、水稲が雑草よりも生育が進んでおり、雑草との競争力が強くなるからです。水稲が雑草よりも強く育てば、雑草の生育は抑えやすくなります。そのほか、水稲の初期生育量を増加させ、水稲を強くする方法として密植や基肥施用なども効果的です。
まとめ


ホタルイは、発生初期は細い茎で目立ちにくいものの、種子を多く残し、放置すると翌年以降の発生源になります。そのうえ、イネの収量低下だけでなく、斑点米被害に関わる害虫との関連においても見過ごせません。
薬剤抵抗性が問題になっていますが、ホタルイ防除の際は、非選択性除草剤を利用したり、秋耕など除草剤「以外」の対策、水稲が雑草よりも強く育つような栽培体系をつくるなど、複合的に考えることをおすすめします。
参考URL






























